つらい花粉症 のみ薬より先手の点鼻&点眼薬が効果的春に負けない花粉症対策2018(上)

日経ヘルス

2018/2/13

日経ヘルス&メディカル

つらい花粉症、効果的な対策は?(イラスト:谷小夏)
つらい花粉症、効果的な対策は?(イラスト:谷小夏)
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くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ……。つらい花粉症を制するには、先手を打つことが肝心。鼻にはまず点鼻薬をシュッ、そして目には点眼薬を。症状がひどくなる前から始めるのが鉄則だ。花粉症対策の最新情報を3回に分けてお伝えする。1回目は花粉症のメカニズムと薬の服用・使用時期について見ていこう。

◇  ◇  ◇

花粉症の時期はマスクをして薬ものんでいるけど、それでもやっぱりつらい……。そんな人が多いのではないだろうか。実は、薬をしっかり効かせるには2つのコツがある。

第1は先手を打つこと。「薬は症状が出る前から使い始めるのが最も効果的」と、こすぎ耳鼻咽喉科クリニックの金井憲一院長。花粉が本格的に飛び出すのは2月中旬以降だが、気がつかないだけで年明け頃から少しずつ飛んでいる。この段階から、体の中ではアレルギー反応が起こり始めているという。

花粉が体内に入ると抗体が作られ、免疫に関わる肥満細胞にくっつく(アレルギー反応を起こす準備が整う)。ここに再び花粉が侵入すると肥満細胞からヒスタミンなどの物質が放出され、症状が出る(イラスト:谷小夏)

「ごく少量の花粉でも、繰り返しさらされていると、鼻粘膜に炎症が起こり、花粉に対して次第に過敏になっていく。症状がまだ出ていない、この段階から薬で炎症を抑え込めば、症状が出るのが遅れ、しかも軽くてすむ」と金井院長。これは「初期療法」と呼ばれる方法(下図)で、鼻だけでなく目も同じ。「目のかゆみが出る前に点眼薬を使い始めると、症状が明らかに抑えられる」と東京女子医科大学眼科の高村悦子臨床教授も話す。

症状が出る前から治療を始める初期療法には、発症を遅らせる、症状を軽くするという2つの利点がある。発症してからだと、症状が重くなりがちなので要注意(図は取材を基に作成)

先手を打つタイミングは、花粉が本格的に飛散し始める1~2週間前。地域によって多少の差はあるが、だいたいバレンタインデーまでに開始するといい。逆に飛散量が増えて症状が出てきてからだと、鼻や目の炎症がひどくなっているため、薬が効きにくかったり、薬の種類を増やすことになったりする。「出遅れ」のデメリットは大きい。

もう一つのコツは、のみ薬ではなく、点鼻薬や点眼薬を最初に使い始めることだ。「えっ、のみ薬が先じゃないの?」と思う人も多いだろうが、実は逆の方がより効果的。鼻の場合は、「鼻粘膜の炎症を抑える『ステロイド点鼻薬』を毎日使い続ける。抗ヒスタミン薬をのむより効き目は格段に強い」と金井院長。初期療法で両者の効果を比較したところ、ステロイド点鼻薬群の方が明らかに症状を抑えられたという(下グラフ)。

16歳以上のスギ花粉症患者(中等症以上)49人が対象。ステロイド点鼻薬群と抗ヒスタミン薬服用群に分けて、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状の総合スコアを比較した結果、ステロイド点鼻薬群のほうが明らかに症状を抑えられていた(データ:金井院長)

点鼻薬や点眼薬は、花粉というアレルゲンがアレルギー反応を引き起こす、まさに最前線で働いて症状を抑える。「点鼻&点眼ファースト」が、花粉症治療の新常識といえる。詳しくは次回以降の記事で解説しよう。

金井憲一さん
 こすぎ耳鼻咽喉科クリニック(川崎市中原区)院長。1994年、山梨医科大学(現山梨大学医学部)卒業。昭和大学藤が丘病院耳鼻咽喉科准教授などを経て、2014年から現職。花粉症の治療に詳しい。日本耳鼻咽喉科学会専門医。
高村悦子さん
 東京女子医科大学眼科(東京都新宿区)臨床教授。1979年、東京女子医科大学卒業。2010年から現職。専門は角結膜感染症、アレルギー性疾患など。同大学眼科にドライアイ外来を開設。日本アレルギー学会代議員なども務める。

(ライター 佐田節子)

[日経ヘルス2018年3月号の記事を再構成]

日経ヘルス 2018年 3 月号

著者 : 日経ヘルス編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 700円 (税込み)


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