チョコとアーモンドの組み合わせ 便通と肌質改善!?
健康にいいといわれるチョコレートとアーモンド。このスーパーフードを一緒に食べるとどのような相乗効果が得られるのか。慶應義塾大学医学部の井上浩義教授と明治の共同研究グループは、アーモンド入り高カカオチョコレート(カカオ分70%)を1日8粒、8週間摂取する試験を実施。便通、肌質の改善に効果があるという結果を報告した。
チョコとアーモンド、どちらも健康効果が期待されるが…
近年、バレンタインデーのプレゼントとしてだけでなく、健康効果が注目されている高カカオチョコレート。例えば、チョコレートのカカオ成分に含まれるカカオポリフェノールやカカオプロテインには血圧予防、動脈硬化予防、便秘予防・改善などの健康効果が期待されており、さまざまな研究が進められている。
便秘改善の効果については、チョコレートを1日25g、4週間摂取することで、便通が改善し、腸内細菌叢(そう)も改善した[注1]という国内の報告もある。
一方、アーモンドも、ビタミンEやオレイン酸など多くの栄養・健康成分を含むスーパーフードとしてその健康効果が注目されている。食物繊維が多いことから便通の改善効果も期待されており、アーモンドを1日56g、6週間摂取することで、腸内のビフィズス菌と乳酸菌が増加したという研究報告[注2]がある。また、アーモンドを1日28g、8週間摂取することで、頬の水分量に増加傾向が見られ、便秘自覚症状が改善したという研究報告[注3]などがある。
ただ、チョコレート25gというと板チョコ半分程度で毎日食べるには少々多い気もする。またアーモンドにいたっては、1粒が1g強なので、28gというと25粒程度となり、かなり多い。つまりチョコレートもアーモンドもその効果を得るためには、かなり大量に食べなければならず、実現が難しいという難点があるのだ。
アーモンドとチョコレートの相乗効果はあるのか
そこで、アーモンドとチョコレートを一緒に食べたら相乗効果により、少ない量でも便通や肌質の改善効果が期待できるのではないか、という仮説が立てられた。それを実証するために、井上教授と明治の共同研究グループが、25歳以上50歳未満の女性(直近2週間の排便回数が週2回以上4回以下、かつ皮膚の乾燥に自覚がある人)71人を対象に実証試験を行った。
[注1]下仲敦ほか.高カカオチョコレートの摂取は腸内細菌叢中のFaecalibacterium 属菌占有率を増大させる.腸内細菌学雑誌. 2017;31(2):128.
[注2]Liu Z,et al.Prebiotic effects of almonds and almond skins on intestinal microbiota in healthy adult humans. Anaerobe. 2014;26:1-6.
[注3]塩原みゆきほか.アーモンド経口摂取によるヒト皮膚への影響.Food Style 21. 2007;11(12): 98-102.
一つのグループ(36人)には、カカオ分70%のアーモンド入りチョコレートを1日8粒、8週間継続摂取してもらい、もう一つのグループ(35人)にはアーモンド入りチョコレートを摂取しないでもらい、効果を比較した。
その結果、アーモンド入りチョコレートを摂取したグループは摂取しなかったグループに比べ、排便回数は1週間に約2回増加(図1)、便量も約1.6倍に増えた(図2)。
また、おなかの調子に関するアンケート調査を行ったところ、アーモンド入りチョコレートを摂取したグループでは、おなかの調子が良くなったと感じている人が多く(図3)、さらに肌の調子も良くなったと感じている人も多い(図4)という結果が得られた。さらに、皮膚の乾燥に自覚がある人の角層水分量が増加して、肌質改善にも効果があることが示された。
井上教授は、「アーモンド1日25粒は食べるのが難しいが、8粒なら続けやすいのではないでしょうか。中にはチョコレートのカロリーを気にされる人もいるかもしれませんが、今回試験に使用したアーモンド入りチョコレートの場合、1日8粒(アーモンドは約1.1g/粒、チョコレートは約2.7g/粒)で、おにぎり約1個分のカロリーです。その分、ほかの間食を控えるなどすれば問題ない量といえます」と話す。
また、高カカオチョコレートはアーモンドだけでなく、さまざまな健康にいい食品と組み合わせることでそのパワーを発揮する可能性があると井上教授は研究を進めています。
「例えば、スポーツの後には高カカオチョコレートと果物。高カカオチョコレートにはポリフェノール、果物にはカリウムが含まれます。ポリフェノールは運動で増加する活性酸素による酸化ストレスを抗酸化作用で防ぐ可能性があり、カリウムは老廃物の排せつ促進を担い、運動後の疲労回復を助けます」と井上教授。今後、チョコレートとほかの食べ物との組み合わせの研究も進めていきたいと話す。
慶應義塾大学医学部化学教室教授。1989年九州大学大学院理学研究科博士課程修了、久留米大学医学部教授などを経て、2008年から現職。日本抗加齢医学会評議員、日本薬理学会学術評議員など。平成22年度文部科学大臣表彰科学技術賞、化学コミュニケーション賞2012、着任後2017年まで9年連続慶應義塾大学医学部Best Teacher Award(1位)など受賞多数。医学博士、理学博士。
(文 伊藤左知子)
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