五輪警備にIT「三種の神器」 スカイツリーからも監視4K映像を5Gで伝送、AIで解析 セコムとALSOKが実験

セコムでは現在、監視カメラの映像を通常の4G回線で送っている。画質は鮮明度が低くコマが飛ぶようなレベルという。「5Gなら高精細な映像を伝送できるため、AIによる高精度な予測、判断が可能。数多くの監視カメラを有効活用できる」(寺本担当部長)。17年5月にはKDDIと複数地点に設置した高精細なカメラ映像を、5Gを活用して送信する実験を成功させている。

セコムは17年2月に開かれた東京マラソンでAIを駆使した観客の警備を担当したことで知られる。警備員の胸に取り付けた携帯型カメラやコース沿いに臨時に設置した監視カメラなど約100台の映像をAIが解析し、群衆の異常を自動検知する取り組みだった。

5Gが使えるようになれば、テロ攻撃の標的となった13年の米ボストンでのマラソン大会のように、難しい広域の警備も対応できそうだ。ドローンも活用して4Kカメラで縦横無尽に撮影すれば、より質の高い警備ができ「鬼に金棒」となる。

5Gサービスが始まる20年には東京で五輪パラリンピックが開かれる。国内の大手2社が世界に対して「警備の未来」を示す格好の舞台になるかもしれない。

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「警備」の枠超えて人助けも

1964年に開かれた東京オリンピックの前後に創業されたセコムとALSOKは通信業界の技術革新を取り込みシステムを進化させてきた。次世代の5Gをフル活用することで本業の警備の枠を超えた新サービスを展開できる可能性もある。

監視カメラがうずくまる通行人を発見すると、AIから通報を受けた警備員が急行する(三菱地所とALSOKによる実証実験)

18年1月22日から31日にかけて、東京・丸の内にあるオフィスビル「新丸の内ビルディング」で三菱地所とALSOKが共同で実証実験をしている。地下1階の通路に設置した監視カメラで、うずくまったり、道に迷ったりした人を撮影して人工知能(AI)で解析し警備員に対応させる。5Gなどを活用するALSOKの警備システムの基盤技術を幅広く活用する狙いがある。

三菱地所の奥山博之街ブランド推進部統括は「困っている人を手助けすることで、よりよいおもてなしの街になる」と語る。実験では突然うずくまった通行人の存在を、AIシステムで近くの警備員のスマートフォンにメールで通知している。警備員は内容を確認し通行人が心停止に陥ったケースも想定し、自動体外式除細動器(AED)を持って現場に急行した。

今回の実験では固定回線を利用したが、5Gが商用化されれば、おもてなしのサービスを提供するシステムも構築しやすくなる。

国内警備大手は2000年代から無線通信を利用した警備サービスに注力してきた。セコムが01年に発売した子供や高齢者の見守りサービス「ココセコム」ではKDDIの携帯電話サービスを活用して顧客を広げた。セコムは携帯電話回線を大手から借りてサービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)として100万回線を超える契約がある。警備で無線通信技術がいかに重要かを物語る数字だ。

ただ、5Gをフルに活用するには、携帯電話大手による後押しが欠かせない。5Gでは「ネットワークスライシング」と呼ばれる機能も実現される見込みだ。これは「映像配信向け」「自動運転向け」など用途に応じてカスタマイズした5Gの機能を、仮想的にネットワークとして提供する。

ALSOKの桑原英治執行役員待遇は「セキュリティーを確保するために、ネットワークスライシングした警備専用の仮想ネットワークを提供してほしい」と語る。これが実現するかは携帯大手との今後の交渉次第だ。

歴史的に警備産業は労働集約型とされてきたが、セコムとALSOKは70年代からセンサーなどを使い質の高いサービスを提供してきた。今後は携帯電話大手と密接に連携して5Gによる技術革新をリードできれば、さらなる進化も可能になりそうだ。

(堀越功)

[日経産業新聞2018年1月29日付を再構成]

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