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ゴルフ初心者に絶妙アプローチ 冬の時代をはね返す技 ゴルフパートナー、中古クラブの無料配布で売り上げ伸ばす

2018/2/13 日経MJ

プロの指導のもと、初心者でもコースを回れる(千葉県市原市)

ゴルフ市場が低迷するなか、ゼビオホールディングス傘下の中古ゴルフ用品販売、ゴルフパートナー(東京・千代田)が成長を続けている。ゴルフクラブの無料配布や食べて騒げるツアー観戦などで初心者を開拓し、2017年3月期まで6年連続の増収増益を達成した。ゴルフは16年リオデジャネイロ五輪から競技として復活した。20年の東京五輪に向け、市場を再び盛り上げるチャンスといえる。

17年12月中旬、千葉県市原市の千葉セントラルゴルフクラブで、祖父と一緒に来たという男子中学生(14)がフェアウエーでドライバーを振るっていた。彼らはゴルフパートナーが初心者向けに開催する1日レッスン「はじめてのゴルフラウンド」の参加者。初心者が対象で、ゴルフコースで練習できる。プロゴルファーのサポートも付く。

ゴルフクラブにほぼ触ったことがない記者(25)も参加してみた。練習はまずクラブの持ち方から。豊見里友作プロの丁寧な指導のもと、基本的な打ち方を習得。ゴルフ場でのマナーも学んだ後ホールに出た。

規定打数4打のホールで最初のティーショットは「池ポチャ」。でも「当たるだけですごいですよ」と皆が慰めてくれて気後れせずに済んだ。多くの人が距離を稼げないなか2打目は一般的なゴルファーで想定される位置から皆で再開。バンカーの打ち方も学び、3ホール回って終了した。

参加費はゴルフ場によって違うが今回は食事付きで5000円。参加した鈴木祐也さん(33)は「始めて数カ月でもコースの芝生で練習できるのはうれしい」と話す。

ゴルフパートナーは初心者が気軽にゴルフを始められる取り組みに力を入れる。未経験者に中古クラブを無料でプレゼントする「はじめてのごるふくらぶプロジェクト」を2014年に始めた。配った本数は17年10月に累計10万本に達した。渡した人の半数が新たなクラブやゴルフグッズをゴルフパートナーの店舗で購入。フルセット購入者も約5%いたという。

こうした人たちに気軽にラウンドを回ってもらいたいと始めたのが先述のレッスン。17年4~12月に全国15カ所で延べ35回開き、250人が参加した。

ゴルフはかつて一般の人にとっても取引先の接待や社内交流に欠かせない社交術の一つだった。だが近年は団塊世代のリタイアに加え、職場で上司が部下をゴルフに誘い出す風土が薄れ、プレー人口は減っている。

日本生産性本部(東京・千代田)がまとめた「レジャー白書」によると、ゴルフ練習場の利用者は09年に1060万人だったのが16年は550万人と、7年間で4割も減少。矢野経済研究所によると16年のゴルフ用品市場(出荷ベース)は15年比1.9%減の約2547億円だった。

一方でゴルフパートナーの17年3月期連結売上高は前の期比8%増の277億円。市場が縮む中で同社が初心者をつかむのは、ゴルフ産業の慣例を取り払い、開かれた市場づくりに力を注いできたことが大きい。

同社は1999年、チタン素材など耐久性の高いゴルフクラブの登場で中古流通が普及したのを背景に創業した。だが当初の顧客はクラブにこだわりを持つ中級者以上が中心。経営立て直しへ2003年に社長に就いたた石田純哉氏は当時の店舗について、「販売業として問題点が多かった」と振り返る。

不親切な商品陳列や接客、見栄えの良くない内装――。中古車販売「ガリバー」の元スーパーバイザーだった石田氏は、初心者の取り込みに開拓余地があるとにらんだ。

商品を選びやすく、店員が丁寧に説明できる売り場へ刷新を図った。06年にはゴルフ練習場の運営にも参入。いわゆる「打ちっ放し」のゴルフ場は「装置産業と捉えられていた」(石田氏)。直営ゴルフ場にクラブ売り場を併設し、店から練習場に中古品を持ち出して気軽に試し打ちもできるようにした。レッスンも提供し、サービス業への衣替えを図った。

同業他社もゴルフ人口の減少に歯止めをかけようと、類似の取り組みを進める。住友ゴム工業スポーツ事業本部(旧ダンロップスポーツ)は初心者向け練習プログラムを実施。4カ月12回の短期集中型で、受講料は3000円と割安だ。このためゴルフパートナーはゴルフへの関心が低い層も掘り起こす策を講じる。

「応援ホール」としてプロゴルファーらが試合を実況中継。笑いで会場を盛り上げた

飲食OK、騒いでOK――。13年から同社がスポンサーを務める日本プロゴルフグランドゴールドシニア選手権。見学入場料は無料で、焼きそばなどの屋台がゴルフ場の駐車場に並び、1品は無料。さらに試合後にはプロによる初心者向けのレッスンが受けられるなどのサービスも設けた。

17年は第6ホールでプロゴルファーが実況解説をする特設ステージを設けた。軽快なトークの応酬で観客は爆笑。ワイワイと応援するムードをつくり、「プレー中は私語禁止」などのお堅いイメージを払拭した。格式の高さを敬遠していた層を招き入れ、好スコアのシニアに観客が触発される効果も狙う。17年は5000人を動員した。

「10年後の愛好家」も育てる。ゴルフ部の創設を目指す高校5校にはクラブを寄贈した。吹田高校(大阪府)など5校ではゴルフ授業のサポートもする。長期の先行投資ととらえ、市場全体の底上げを図る。

一時の隆盛から見ればゴルフ人気は暗いトンネルの中に入ったままだ。だが、若年層を中心に健康づくりとしてゴルフを始める人も数年前から出てきた。真摯に取り組めばかつてのイメージにとらわれない新たな消費者を取り込むことは可能だ。低迷するゴルフ市場でも明けない夜はない。

■練習場は時間制にして上達応援

ゴルフパートナー・石田純哉社長
「現在の356店から500店まで増やせる」と語る石田社長

――中古ゴルフ用品販売から業態を変えてきました。

「昔は中古ゴルフクラブしか販売していなかった。(粗利益の高い)中古品だけではなく新品も買えるようにして、買い替え需要を掘り起こした。今は店舗に置くクラブの本数は新品が3割、中古が7割ほど。売上額では同じくらいになる」

――練習場にも力を入れています。

「練習場がもう一つの増収増益のエンジンとなった。練習場はサービス業なのに、挨拶ができないだとかボールが汚い、照明が暗いなど、ネガティブな要素が多かった。これを取り払うと来客が増えた」

「60平方メートルほどのショップも併設し、ゴルフレッスンも提供している。練習場はフランチャイズを含め97店まで増えた」

「直営店の練習料金は時間制にしている。球数だと(長距離を飛ばす)ドライバーショットの練習に偏りがちになるが、時間制なら(グリーンに寄せる)アプローチショットなどの練習もするように変わると思う。カラオケが『1曲いくら』ではないのと同じで、上達が早まるし、店も運営しやすくなる」

――今後の店舗展開の目標は。

「競合他社が撤退する例もあり、今の356店から500店舗までは出店できるとみている。売上高も500億円程度までは伸ばせる。練習場も増やしたい。正確には分からないが国内で40打席以上ある大型練習場は1000カ所はあるとみている。そのうち2割のシェアは取りたい」

――シニア大会のスポンサーをしています。

「ゴルフをしない人も楽しめる大会があってもいいなと。全ての試合がそうであればいいとは思わないが。入場料収入はたかが知れている」

(沖永翔也)

[日経MJ2018年1月26日付を再構成]

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