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バイオリニスト鈴木愛理 ドイツ修業時代を続ける理由

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ドイツ在住のバイオリニスト鈴木愛理さんが1月、初のCDアルバムを出した。ベートーベンとリヒャルト・シュトラウスのバイオリンソナタを収めた注目作。2017年秋にはハノーバー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の副コンサートマスターに就任した。留学を機に渡独して7年。「ドイツ修業時代」を続行し自らの演奏芸術を磨く理由を聞いた。

言葉を習得しその国の音楽の演奏に磨きをかける

「ドイツに行って自分が成長し変わったと思えるようになったのは本当にここ1、2年のこと」。一時帰国した鈴木さんに会って話を聞いたところ、こんな答えが返ってきた。桐朋学園大学音楽学部に特待生として入学後、10年秋に渡独し、ハノーバー音楽演劇大学でクリストフ・ヴェグジン氏に師事。ハノーバーを拠点に演奏活動を続けている。

日本は明治維新以来、西洋音楽をドイツに学ぶ傾向が強かった。バッハ、ベートーベン、ブラームスの「ドイツ三大B」は特に日本で権威も人気も高かった。しかし今はもちろんドイツ一辺倒ではない。米国やフランスも留学先に選ばれ、日本の音楽教育も充実し高いレベルにある。そうした中で「高校生の頃から早く留学したいなという思いがあった」と語る鈴木さんは古風にも思える。だが彼女がドイツ留学を選んだ理由ははっきりしている。

一つには、レッスンを受けたのを機にヴェグジン氏のもとで早く習いたいという気持ちがあった。もう一つは、大好きなドイツ音楽を演奏するためにドイツ語を習得し、言葉から演奏表現を探っていかなければならないという考えがあったようだ。「言葉の勉強によって変わった」と鈴木さんは言う。「私たち日本人がドイツに住むのは、外国人として暮らすということ。人とのつながりやコミュニケーションを取ることが非常に大事だ」と話す。ドイツ語を普通に話せるようになり、人とつながって初めて、ドイツの音楽を聴いて弾けるようになる。そこに至るのは「やはり時間がかかること」であり、ようやくここ1~2年で自分の成長を実感できるようになったそうだ。

言葉が音楽にとって、ドイツ語がドイツ音楽にとってそれほど重要なのか。鈴木さんに質問を続けると、持論を語り始めた。「ドイツの音楽は音単体の響きが美しいのではなく、フレーズで聴かせるもの」という捉え方だ。「言葉を積み重ねてフレーズにし、文章を作っていくようなものだと思う。ドイツ語やドイツ歌曲の勉強を通じて改めて分かってきた」と説明する。

言葉を積み重ねた文章のような音楽を聴かせる

さらに鈴木さんはそれぞれの国の言葉に応じて音楽の様相が異なることも解説し始めた。「例えば、フランス音楽は瞬間の美しさやインスピレーションで成り立っている。ドイツ音楽はそういった単体の瞬間の響きではなく、言葉を積み重ねたフレーズでできているから、ドイツ語を理解していないと弾くのは難しいのかもしれない」。美しいメロディーラインで聴かすことの多い東欧やロシアの音楽とも違いがあるという。

では英語とも異なるドイツ語ならではの学び方があるのだろうか。彼女が言うには「ドイツ語は書いてみないと頭に入らない」そうだ。「どんなフレーズでも必ずノートに書いて覚えるようにした。ドイツの映画を何回も聴き直してセリフをノートに書く。聴くだけでは頭に入ってこない」。枠構造などドイツ語に特有の文の仕組みが見えてくる。そして語り合うのが重要だ。「ボーイフレンドやガールフレンドをつくることも大事ではないでしょうか」。こうしてドイツ音楽の演奏も語り口のフレーズを積み重ね、「一つの文章のように音楽の美しさを聴かせる」と言う。共演者と語り合うように演奏を組み立てていくのだろう。

1月24日に出たデビューCDアルバム「ベートーヴェン:スプリング・ソナタ/ストラヴィンスキー/R・シュトラウス」(発売元 オクタヴィア・レコード)は彼女の「ドイツ修業時代」の最初の成果報告だ。「ドイツで勉強したことを見せられる曲を選ぼうと思った」。そこで選んだのがベートーベンの「バイオリンソナタ第5番ヘ長調作品24『春』」とR・シュトラウスの「バイオリンソナタ変ホ長調作品18」、それにストラヴィンスキーの「ディヴェルティメント――バレエ音楽『妖精の口づけ』より」の3作品。ベートーベンとR・シュトラウスはドイツ生まれの作曲家。これにロシア出身のストラヴィンスキーが作曲したアンデルセン童話に基づくファンタスティックな作品を加え、独自の風味を添えている。

バイオリンとピアノが鮮やかに語り合う「春」

デビューCDで特に重要なのがベートーベンの「春」だ。「若い演奏家がバッハやベートーベンを録音することはリスクもあるといわれて悩んだ」と振り返る。しかし「今の自分を聴いてもらいたい」と思い、選曲したという。CDレコーディングの場所はドイツではなく日本。稲城iプラザ(東京都稲城市)で17年10月30日から11月1日の3日間で行われた。ピアニストのボリス・クスネツォフ氏がドイツから来日し、共演した。クスネツォフ氏はロシアのモスクワに生まれ、名門グネーシン音楽院で学び、8歳でドイツに移住した早熟の逸材だ。09年ドイツ音楽コンクールの優勝者であり、現在はハノーバーに在住し、後進の指導にも当たっている。

今回の映像ではピアノ伴奏がなく、鈴木さんだけで「春」のバイオリン独奏パートのみを弾く様子を捉えている。その独奏シーンを見るだけでも確かな演奏技術が伝わってくるが、やはりピアノとバイオリンによる完成品を聴きたい。そこでデビューCDに耳を傾けると、クスネツォフ氏との共演による彼女の「春」が独特の流れと響きを持っているのが分かる。

例えば、第1楽章では、有名な美しいメロディーが繰り返された後、第2主題でバイオリンとピアノが鮮やかな切れ味で掛け合いをする。語り合うような鳴り方だ。掛け合いの言葉が瞬発力を伴い、春めいて発散する。曲全体の構造の中でそんな鮮やかな響きを印象深く聴けるのは、彼女が説明する通り、ピアノとバイオリンが「音の言葉を積み重ねて文章になっている」からこそなのだろう。3月9日には浜離宮朝日ホール(東京・中央)で「デビューCDリリース記念 鈴木愛理ヴァイオリン・リサイタル」を開き、2人が共演する。

ドイツのオーケストラで副コンサートマスターに

鈴木さんは06年、5年に1回のポーランドのヴィエニャフスキ国際バイオリンコンクールにて17歳で第2位を受賞し、国内外で注目を浴びた。幼少時から多数の受賞歴があるが、実績に甘んじず、優れた演奏家が世界中から集まる傾向の強いドイツであえて挑戦を続けている。「ありがたいことにドイツでもソロでコンサートを開く機会をもらっている」と話す通り、公演の実績を重ねている。そして新たな挑戦としてオーケストラでの演奏が加わった。17年秋に就任したハノーバー北ドイツ放送フィルの副コンサートマスターの仕事だ。

「ドイツのオーケストラで演奏したいとずっと思っていたら、たまたまオーディションを受ける機会があり、合格した」と話す。「コンサートマスター(第1バイオリンの首席奏者)と第2バイオリンの奏者の間で難しい役割を担う」と語る。彼女はもちろんメンデルスゾーンやシベリウスらのバイオリン協奏曲をオーケストラとの共演で独奏した経験を多数持っている。それとも異なり、今はまだ「副」の立場ではあるが、楽団員として、コンサートマスターとして、オーケストラをけん引していく役目も目指す。

ソロと協奏曲、室内楽とオーケストラ。バイオリニストが関わるすべての音楽をドイツから吸収する意気込みの鈴木さん。ドイツの言葉で語り始めた彼女の音楽は、さらに磨きがかかり、深みを増し、日本の演奏家としての個性も出していくだろう。そんな予感をデビューCDに聴く。彼女のドイツ修業時代は続く。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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