北原里英、NGT48卒業 グループの10年で学んだこと
NGT48に移籍して、結成以来グループを引っ張ってきた北原里英が、「AKB48に加入してから10年の節目でついに決意した」とグループからの卒業を発表した。2018年春に予定されている卒業へのカウントダウンに入るとともに、主演映画『サニー/32』が2月17日に公開。AKB48グループでの10年間で学んだ「どんな状況でも現場で楽しく仕事ができる」という強みを意識し、卒業後は演技の仕事を中心にしたいという。
『サニー/32』を「女優としての名刺代わりにしたい作品」だと語る北原。「犯罪史上、もっとも可愛い殺人犯」と呼ばれた少女「サニー」の狂信的信者である2人(演じるのはピエール瀧とリリー・フランキー)に拉致監禁される主人公の中学校教師を演じた。
「もともと監督の白石(和彌)さん作品のファンだったので、脚本をわくわくして読みましたが、自分が夢見ていた邦画らしい世界が広がっていたので興奮しました。想像するのは難しくて、自分にはハードルの高いシーンも多かったのですが、(ピエール)瀧さんとリリー(・フランキー)さんが出演することが決まってからは、脚本を読んでいても2人にしか見えなくなって、役をつかむことができました。
肉体的にも精神的にも大変なシーンが毎日続いて、濃厚な撮影でしたね。最初の見せ場は山小屋の2階から飛び降りて雪の中を逃げるシーンですが、思っていたよりも、2階から飛び降りることに恐怖を感じてしまって。私の中に甘えがあって、スタントマンの方にやっていただけるのかなと思っていたんです。でも全然普通に、スタッフさんが『ここで飛びまして』とさらりと説明を進めていくので(笑)、撮影が始まる前にしていた覚悟を上回る試練が来て、そこで改めて、『自分が全部やるんだ』と気が引き締まりました。
映画の特報映像で私の下着姿や瀧さんに頬をなめられているシーンが使われてるので、会う人に『あれ、すごいね』とよく言われます。でも、下着姿よりも、他のシーンがもっと大変だったので、自分がどこに体を張ったのかがわからないくらいに麻痺していて」
映画では、「ネット上に現れた2人目のサニー」役で門脇麦が出演。これまで同世代の主演級の女優と共演する機会が少なかった北原は、刺激を受けたようだ。
「印象に残ったシーンは多すぎますが、なかでも(門脇)麦ちゃんとパソコンの画面越しに対峙する場面は緊張感があって。現場では共演者のみんなでしりとりなどをしてリラックスする時間を作っていたんですが、そのシーンの撮影前だけはしなかったです。麦ちゃんは年下ではありますが、彼女との共演は楽しみでもありました。ものすごく『サニー/32』の世界の人になっていた麦ちゃんのおかげで、自分も感情移入できました。
ヘビーなシーンが多い作品ですが、撮影現場は明るく和気あいあいとしていて、終わるのがさみしかったです。山小屋に監禁されたばかりの頃のシーンでは、終日、殴られていたぶられるシーンが続いたんですけど、監督に『受けのお芝居が上手だ』と褒めていただきました。AKB48で『マジすか学園』のアクションシーンを経験したことが大きいと思います。
AKB48に入ってからの10年間で、この映画は一番の大きな出来事で一番のチャンスだと思っています。この映画で改めて、演技の仕事をやっていきたいという気持ちが強くなりましたね」
卒業に向けての「終活中」
8月にNGT48卒業を発表してから数カ月が過ぎたが、グループでの多忙な活動が続くこともあって、「私も、たぶん、メンバーたちも実感が湧いてない」と語る。
「今、グループの活動が本当に楽しい。それこそ、『まだもうちょっとやりたいな』と思うくらいに楽しくて。18年に入ると、写真集、映画の公開と個人の仕事が続くので、卒業に向けての『終活中』という感じですね(笑)。
今までのほうが卒業後のイメージが見えていました。発表していよいよ卒業が近づくと、反対にまったく卒業後の自分が見えなくて。でも、何も見えないことがうれしくて、わくわくしています。今までは計画人間だったから、何歳までにこれをするとか細かく考えて、縛られてしまうことが多かったので、ゼロからのスタートだという感じがするのが自分にとっては新しい。卒業してひと息ついたら燃え尽き症候群になりそうなので、お休みをもらって海外に行きたいとかはまったくなくて、すぐに新しい仕事を始めていきたいです」
AKB48在籍時代から女優を志して、ソロで演技の活動をしてきた北原。春以降は、「歌やダンスが得意なほうではないので、もう一生ステージで歌うことはないと思いますが、ちょっとだけさみしい気もしますね」と話す。
「今までは、AKB48グループの中で自分が一番、体当たりしていて、変わった役を演じたいという願望がありました。ドラマ『みんなエスパーだよ!番外編~エスパー・都へ行く~』や映画『任侠野郎』、今回の『サニー/32』を経験できたことは糧になりましたし、心の支えにしてきました。卒業したら、普通の女の子もナチュラルに演じられる女優さんになれたらいいなと思っています。
一番やりたいことは演技ですが、それだけに専念するのではなく、私はロケも好きだし、しゃべるのも好きなので、求めていただけるのであれば、いろんなことをやっていきたいですね。
基本的に自分に自信がないタイプなので、ここが自分の強みだとはあまり言えないんですけど、どんな状況でも現場で楽しくお仕事ができる人間だと思います。『また仕事がしたい』と思ってもらえる、現場の空気を明るくする存在でいたい。そこはAKB48グループでの10年間で学んだことです」
(ライター 高倉文紀)
[日経エンタテインメント! 2018年2月号の記事を再構成]
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