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「Mono-Coto Innovation 2017」で優勝した中高生チーム

「Mono-Coto Innovation 2017」で優勝した中高生チーム

生活者のニーズを徹底的に探索し、イノベーションを生み出す手法として注目されているデザイン思考。企業内だけでなく、外部企業も加えることで新たな視点で創造性を発揮しようとするケースが多かった。それが最近は、社会人だけでなく、中高生と一緒にワークショップを開催することで、さらなる新しい発想につなげようとしている企業が増えてきた。企業は新規事業の種を得られる可能性があり、中高生は授業の一環ではあるが、思考力の強化につながる。企業にとって若者市場の開拓が必須になる中、デザイン思考が両者を結ぶ重要なツールになりつつある。

米オラクル、高校生のデザイン思考教育を支援

米オラクル本社の敷地内にある「デザインテック・ハイスクール」の新校舎。何棟ものオフィスビルが見える場所に建設された(写真提供:米オラクル)

米オラクル本社の敷地内にある「デザインテック・ハイスクール」の新校舎。何棟ものオフィスビルが見える場所に建設された(写真提供:米オラクル)

2018年1月9日、デザイン思考を本格的に授業に取り入れた高校が、米シリコンバレーに誕生した。それが「デザインテック・ハイスクール(d.tech HighSchool)」である。同校の創設は2014年だが、これまでは仮キャンパスで運営していた。それが今回、正式なキャンパスをシリコンバレーにある米オラクルの敷地内にオープンしたことでも注目された。同校では、通常の高校で行われる授業の内容だけでなく、現実社会で問題解決ができる人材を育成している。そこで、信頼や相手への思いやり、クリエーティビティーを学ぶための手法として、デザイン思考に着目した。この趣旨にオラクルが賛同したという。

敷地内に完成した校舎は延べ床面積6万4000平方フィート(約6000平方メートル)の2階建てで、550人の生徒が学ぶ。デザイン思考だけでなく、プログラミングのほか、ウェアラブル端末をデザインする授業などもある。

新校舎のアイデアも生徒たちがデザイン思考で

共同作業や発表などを中心とした授業にふさわしい内部環境

共同作業や発表などを中心とした授業にふさわしい内部環境

新校舎やキャンパスも、生徒たちのデザイン思考によって生まれた。生徒たちはチームをつくり、校舎の環境やキャンパスと地元コミュニティーを結びつける仕組みなどを、デザイン思考の手法で検討してきた。企業などで導入する手法と同じく、生徒たちは付箋紙やプロトタイプ模型などをつくって議論。それをプレゼンテーションすることを繰り返した。

授業にはオラクル社員が加わったり、メンターも務めたりする。オラクルでの夏のインターンシップの機会も生徒たちに与えられる。生徒が独自の盗難防止ハンドバッグを考案したこともあり、それをオラクルが特許申請するなど、すでに同校とオラクルは結びつきを深めている。今回のケースは教育の新しい姿といえそうだ。

中高生がデザイン思考で新商品のアイデア競う

国内でも企業と中高生がデザイン思考でコラボレーションするケースがある。デザイン思考の研修プログラムなどを手がける東京都目黒区のCurio School(キュリオスクール)は2017年12月27日、お台場にある日本科学未来館で「Mono-Coto Innovation 2017」と呼ぶイベントを開催した。中高生が5チームに分かれ、デザイン思考を活用しながら新商品のアイデアを競った。

2017年8月の予選会には全国から約250人の中高生が参加。その中から優秀なアイデアを評価された5チームが今回、決戦大会としてさらにアイデアを磨き、最終プレゼンに臨んだ。毎年開催される同イベントは今回で3年目。富士通デザインやタイガー魔法瓶、PwC コンサルティング合同会社などがスポンサー企業になったほか、経済産業省が後援。審査員としてユカイ工学の青木俊介・代表取締役やマクアケの木内文昭取締役らが参加して協議した結果、「離れた親友と時空間を共有できるドーム型デバイス"COVO(コーボ)"」を発表したチーム「New-Wind」が1位を獲得した。

同コンペはスポンサー企業が深く関わる点が特徴。「企業が出題する本物の課題に中高生が挑み、企業の担当者がメンターとなってアドバイスしながら、プロトタイプづくりも支援する」(西山恵太・キュリオスクール代表取締役)。

1位のチームによる発表

1位のチームによる発表

1位のチームは、金型製造のIBUKIとエンジニアリング企業のXrossVate、日本ユニシス・エクセリューションズがスポンサー企業で、「誰かと、何かと、"つながりたい"気持ちを叶えるモノ」がテーマ。メンバーの実体験を踏まえ、長期入院している女子学生と親友をターゲットにしたところ、離れたベッドでも親友同士が仲良く同じ画像を見られるシステムの発想につながった。このシステムでは親友も自宅のベッドで寝ながらコミュニケーションする点が特徴だ。

社会人がいくら考えても、中高生の思考法は分かりにくいだろう。コーボの発表時でも、「なぜ親友も一緒に寝ながらコミュニケーションするのか。親友は自宅にいるのだから、机の上に置いた画面でコミュニケーションすればいいのでは」といった質問が審査員から飛んだ。それに対する発表者の回答は「親友同士だからこそ、同じようにしたい」といったものだった。若者の心をつかむためにも、デザイン思考は必須のツールといえそうだ。

(瀧口範子/ジャーナリスト、大山繁樹/日経デザイン)

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