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REIT投資の勘所

REITの「ヘルスケア銘柄」 低迷から現状打破の動き

日経マネー

2018/2/9

日経マネー

 2017年、東証REIT指数は前年末比10%の下落で取引を終えた。日銀が異次元緩和を始めた13年を起点にすると下落は15年に続いて2度目。率ではその15年のマイナス8%を超えてしまった。

 価格面では厳しい1年となったが、1口当たり分配金に目をやると大半の銘柄が増加基調にある。不動産価格の高騰で物件取得こそ減速しているが、日本ビルファンドが「NBF日比谷ビル」を640億円で売却するなど、大型物件の売却事例は増えている。含み損を抱えた物件や利回りの低い物件の処理が進んでおり、各REITの運用効率はむしろ改善している。

■低迷打開に動くヘルスケア系

 そんな17年に筆者が注目したのは、ヘルスケア銘柄が価格低迷が続く現状を打破すべく新基軸を打ち出してきたことだ。

 ヘルスケア銘柄とは、高齢者向けのシニア住宅や病院などを投資対象とする銘柄のことだ。14年に初めて上場した日本ヘルスケア(NHI)の他、ヘルスケア&メディカル(HCM)、ジャパン・シニアリビング(JSL)の計3銘柄が上場している。

注:投資口価格は2018年1月9日時点

 ヘルスケア銘柄の価格は3銘柄がそろった15年頃から長く低迷(分配金利回りは高い)が続いている。低迷の最大の要因は、保有資産がシニア住宅のみという点だ。ヘルスケアと冠しながらも実態はシニア住宅銘柄となっている。

 シニア住宅は介護職員が慢性的に不足していることもあり、不動産市場に流通する物件が少ない。運営リスクが高いにもかかわらず、高い価格で取引されており、オフィスや一般の住居に比べても投資利回りが低い。

 ヘルスケア銘柄の上場時、高齢化社会を見据えたREITとして投資家の期待は膨らんだが、銘柄数が増えるに連れて投資家の目は厳しいものに転じ、やがて価格は低迷。価格低迷で増資が難しくなり物件取得も低迷した。規模拡大を目指して物件を取得しようにも、シニア住宅では利回りを上げるのは難しい。

 このような状況下でHCMは、17年11月にリハビリテーション病院の取得を公表した。実態としては初のヘルスケア銘柄の誕生だ。シニア住宅に比べて物件利回りも高く分配金上昇も期待できる。

 この件は、ヘルスケア銘柄が病院取得で規模拡大を目指せることを示した好例と言えるだろう。

 一方、JSLは同一スポンサー傘下の住居系銘柄との合併を11月に発表した。ヘルスケア特化という旗印を下ろし、他の住居系銘柄と同様、賃貸住宅を補完する用途としてシニア住宅を位置付けることで現状打破を目指すとしている。

 ヘルスケア銘柄に限らず17年は高利回り銘柄の価格推移が比較的堅調だったが、その水準は増資を行うと希薄化が懸念されるものだった。18年は、紹介したヘルスケア2銘柄のように、合併や新たな用途への投資で現状打破を探る動きが顕在化するかもしれない。

関大介
 不動産証券化コンサルティングおよび情報提供を手掛けるアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。

[日経マネー2018年3月号の記事を再構成]

日経マネー 2018年3月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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