強力!マダニの唾液の接着剤 医療用に役立つ可能性も

日経ナショナル ジオグラフィック社

「あまり注目を浴びてこなかった課題に関する、驚くほど詳細な考察」と彼らの研究を評価するのは、米ウィスコンシン大学マディソン校獣医学科の疫学教授トニー・ゴールドバーグ氏だ。

同氏によると、マダニに限らず、ヒルや蚊などを含むあらゆる吸血生物は、「血を吸う相手の宿主が身を守るために繰り出す激しい攻撃にさらされる」ことになるという。

ゴールドバーグ氏は数年前、ウガンダを訪問した後、自身の鼻の中に取り付いていた新種のマダニを発見した。「あのマダニが強力な接着剤を持っていたのは間違いありません」

宿主を弱めつつ、自分を守る

マダニの唾液にはまた、病原体に抵抗する宿主の防御機能を弱める成分も含まれる。「マダニの唾液には相反する機能があります。接着剤が持つ作用のひとつは抗菌です。抗菌作用は、マダニが自身の感染症を引き起こすのを防ぐためのものです」とゴールドバーグ氏は言う。「一方でマダニが媒介する病気は極めて多く、唾液を通じて我々に感染します」

マダニがどのようにして宿主の皮膚から離れるのかはまだよくわかっていない。だが、ニュルンベルガー氏は、彼らは口器をもぞもぞと動かして、ペンチのような器官を引っ込めるのではないかと考えている。また、唾液に接着剤を溶かす成分が含まれる可能性もある。

医療への応用が有望なわけ

マダニの唾液が興味深いのは確かだが、その研究には単なる楽しみ以上の目的がある。

ニュルンベルガー氏のチームは現在、この接着剤の性質を利用して、医療用接着剤を作る研究を進めている。この物質は人間の傷や骨折の治癒や、移植組織を体に接着したりするのに役立つ可能性を秘めている。

すでにフジツボ、イガイ、ウニなどを利用した生物学的接着剤が開発されているが、ニュルンベルガー氏によると、マダニの接着剤はそれ以上に有望だという。

「マダニが使っているのはそもそも人間の組織に接着できる物質です」とニュルンベルガー氏。「ですから、拒否反応が少なく、接着強度も十分だろうと思われます」

(文 Joshua Rapp Learn、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年1月24日付]

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