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中小型株投信の快走いつまで? どうなる「ひふみ」 QUICK資産運用研究所 北澤千秋

2018/1/31

写真はイメージ=123RF

国内中小型株を主な投資先として運用する投資信託が絶好調だ。これら中小型株投信の基準価格は2017年の1年間に平均で5割近く上昇し、全投信を対象にした年間上昇率ランキングでも上位を占めた。好調ぶりは年が替わっても変わらず、「ひふみプラス」などを中心に残高は急膨張している。半面、かつてないほどの新規資金の流入で中小型株相場には過熱感が強まっている、との見方もある。中小型株ファンドの快走は今後も続くのだろうか。

■2017年はブル型に匹敵する成績

追加型投信を対象に17年の基準価格の年間上昇率をランキングすると、上位には国内の中小型株で運用する投信がずらりと並んだ(表)。1位の「JPMジャパン・テクノロジー・ファンド」も中小型株の組み入れ比率が高い。

上位ファンドは上昇率も際立っており、1年で基準価格が2倍前後になったものも少なくない。投機色の強い「ブル型ファンド」(基準価格が対象指数の上昇率の2~4.3倍上がる特殊な投信)と肩を並べるような運用成績だ。

大きなリターンをもたらしたのは中小型株相場の上昇だ。景気が拡大期にあって、金融機関の与信態度も厳しくない局面は、株式市場で中小型株が活躍する。東証株価指数(TOPIX)の規模別指数を見ると、昨年の年間上昇率は大型株で構成する「TOPIX100」が17%だったのに対し、中型株の「ミッド400」は22%、小型株の「スモール」は30%と、中小型株優位が鮮明だった。

コモンズ投信の伊井哲朗社長は「株式の需給も中小型株相場を押し上げた」と指摘する。具体的には、昨年1年間で5兆6000億円に達した日銀のETF(上場投信)購入だ。TOPIX連動のインデックス買いでは通常、年金運用などでは投資対象から外れる時価総額が300億円に満たない小粒な銘柄も機械的に買い上げる。

■投信の残高増も相場を押し上げ

需給の支えとなったもう一つの要因は、中小型株投信そのものの残高急増だ。運用成績の好調さを受けて、中小型株投信には昨年後半から資金流入が加速。残高は年初の4000億円台から年末には8500億円に膨らんだ。

さらに見逃せないのは、レオス・キャピタルワークスが運用する「ひふみ投信」と「ひふみプラス」(親ファンドは両方同じ)の存在だ。大型株や海外株にも投資するため中小型株投信には分類されないが、保有銘柄の約6割は中小型の銘柄が占め、中小型株ファンドの色合いが濃い。知名度の上昇とともに広く資金を集め、両ファンドを合計すると、昨年1年間で残高は約4500億円増加した。

中小型株投信と、「ひふみ投信」「ひふみプラス」合計の残高の推移を見ると、昨年半ばからの急増ぶりは一目瞭然だ(グラフ)。もともと時価総額が小さいのが中小型株だから、大量の資金が市場になだれ込めば、株価もおのずと上がる。運用成績がいい中小型株ファンドが個人マネーを引き付け、お金が集まるからファンドは中小型株を買い増し、それが相場とファンドの運用成績をさらに押し上げるという、自己増殖のプロセスとなった。

中小型株ファンドの快走は今後も続くのか。2つの面で注意すべき点がある。

1つ目は株価のバリュエーション(企業価値評価)だ。QUICK・FactsetでTOPIX「スモール」の実績ベースの株価収益率(PER)を見ると、四半期ごとに水準は切り上がり、昨年末時点では17.5倍と過去5年平均の16倍を超えてきた。

大和住銀投信投資顧問の苦瓜達郎シニア・ファンドマネジャーは中小型株について「バリュー(割安)株は割高ではないが、割安とはいえない水準。一方、グロース(成長)株は(ライブドア・ショックがあった)06年ごろと同じバリュエーション」と指摘する。

レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長は現在、中小型株を避けて、新規資金は割安感のある大型株に振り向けている。理由は「東証マザーズやジャスダック市場の時価総額上位銘柄は、昨年末からの大量の資金流入で買い上げられ、株価に行き過ぎ感があるから」という。

■適正規模にとどめるか、対象を広げるか

2つ目は投信の残高急増だ。東京市場の株式時価総額(浮動株ベース)を見ると、大型株が6割弱、中型株が3割を占め、小型株とジャスダック、マザーズは合計しても14%程度にすぎない。キャパシティーの小さい中小型株市場を投資先にする限り、中小型株ファンドが運用できる資金量には限りがある。それでも資金が入るからと買い続ければ、株価は企業価値からかけ離れた水準に上昇し、その後の調整圧力は増す。

すでに残高が運用の適正規模を超えたと判断したファンドでは、新規の販売を中止する動きが相次いでいる。苦瓜氏は昨年来、自身が運用する9本の投信を順次、販売停止にしてきたが、1月20日には最後の1本も停止することを決断した。23日にはSBIアセットマネジメントが人気投信の「小型成長株ファンド ジェイクール」「日本小型成長株選抜ファンド」の2本の購入申し込みを停止した。

規模の急拡大に対するファンドのもう一つの対応策は、投資対象を広げることだ。前述のように「ひふみ投信」「ひふみプラス」は残高の急増に伴って大型株の組み入れ比率を高めるとともに、昨年には米国株投資にも乗り出した。藤野氏は「海外株の組み入れは15~20%が上限。投資機会を求めて今後は中国やインドの企業にも投資する。ひふみは世界の株式にも影響を持つようになる」と意気込む。

ファンドの成長に伴って、両ファンドの性格も変わっていくということだろう。藤野氏は「大型のいい会社を大きく買っていくとリターン(の軌跡)は滑らかになる」と話すが、中小型株中心だったころのような、爆発的な上昇は期待しにくくなるかもしれない。

■今から買うなら自己資金に余力残す

国内の中小型株投信は銘柄選びやポートフォリオの管理など、ファンドマネジャーの手腕次第で大きなリターンが期待できる投資対象だ。ただし、景気など市場の環境次第で価格変動が大きくなる点には注意が必要になる。

「今から中小型株投信を買うなら、全額投資は避け自己資金の余力を残して買う方がいい」。ある中小型株投信の運用担当者のアドバイスだ。

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