吉沢亮 映画を軸にシフト、振り幅の大きい俳優へ成長
2018年は主演2作を含め、5作の出演映画が公開される予定の吉沢亮。近年は少女マンガ原作の映画での活躍が目をひいたが、17年はコメディ映画でもインパクトを残した。「セリフの意味をかみしめながらお芝居をしたいので、映画をやりたい」という希望が形になり、演技の振り幅が大きい俳優へ成長している。
11年から放送された『仮面ライダーフォーゼ 』で注目され、映画『男子高校生の日常』や連ドラ『ぶっせん』(共に13年)、『ロストデイズ』(14年)など、等身大の役を中心に経験を積んできた。近年は『オオカミ少女と黒王子』(16年)など、少女マンガ原作の映画での活躍が目立っていた。
17年は、ドラマ放送の後に劇場公開もされた『トモダチゲーム』や、配信ドラマ『ぼくは麻理のなか』のほか、福田雄一監督の『銀魂』や『斉木楠雄のΨ難』に出演。端正なルックスからは想像しづらい、不登校でイケていない学生役やギャグもできる、振り幅の大きい俳優であることを印象付けた。
「振り返ると、17年はいろいろな作品をやらせていただきました。『恋する香港』などのテレビドラマがありましたし、配信ドラマでは『ぼく麻理』があって。
なかでも大きかったのは、やっぱり『銀魂』です。僕が演じた沖田総悟というキャラクターは、原作ファンからもともと人気が高かったというのもあって、『銀魂』で周りの反応が変わりました。コメディ作品は見るのも演じるのも好きだったので、福田監督に呼んでいただけてとても光栄で。福田さんの作るコメディって、クスッとかじゃなくて、完全に爆笑しちゃう、ギャグみたいな感じの笑いじゃないですか。僕もカブトムシの格好をさせていただきましたが(笑)、これだけぶっ飛んでいる作品に携われて、うれしかったです」
■コメディやりたい欲が爆発
「沖田は存在自体がボケというか、ただその場にすんとした顔でいるという、キャラで笑わせるタイプだったので、あまりコメディっぽいことはやっていないんですよ。周りが楽しそうで、フラストレーションがたまっていたところで『斉木~』の撮影に入ったので、そこではコメディやりたい欲が爆発しました。アクの強い中二病の役を思い切りやらせていただいて、すごく楽しかったです」
興行収入38億円を突破したヒット作『銀魂』でインパクトを残し、吉沢の勢いは18年にさらに加速しそうだ。現時点で明らかになっているものだけで、映画出演作が5本。1月13日に公開された『悪と仮面のルール』は、思い入れのある作品になったという。
「僕は中村文則さんの小説のファンで、ほぼ全部読んでいるのですが、なかでもこの作品が大好きだったので、気合いが入りました。伊藤という役は、テロリストとして世界に絶望を与えることだけを考えているようで、時々人間っぽいところがチラチラ見えてしまう。その矛盾した感じを出せたらと思って演じていました。主演の玉木宏さんとは、現場では全くしゃべっていなくて。玉木さんの演じた久喜文宏という人物と、伊藤との距離感が伝わればいいなと思って、意識的に距離を置いていたんです。玉木さんもその意図を察してくださって、ありがたかったです。
中村さんの小説って、全体的に話が暗いんです。でもそのなかで主人公がもがいて、最後の最後にちょっとだけ光をつかむ感じが心にしみるんですよね。この作品も、そうなっていると思います。
中村哲平監督は、ミュージックビデオなども手掛けているだけあって、映像も重厚感があって美しいですし、役者の心情に寄り添いながら撮ってくれたので、とてもいい現場でした。監督が一番楽しそうにしていて、それだけでモチベーションが上がりました」
キラキラした演技は難しい
クールそうに見えるが、作品に対して熱い思いを持っていることが伝わってくる。このほか、岡崎京子原作でカルト的な人気のある『リバーズ・エッジ』(2月16日公開)や、マンガ原作の『レオン』(2月24日公開)、『ママレード・ボーイ』(4月27日公開/桜井日奈子とW主演)、『あのコの、トリコ。』(公開日未定/主演)と、作風の全く違う映画が続々と公開される。
「『リバーズ・エッジ』は大変でした。歪んだ世界を絵で見せている部分も大きい作品だったので、実写でやると聞いたときはビビりました。山田は、お芝居で見せる役じゃなかったので、今まで演じたなかで一番難しかったです。何だか分からないけど、目が行ってしまう男の子で、内から出てくるオーラで見せないといけない。クランクインの前からずっと悩んでいましたが、ヘタに芝居をしたら安っぽくなると思ったので、声のテンションや表情を一切作らずに、現場で生まれるものだけをくみ取ろうと考えました。
『レオン』は、17年1月に撮影しました。結構、コメディ寄りです。僕の役はフワフワしていて、綿あめみたいな男の子でした。実際に作中では何度もふわーって浮き上がるんですけど。『コイツバカだな』と思う瞬間が何度もあって(笑)、愛おしい役でした。
『ママレード・ボーイ』での役は、『あのコの、トリコ。』もそうでしたが、キラッキラしてます。これまでも、『オオカミ少女と黒王子』など、少女マンガ原作の映画には出させていただきましたが、ネクラだったり三枚目だったり、イケていない側の役が多かったんですよ。それが、今回はど真ん中のイケてるヤツ。いざそんな男子を演じろと言われても、やり方が分からない(笑)。恥ずかしくて現実ではちょっと言えないようなセリフを、目を見て言ったり、そういう表現が難しくて戦っています。廣木隆一監督は『普通に芝居して』と言ってくれますが、僕自身が『キュンキュンさせなきゃ』みたいに意識しちゃって(笑)」
18年にこれだけ公開作が重なったのは、吉沢自身による働きかけの賜物でもある。
「3年ぐらい前に、全クールでドラマの仕事が入っているときがあったんです。うれしかったけど、とにかく時間がなくて、1つひとつを消化していく感じになってしまって。そのときに、マネジャーさんに『セリフの意味をかみしめながらお芝居をしたいので、映画をやりたいです』と言って、それがこのタイミングで形になった感じです。だから、今は思っていたことがやれている実感はあります。
18年は、世に出て行くものが多いですし、思い描いていたものが1つの完成形になる気がするので、僕自身も楽しみにしています」
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2018年2月号の記事を再構成]
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