顔認証はなぜ本人とわかるの? AI使い骨格など判断
スーちゃんコンサートのチケットを買ったら、顔写真を登録するようにいわれたよ。当日にカメラで本人かどうかを確認するために使うと話していた。「顔認証(にんしょう)」という技術らしいけど、なんで本人の顔がすぐにわかるのかな。
目・鼻・口の特徴からシステムで見分けるんだ
森羅万象博士より顔認証は、人が目で調べるんじゃなくて、コンピューターで人の顔を見分ける技術だよ。NECのシステムを使えば、日本全国から集めた顔の画像からたった1人を4秒ちょっとで探し出せるらしい。コンピューターの人工知能(AI)を使って、顔の骨格などから本人と似ているかどうかを調べるんだ。1秒間に3000万件の画像を比較できるそうだよ。
顔認証は3つの手順があるよ。まず画像から顔を見つける「顔検出(けんしゅつ)」だよ。カメラで撮った画像のどこに顔があるか探すんだ。体が写っていても、頭の位置のほか、目や鼻、口があるといった顔らしさなどから判断するよ。
顔を見つけたら、次は「特徴点検出(とくちょうてんけんしゅつ)」をするよ。目の瞳(ひとみ)の中心や鼻のふくれているところ、口の端などの位置を検出するんだよ。顔が傾いていたら、顔の位置を調整するんだ。
最後はシステムに登録されている顔と同じかどうか判断する「顔照合(しょうごう)」だよ。目や鼻、口の特徴などを登録された顔と比べ、同じ顔があるか判断したり、似ている順に顔を並べたりできるよ。
マスクやサングラスで顔の一部が隠れてても同じ人なら見抜けるよ。顔のいろいろな特徴をみて、本人かどうかを突き止める。口が見えないなら鼻や目を中心に、目が隠れているなら鼻や口を中心に顔の凹凸や骨格も参考にするよ。
年をとっても、本人だって分かるんだよ。シワが増えたり、髪の毛が薄くなったりするけど、瞳の位置や顔の骨格は他人とは同じにならないからね。年齢による顔の変化も考えるんだ。
ただ、子どもは成長とともに顔立ちが変わるから難(むずか)しいそうだよ。体だけじゃなく、顔の形の元になってる頭蓋骨(ずがいこつ)も大きくなる。数年前の写真と今の写真を比較したときに、同一人物と判断できない可能性もあるんだよ。
そっくりの顔の人がいたらどうなるんだろうね。みんなの周りに双(ふた)子のお友達がいたことはないかな。双子の中でも一卵性(いちらんせい)って呼ばれる双子は同じ遺伝子を持っているから顔もそっくりだよね。
でも、顔は遺伝子だけじゃなくって生活習慣で少しずつ変わってくるんだよ。話し方や食べ方のくせとかで、双子であっても顔周りの骨格や筋肉の付き方も違ってくるよ。
顔が斜めや横向きでも、同じ人だって分かるんだ。日が差していたり建物の影になったりして顔の色が違っていても大丈夫。AIを使って、どこが顔なのかを分析するんだ。登録は、正面を向いた本人の顔写真が1枚あればいい。その1枚からどんな顔の形をしているか予測するからね。
顔認証のシステムに必要なのはカメラだけだよ。今はパソコンやスマートフォン(スマホ)にもカメラがついているから、顔の画像を撮りやすいね。カメラをみるだけで本人の確認ができたら楽だよね。
顔認証はいろいろなところで使われているよ。米国などの空港では、旅行に来た人たちの顔を撮るカメラがあるよ。パスポートに登録した顔写真とその場で撮った顔を比較して本人かどうかを調べているよ。
日本でも一部の空港で日本人の顔認証が始まっているよ。2020年に東京五輪・パラリンピックがあるから、日本に来る外国人はどんどん多くなるね。
日本人の審査にかかる時間を減らし、外国人の審査に力を入れたら空港での待ち時間を短くできる。
空港だけじゃないよ。テーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)では年間パスを持っている人の確認に顔認証を使っているよ。カメラに顔を向けると約1秒で認証できる。歌手やアイドルのコンサートにも利用が広がっているよ。チケット転売の防止に役立つよ。
防犯カメラのように遠くから撮った映像でも人を特定できるよ。アルゼンチンやインドなどでは、街中の監視にも顔認証が使われているよ。犯罪の容疑者や行方不明者の捜索にも役立つんだ。
不正防止へ指紋など生体認証広がる
博士からひとこと犯罪の増加や社会の情報化に伴い、本人確認の手続きが大切になっている。パスワードや磁気カードなどを使う方法もあるが、もの忘れやカード偽造の心配が残る。そこで顔や指紋、手のひらの血管など体の一部を使って識別する生体認証が注目されている。
生体認証はパスワードなどを忘れないで済む利点がある。指紋や血管は特別な装置で照合するが、顔認証はカメラで顔を撮るだけでわずらわしさがない。最近は人工知能(AI)が賢くなっており、顔画像の解析がしやすくなって利用が進んでいる。
一方、顔認証は個人のプライバシーに関わる顔の画像を扱う。登録した顔画像の管理に不安を抱いたり、顔を監視されたくないと感じたりする人は多い。他人の顔写真を使って、本人になりすます問題も指摘されている。活用を広げるには、認証精度をいっそう高める研究開発のほか、プライバシーの面から社会全体の理解が必要になる。
(NECに取材しました)
[日本経済新聞夕刊2018年1月27日付]
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