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インドネシア料理ひと筋 戦後老舗の味も、最新の味も

2018/2/8

炒飯風のナシゴレン 左側にあるのはやはり同地でポピュラーな串焼き「サテ」

「店で、炒飯風の『ナシゴレン』などを頼む人は、バリへ旅行に行ったことがある人。『ソトアヤム』や『ミーアヤム』をオーダーする人は、まずジャカルタに駐在した経験のあるお客さんです」(あきさん)。「ソトアヤム」は鶏スープで、「ミーアヤム」は、鶏肉やマシュルームをトッピングしたスープ麺。つけ麺のようにスープと麺を別にして提供する店が多いらしい。

「さっぱりとした味なので、揚げ物や濃い味付けに飽きた駐在員の人はほっとするみたいなんです。現地の人はスープに自分が好きなソースを入れて食べるので、食べ終わった後はスープの色は色々なんですよ」とあきさん。

ミーアヤム 麺は焼きそば風に油でいためてあるため、つけ麺などとせず奥のスープとは別に食べる人もいて「食べ方は千差万別」(あきさん)

「バリ料理を看板にした店は多いんですが、国としての料理をうたう店は今、少ないんです」と寂しそうに話すあきさん。だから、インドネシア料理の歴史を背負ってきた東京の老舗が続々と閉店してしまった中、「昔を知る世代からお孫さんまで三世代で来てくれるような店にしていきたい」と大平さん夫婦は口をそろえる。

一方で、新しいインドネシアのトレンドも取り入れていきたいとも考えている。「現地でも若い人たちの味覚は少し変わってきているのではないかと思うんです。だから、現地の学生さんに、今は何がはやっているのかといったことをよく聞きます」(あきさん)

そうして取り入れた料理の一つは「イガバカール」。「焼いた骨付きバラ肉」という意味で、現地ではヤギ肉を使う。「安い料理ではないので、前にバンドンに行ったとき『イガバカール』を食べに行くからと知り合いを誘ったら、全然知らない人まで10人以上やってきてすごいことになりました。知り合いは元々うちでバイトしていた子で、向こうでは、こんなときはみんなにおごるのが当たり前なんです」とあきさんは呆れたように笑う。

「CABE」のラムチョップ、イガバカール 左奥はタマネギなどを使ったソース

現地では、「ケチャップマニス」という甘いしょうゆのようなソースで調理していたというが、「CABE」では自分で味を調節できるようソースは別添え。日本ではヤギの肉が手に入りにくいため、「CABE」ではイガバカールにラムチョップを使う。西欧料理店で食べるものとは全く異なり、しっかりと塩味が効いた豪快な大ぶりの肉で、味が濃いケチャップマニスを使ったソースを付けると、白いご飯が欲しくなった。

店にはもう一つ、現地のトレンドを取り入れた料理があった。「バタゴール」だ。これは、白身魚のすり身を油揚げに入れたりワンタンの皮で包んだりして揚げたもの。外側がカリカリに揚がっていて、中はお餅のようにもっちり。どうやら魚のすり身に片栗粉が混ぜられているらしい。

経済成長と共に国内を旅行する人が増える中、バンドン名物として人気となった料理だという。「バンドンにこれの屋台があって、現地の人に薦められて、最初は特別メニューでやれるときだけ出そうと思っていたら、ランチにこれをメインに食べるインドネシア人のお客さんが多くて、結局定番メニューになりました」(あきさん)。

バタゴール チリソース(左)やケチャップマニス(その右)などを好みで付けて食べる

「CABE 目黒店」の店の隅には、古いジュークボックスがあった。今は壊れて動かないらしいが、選曲リストを見るとインドネシアや石原裕次郎の歌が並んでいた。同国の新しい息吹と古き良き時代が同居する店は、これからもその国の姿を映していくに違いない。

(フリーライター メレンダ千春)

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