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シャープ 液晶技術から生まれたお酒用保冷バッグ

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氷点下の温度帯の日本酒やカクテルを自宅で気軽に楽しむ――。そんな新しいお酒の体験をシャープの社内ベンチャー「テキオンラボ」が、クラウドファンディングの「Makuake」で仕掛け、注目を集めている。極寒地帯でも凍らない液晶材料の技術を応用して蓄冷材を開発。狙った温度帯で凍らせる技術を編み出した。日本酒やカクテルのボトルを入れる保冷バッグに仕込み、注いだときにマイナス2℃になるように設定することで、氷点下の飲みごろを実現している。テキオンラボ代表の西橋雅子氏に開発の背景や商品の特徴を聞いた。

氷点下という新しい飲みごろを発見

――Makuakeで立ち上げた氷点下で飲むお酒の支援プロジェクトが話題になっていますね。プロジェクトの内容を教えてください。

最近展開したプロジェクトは2つで、1つが煎茶ジンの「茶饗(さきょう)」(2017年12月27日まで)、もう1つがスパークリング日本酒の「白那(はくな)」(2018年1月30日まで)です。前者は静岡県の茶農園「カネジュウ農園」などとコラボレーションした企画で、支援者には主にこだわりの茶葉と最上級ジンの「スター・オブ・ボンベイ」、ハリオ製オリジナルボトルをセットで提供。後者は埼玉県にある老舗蔵元の滝澤酒造が醸した濁りスパークリング日本酒を支援のリターンとして提供するコラボ企画です。

いずれもシャープが開発した、グラスに注いだときにマイナス2℃になる温度を1時間30分~2時間程度キープできる筒状の保冷バッグが付いています。使い方は、茶饗ではセットの材料で簡単に作れる煎茶ジンのカクテルを入れたハリオ製ボトルを、白那ではスパークリング日本酒のボトルを、凍らせた保冷バッグに直接入れて約30分待つだけ。氷点下のお酒が出来上がり、自宅で手軽に楽しむことができるわけです。テーブルに出したまま、しばらくの間氷点下の状態で注げるので、ホームパーティーなどでとても重宝します。

――氷点下で飲むお酒とはまさに未知の体験の提案ですね。氷点下にするとどんなメリットがありますか?

茶饗の場合、氷点下を保つことにより、茶葉の旨み成分であるテアニンが抽出され続ける一方で、渋みの成分であるカテキン、苦みの成分であるカフェインは抽出が抑えられます。また、氷点下をキープすることで、酸化を抑えることができます。こうして時間を追うごとに味わいが豊かになり、それでいてフレッシュな緑色を保ったままの茶葉をボトル内でジンに漬け込むことができ、注ぐだけでバーテンダーが作ったようなおいしい煎茶ジンのカクテルを、自宅で手軽に味わえるのです。

また、スパークリング日本酒の白那は、氷点下を保持するとガス圧が安定する利点があり、通常より炭酸を強くできるため、飲んだときのキレが非常に良くなります。さらに氷点下まで冷やしたお酒を口の中で転がすと、体温によって徐々に温度が上がり、味わいの変化が楽しめます。今日は、それぞれ実物を用意したので、飲んでみてください。

――(トニックウォーターで割った煎茶ジンと、白那をそれぞれ記者が飲んでみた。すると…)茶饗は、お茶の香りがフワッと鼻を抜け、苦みや渋みをあまり感じない代わりに旨味が前面に出て、とても飲みやすいですね。かたや、白那は口に含んだ瞬間は強めの炭酸でキリッとしますが、舌の上で少しの間転がしていると、徐々に甘みが広がり、飲み込んだ後もその余韻が口の中に残ります。どちらも今まで味わったことがない感覚です。

そうやって、今までのお酒との違いが、誰が飲んでも感じられるほど明らかなことも、この氷点下で飲む茶饗や白那の魅力です。実は、この保冷バッグを使った氷点下のお酒の提案は、2017年3月にMakuakeでプロジェクトを立ち上げた「冬単衣」という日本酒が最初で、このときは約1870万円の支援金を集め、大成功でした。その人気を背景に立ち上げた第2弾の商品が茶饗、第3弾の商品が白那です。今回も反響が大きく、特に白那の支援金額は約895万に達しました。

狙った温度帯で凍る不思議な氷

――プロジェクトの要は、シャープが開発し、提供する斬新な保冷バッグです。どのような原理で氷点下をキープしているのですか?

保冷バッグの内側には蓄冷材が仕込まれています。蓄冷材の中身は、水をベースに、固体から液体に溶ける温度帯が水とは異なる化学材料を混ぜたもの。通常、水はセ氏0℃で溶け始めますが、化学材料の配合を調節することによって、マイナス24℃からプラス28℃の間で、溶け出す温度を変えられる基礎技術を活用しています。固体から液体に溶けるとき、触れている対象物の熱を奪って冷やし、特定の温度をキープできることが特徴で、今回はその温度を、グラスに注いだときにマイナス2℃になるように調節したわけです。

――溶ける温度帯を変えられる何とも不思議な氷ですね。

もともとはシャープが得意とする液晶の技術がベースになっています。液晶は氷点下30度以下の極寒地帯でも絶対に凍ってはならないことが至上命題。凍ったら映像が映らなくなりますからね。ですから、開発陣は凍らないように化学材料を調整して液晶を作っています。蓄冷材はその技術を逆手に取りました。つまり、どんな温度でも凍らない液体の化学材料の種類や配合を調整して、狙った温度帯で凍らせる技術を編み出したのです。

実は、すでにこの蓄冷技術はインドネシアなど発展途上国向けに製造する冷凍冷蔵庫で使われています。インドネシアは頻繁に2~3時間の停電があり、夜中に停電が起こって復旧することが繰り返されると、庫内の食材が知らぬ間に傷んでしまうことが問題になっていました。そこで、固体から液体に変わる温度を冷蔵庫内と同じ5℃に設定した蓄冷材の板を庫内に格納。停電時でも庫内は5℃にキープできる冷蔵庫を販売しています。

――その蓄冷材の技術に目を付け、販路拡大のために日本酒や煎茶とタッグを組んで、今回商品化を図ったわけですね。

日本酒もお茶もいかにして若い世代を取り込むかが課題。コラボした冬単衣の石井酒造も、茶饗のカネジュウ農園も、白那の滝澤酒造も、普段から若い世代に対して新しい商品や飲み方を提案し続けているイノベーターたちです。シャープの蓄冷技術がそのイノベーターたちの目に留まり、氷点下で飲む今までにないお酒を提供できたことは、非常に意義深いことだと思っています。実は、従来の日本酒業界では、氷点下に冷やすことは、「味が薄くなる」「香りがなくなる」と考えられ、ご法度でした。しかし、その固定概念を疑い、工夫したからこそ、口の中で味が変化する新しい体験を生み出せたのだと思います。

今回の茶饗や白那を入り口にして、若い人たちが日本茶に興味を持ったり、日本酒に関心を抱いて最後は酒蔵が魂を込めて作る大吟醸を味わうレベルまでファンになるなど、将来につながればうれしいですね。

シャープが「適温ビジネス」を切り開く

――西橋さんは、シャープの社内ベンチャーである「テキオンラボ」の代表を務めていますが、これまでの経歴を教えてください。

私は92年にシャープに入社して以来、主に商品企画を担当し、日本語ワープロ「書院」、携帯情報端末「ザウルス」、家庭用LED照明に携わってきました。しかし、14年に会社の経営が厳しくなり、色々と整理された中で、研究開発本部に異動。この本部の中で私にできることはあるのかと戸惑いもありましたが、新しい開発テーマをいち早く事業化につなげる「事業ブリッジ」の役割を果たせと指示を受けました。そうした中、社内に無数にある基礎技術のうちから目を付けたのが、狙った温度をキープできる蓄冷材です。化学者にとっては当たり前の技術のようですが、私にとってマイナス24℃やプラス28℃という狙った温度で固体から液体に変化する「氷」は不思議以外の何物でもない。この魅力的な技術にほれ込み、これはきっと人を幸せにすると考えて、力を入れてきたのです。

――14年の厳しい状況を経て、新生したシャープは新規事業に対するスタンスが変わってきましたか?

新しいチャレンジは多くなっていると思います。以前も新規事業への挑戦は行われてきましたが、最終段階でリスクを考えてトーンダウンすることもあり、その他にも乗り越えなければならない壁がたくさんありました。しかし、それが今は比較的ゴーサインが出やすくなり、クラウドファンディングという社内で未経験なことも、チャレンジが認められるようになったことは大きな変化です。ただし、クラウドファンディングは社内では私が初の挑戦者であり、後に続く人たちのためにも絶対に成功させなくてはならないプレッシャーがあったことは事実です。

――第1弾は成功し、第2弾、第3弾と続いています。まずはお酒の分野から切り込みましたが、今後は蓄冷材を使って他の分野を開拓していきますか?

例えば、保冷温度を0℃以上に設定した幼児用、あるいはペット用の「冷やしすぎない」保冷グッズなどが考えられるでしょう。今は既存の凍った保冷剤をタオルにくるんで使う場合が多いと思いますが、保冷剤がずれて幼児やペットの肌に触れるのではと不安に感じる人は少なくないでしょうからね。つまり、ラボ名にもある通り、ものにはそれぞれ「適温」があり、それを用途に合わせて提供できればと考えています。他にも、カルパッチョや刺身をずっと5℃でキープできるお皿や容器などがあれば、テーブルに出しっぱなしでも心配無用ですよね。これから一年くらいはまずこの蓄冷材を用いた「適温ビジネス」を、他社とのコラボを通じて世の中に広めていければと思っています。

(ライター 高橋学)

[日経トレンディネット 2018年1月17日付の記事を再構成]

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