米女児名は「エマ」が人気 男児より流行の周期は短く編集委員 小林明

映画『ラ・ラ・ランド』より。左が米人気女優のエマ・ストーンさん (C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
映画『ラ・ラ・ランド』より。左が米人気女優のエマ・ストーンさん (C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

米国の女児の名前の流行にはどんな特徴があるのだろうか? 男児編に続いて、今回は女児編を紹介する。

右の表で示したのが2016年に米国で生まれた女の新生児の名前人気ランキング。首位から順番にエマ(Emma)、オリビア(Olivia)、アバ(Ava)、ソフィア(Sophia)、イザベラ(Isabella)と続いている。たしかに現在、活躍するエマという名前の有名人は多いようだ。

映画界でも活躍が目立つエマ

たとえば映画『ラ・ラ・ランド』でアカデミー主演女優賞に輝いたエマ・ストーン(Emma Stone)さん、映画『ハワーズ・エンド』でアカデミー主演女優賞に輝いたエマ・トンプソン(Emma Thompson)さん、映画『ハリー・ポッターシリーズ』などで人気のエマ・ワトソン(Emma Watson)さんら銀幕で注目される人気女優はなぜかエマさんが目立っている。米国でいま最も勢いのある女性名といってもよい。

もともとエマは古代ドイツに起源を持つ名前。19世紀の英国の作家、ジェーン・オースティンの恋愛小説のタイトルとしても「エマ」が登場するなど英語圏でも古くから広く普及してきた。人気が急上昇したのはエマ・ストーンさんやエマ・ワトソンさんが活躍しはじめた2000年代から。こうした有名人の活躍が名前の好感度を一気に高め、ランキングの順位を押し上げたとみられる。

2位のオリビアはギリシャ起源でオリーブの木を意味する女性の名前。3位がアバは旧約聖書に出てくる人類最初の女性、イブ(Eve)の変化形。どちらも短くて由緒ある名前だ。

イザベラ→ソフィア→エマ、男児より速い流行の変化

詳しいトレンドを見るため、2009~16年の女児の名前人気ランキングの推移を追いかけてみよう。

首位の変遷をたどると、2010年までがイザベラ、2011~13年までがソフィア、2014~16年までがエマと目まぐるしく入れ替わっているのが分かる。前回紹介した米国の男児の名前と比べると変動のペースがかなり速い。男性の名前よりも女性の名前の方が、その年ごとの流行により敏感に反応する特徴があるようだ。

服装や髪形でも、男性より女性の流行の方が細かく変化する傾向があるとされる。名前の流行にもどうやらこれと同じ特徴があるらしい。やはり名前も自らの娘をより魅力的に見せるための有力な手段。「少しでも新しさを感じる名前を付けることで人生もより明るく輝いてほしい」。そんな親心が見え隠れする。個性化や好みの多様化の高まりも影響しているとみられる。

このため、特定の名前が長期間、首位を独占するのではなく、多くの首位候補が順位を競い合う群雄割拠の時代が続いている。上位5位に関して言うと、順位の細かな変動はあるものの、エマ、オリビア、アバ、ソフィア、イザベラの顔ぶれは一貫して変わっていない。これら「5強の時代」と呼ぶこともできそうだ。

服装や髪形と同じ? 名前でより魅力的に着飾る

6位以下は新旧交代が多い。人気が陰りがちなのがマディソン(Madison)やクロエ(Chloe)。2009年にそれぞれ7位と9位だったが16年は15位と20位に後退した。

マディソンはフランス発祥の焼き菓子、マドレーヌ(Madeleine)の短縮形。男児名として使われることも多く、名字としても使われてきた。クロエはギリシャ語が起源。フランスのファッションブランドとしても知られる。マディソンもクロエも新しい響きが好まれて一時は人気が高まったが、いまはその人気に陰りが出ている。

一方で勢いを増しているのはシャーロット(Charlotte)やハーパー(Harper)。ともにここ4、5年でトップ20入りして以降、グイグイと順位を上げている。シャーロットはチャールズ(Charles)の女性形で王族に由来する由緒ある名前。ハーパーはもともとハープ奏者を意味する名字から名前に転用されたもの。

伝統的な名前の人気が再燃する原点回帰と、名字からの転用という新しさがブームの背景にあるようだ。

メアリーやリンダは懐かしい響き、エミリーはゼロ世代

100年以上さかのぼって、女児の名前人気ランキングの首位を追いかけてみるとさらに興味深い。

ざっくり言うと、メアリー(Mary)→リンダ(Linda)→リサ(Lisa)→ジェニファー(Jennifer)→ジェシカ(Jessica)→エミリー(Emily)という変遷になっている。エミリー時代以降はイザベラ、ソフィア、エマなどが2、3年の区切りで次々と交代している。

この流れをつかんでおけば、女性の名前から生まれた年代をおおまかに推測することもできる。

たとえば、戦前から1960年代初めまではメアリーが女性の名前の代名詞であり、終戦から1950年代初めまではリンダが全盛期を迎え、1960年代はリサ、1970年代から80年代半ばまでがジェニファー、1980年代後半から90年代半ばまではジェシカ、1990年代後半からゼロ年代がエミリーが流行するというのが大きな流れだ。

米国人の感覚からすると、メアリーやリンダにはどこか古めかしい語感があり、ジェニファーやジェシカにはそれより新しい響きがあるといった具合。一方、エミリーは20歳強以下の若い世代の名前という印象になる。

歌手のリンダ・ロンシュタット(1946年生まれ)や女優のジェニファー・ロペス(1969年生まれ)らはともに1年の誤差はあるが、各時代の代表とみてもよいだろう。また「少女時代」の元メンバーで米国生まれのジェシカはずばり1989年生まれだ。

100年以上の首位の変遷を見ると、米国男児の名前は10年強の期間で時代を築くことが多いが、米国女児の名前の流行はやはりサイクルがより短くなる傾向が浮かび上がる。

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