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がんを経験した医療経済学者が語る 「日米がん格差」

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

大腸がんを経験した国際医療経済学者・アキよしかわさんが、その経験からがん治療の日米間の違いや患者として見た課題を『日米がん格差』(講談社)という書籍にまとめた。日本と米国の医療の違いはどこにあるのか? よしかわさんに、がん治療の経験から見えてきた「その差」について聞いた。

◇  ◇  ◇

よしかわさんは、10代半ばで単身米国に渡り医療経済学を学んだあと、カリフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学で教鞭を執る。学術面で活躍することにとどまらず、米国で医療コンサルティング会社を作り、日本でも会社を運営してきた。

そんなよしかわさんが大腸がんと診断されたのは、2014年。その後、日本で手術を受けて、米国で化学療法を受けた。医療分野の専門家として豊富な知識を持っていたとはいえ、病院選択プロセスでは多くの発見があったという。がんに立ち向かうときにどう考えたのか、病院をいかに選ぶかという点から日本でがんの治療を受ける上での課題を語ってくれた。

がん医療の質を伝える情報が足りない

「がんと言われたとき、新しいチャレンジと感じました」。よしかわさんは、がん告知を受けた時をこう振り返る。

著書では自身が直面した問題をいくつも書いているが、中でも日本のがん治療で大きな課題だと感じたのはあらゆる面において「情報が表に見えないこと」と話す。

「日本では設備や症例数などで病院を格付けしている例はありますが、米国では、民間組織が全国の病院から設備に関する情報だけでなく、患者の生存率、術後死亡率、術後合併症率、入院期間、医療行為ごとのガイドライン準拠率といった治療実績に関する情報を集めて、公開をしてくれています。米国対がん協会という民間団体が中心となり、米国外科学会のがん部会であるCoC(Commission on Cancer)とともに、がん拠点病院から情報を集め、NCDB(米国がんデータベース)と呼ばれるデータベースを構築しているためです」と説明する。

米国の病院はCoCから「質の高いがん治療を提供する病院」と認定を受けるために、NCDBに対して統一したフォーマットでデータを提出する必要があり、病院は積極的にデータを出しているという。その上で、NCDBのスタッフはデータを分析。抜き打ちチェックまで行う。不正があったり、成績が悪かったりすると、病院はCoCの認定を喪失する。認定されないままだと、病院はがんの患者を集められず、他の病院に後れを取ることになる。だからこそ全国から詳しい情報が集まる。

データを集めて認定する目的の一つは、どこの病院でも同じ治療を受けられるように病院同士の競争を促すことだ。

「病院は、医療行為ごとにガイドラインの準拠率を公表し、病院の質の高さをアピールするのです。そうした情報がネット上や市民講座で事実上公表されています。病院はより良い成績を目指し競争し、結果として患者はがん医療をどこでも同等水準で受けることができ、がん医療の質の向上にもつながっています」

そうして治療成績のばらつきが米国では少なくなっていくという。

病院間の治療成績にばらつき

「日本では医療機関の治療成績についての情報が開示されることがほとんどありません。一部公開されていても一般の人々がその情報を見て、自分自身で判断できるようにはなっていません」

よしかわさんらの会社とスタンフォード大学とが行った研究により、日本では病院間で治療成績のばらつきが大きいことが分かったという。

例えば、「腹部大動脈瘤手術」「冠動脈バイパス術」「結腸切除」「胃切除」「膵臓切除」という医療行為について術後死亡率と術後合併症率、救命の失敗の項目を比べると、病院ごとの治療成績のばらつきが米国よりも大幅に大きいことが分かったというのだ。

一方で、医療費のばらつきは米国ほどではない。日本は国民皆保険であるため医療費の差が生じにくいが、治療成績についてはばらついている状況。つまり、同じ費用を払っていても、病院ごとに治療成績が違う。しかし、そうした情報は一般の人々には届きづらくなっているようだ。

質を高める競争を促す「見える化」

では、日本ではどのように病院を選べばよいのだろうか。

「日本でどう病院を選ぶかは本当に難しいのです。米国では徹底した情報開示に基づき、価格や質を宣伝して競い合っていますが、日本は病院を選ぶための情報が少なすぎます」とよしかわさんは言う。

本来、病院を選択するための情報は3段階ある。最も重要な情報は生存率など提供した医療の結果である「アウトカム」。さらに、次いで入院期間など治療の過程を示す「プロセス」があり、最後に人員配置や検査機器などの「ストラクチャー」。これら3つはどれも欠かせない情報だ。本気で良い病院を選ぼうとするのなら、アウトカムやプロセスのような医療の質に直結する情報が必要なはずだ。

しかし、よしかわさんは、「日本では医療の質に関する正確なデータが公開されておらず、広告もできません。2007年からCTやMRIのような設備はアピールできるようになりましたが、『うちには設備が整っています』という広告の仕方しかできないため、そのことが過剰な設備投資につながっている可能性があります。実際、日本は世界で最もCTやMRIが購入されています」と説明する。

「今後はCTの導入数による競争ではなく、医療の質による競争を促す必要があります。そのためには、医療の質に関する正確な情報を集め、成績を病院に伝え、立ち位置を知らしめることが必要です。全てを公開することは難しいでしょうが、徐々に情報を公開して『見える化』を進め、消費者(患者と患者の家族)もこのような情報を見極め、判断して行くように自立し進化していくことが必要です」

また、米国では「キャンサーナビゲーター」[注1]と呼ばれる役割を果たす人がいる。能動的にがんに悩む人をサポートする人たちだ。情報提供もこうした人々が担う面が大きくなっている。よしかわさんは伴走者として日本でも同じような役目の人々が必要と強調する。

日米がん格差は埋められるのか、情報の公開という点から、今後の動きに注目したい。

[注1]がん患者やその家族に正しい情報を伝え、治療を進めていく上でのサポートを行う人。がん患者一人ひとりに担当がつく。医療従事者に限らず、地域のあらゆる人がナビゲーターになることができ、コミュニティセンターや社会福祉事務所など、病院に限らず様々な場所で相談に応じる。

アキよしかわさん
 グローバルヘルス財団理事長、グローバルヘルスコンサルティング会長。10代で単身渡米し、医療経済学を学んだ後、カリフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学で教鞭を執り、スタンフォード大学で医療政策部を設立。米国議会技術評価局などのアドバイザーを務め、欧米、アジア地域で数多くの病院の経営分析をした後、日本の医療界に「ベンチマーク分析」を広める。データサイエンティスト、経済学博士。

(文 ステラ・メディックス)

[日経Gooday 2018年1月22日付記事を再構成]

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