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定年楽園への扉

定年後のシニアなら 独りで過ごす時間が多くてもいい 経済コラムニスト 大江英樹

2018/2/8

写真はイメージ=123RF

 老後の三大不安は「健康」「お金」「孤独」だといわれます。このうち、健康とお金は現役時代でもイメージしやすく、ある程度備えることもできるでしょう。

 ところが、孤独に備える人は少ないものです。孤独は定年退職しないと実感できないからです。現役時代には考えもしないでしょうが、退職後は特に親しい人でもない限り、それまで付き合っていた会社の人たちとの縁はほとんどなくなります。

 つまり、退職して初めて孤独は襲ってくるのです。従って、実は孤独が一番深刻な問題である、と私はいつも主張しています。できれば、現役時代から趣味の集まりや地域の人たちとの交流を通じて「自分の居場所づくり」を心がけたいものです。

 では、定年後に孤独に陥った人はどうすればいいのでしょうか。いろんな活動の場はありますが、新しい仲間をつくるのはそれほど簡単なことではありません。

■人と交流するのが苦手な人はたくさんいる

 世の中には人と交流するのが苦手な人もたくさんいます。実をいうと私自身も、知らない人たちの話の輪の中に入っていくのはそれほど得意な方ではありません。どちらかといえば家で独り、本を読んだり、映画を見たりする方が好きです。旅行だって団体旅行ではなく、独りで好きなところにマイペースで出かける方がずっと楽しく感じます。

 独りでいることは必ずしも悪いことではありません。人間の性格は人それぞれですから、その人に合った時間の過ごし方や生活の仕方を考えればいいのです。独りで過ごす時間が多くても、心を許せる友人や家族がいれば孤独に陥っているというわけではないでしょう。

 逆に多くの人と交流があるからといって、その人が孤独でないとはいい切れません。表面的に多くの人と付き合っていても心の中では充実感がなかったり、信頼できる相手がいなかったりすればそれは孤独といえます。

 問題は「老後に独りでいるのはよくないことだ」という風潮が満ちていることです。世の中に出ている定年対策本を見ると、「定年後は人との付き合いを大切にしなさい」とか「新しい出会いを求めて積極的に活動しなさい」という趣旨のことが書いてあります。そのこと自体は間違いではありませんが、さりとてあまり外交的でない人にそれを求めるのは酷というものです。

 残念なことに現代は社会全体が不寛容性に満ち、多様性や個性が排除されかねない空気があります。しかし、私はリタイアしたシニアの特権の一つは「空気を読まない」ことだと思っています。長年の会社生活で「空気を読む」ことを強いられ、やっと解放されたのですから、自分の好きなようにやればいいのです。

■わがままではいけないが、世に迎合する必要はない

 もちろん、だからといって人の迷惑を顧みない、わがままな高齢者になってはいけません。少なくとも自分の生き方やライフスタイルについては世に迎合する必要はない、ということです。

 独りでいることが好きな人は、ライフスタイルをしっかり持っている人だといっていいでしょう。独りを不安がる、という心理は自分のやりたいことが明確ではなくあまり自信がないから、ただ人と一緒にいたいだけなのかもしれません。

 自分がどうしたいか、何をやりたいかを考えて、それがはっきりすれば別に人に合わせる必要はないのです。

 孤独、大いに結構なことじゃないですか。人が何といおうが、自分の気に入ったライフスタイルを大いに楽しみましょう。それがシニアの生き方です。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は2月22日付の予定です。
大江英樹
 野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める『金持ち老後』入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/

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