
メゾンや本格靴メーカー、さらには専業ブランドによる贅を尽くした「プレミアムスニーカー」人気が再燃している。最高級品の素材は普及品とどう違うのか? 作り込みはどこまで丁寧なのか? その「現在地」を把握するべく、本質と魅力についてファッションに詳しい3人の有識者が語り合った。
素材がイイのは当たり前! 作りも進化してます

中村良枝さん 伊勢丹新宿店メンズ館 紳士靴バイヤー。紳士靴一筋の靴のプロ。国内外問わず、名靴の発掘や開発を進めるべく、毎季世界中のファクトリーへと足を運んでいる。
武内雅英さん スタイリスト。ドレス、カジュアル双方に精通し、メンズ誌のほか著名人のスタイリングなど、幅広い分野で活躍する。メゾン系スニーカーも数多く所有。
アクタガワ 今やジョン ロブがスニーカーをやるんですね。丁寧に吊り込んで作っている感じが出ている。これ……見れば見るほどイイなぁ。
武内 デザインだけでなく、作りもドレスシューズの感覚ですよね。
中村 2年ほど前に登場したときはどうしてジョン ロブが? という声もありましたが、やっぱりクオリティがいいので、伊勢丹でも大好評です。特に白は、入荷したらすぐになくなってしまう。最近になって本格靴ブランドがスニーカーを作るようになった、きっかけの存在ですね。
武内 僕も本格靴ブランドがスニーカーを出す潮流は肯定的に見ていて。ドレス靴でもそうですが、結局、靴って満足できるかが一番重要。素材がよくて作りがよくて、というのは当然満足につながりますし。ステファノ・ベーメルのもイイなぁ。
アクタガワ 僕はせっかく買うならロゴが付いてたほうがいいかな。たとえばフェラガモのスニーカー(2ページの4番)も、デザインはそう見えないんだけど、ロゴがあるから「それフェラガモなんだ!」となるじゃないですか。
武内 そうした面白さもプレミアムスニーカーなれば、かもしれません。
アクタガワ 見回してみるとソールの形状などのデザインは、’70 年代調のものが多い印象を受けますね。
武内 このタイプのデザインはもはや定番といえるものですよね。この値段を出せるお客さんの年齢層の好みというのもあるのかな。
アクタガワ (このジャンルが)出てきたのは10年前あたりでしょうか。
中村 そうですね。それより前には、伊勢丹ではほとんどスニーカーを扱っていなかったですから。購入されるお客様は30代半ば以上の、経験のある方が多いです。やはり皆さま、人とは違う製品を探されています。
アクタガワ 昔は重くないと(安っぽいと思われて)売れない風潮もありましたが、最近はどうでしょう?
中村 今は軽いほうが売れますね。お客様も履き心地はとても重要視されていて、アッパーもソールも柔らかなサントーニのスニーカー(2ページの1番)など、足を入れれば大抵購入してくださいます。また、高級スニーカーを専業で作っているヨーク(2ページの5番)という国内メーカーは低反発インソールを用いているため、製品の履き心地が素晴らしい。
武内 専業的といえば、コモンプロジェクト(2ページの9番)も息が長いですよね。10年以上前に買いましたもん。謎の数字表記が相変わらずオシャレ。
アクタガワ イイですね。ゼニアのスニーカー(2ページの2番)はまた、コバ処理とか作りが凄い。どこかジョーダンの1モデルを彷彿とさせる顔も好き。
中村 すごく人気があるそうです。
武内 たしかにカワイイ。
アクタガワ 実は20年前くらいにあるメゾンのスニーカーを買ったのですが、当時はソールも重くて硬いわ、履いているうちに剥がれちゃうわで、ガッカリしたんです。作り慣れてないところのは高いだけでダメだ、と。でも久々にメゾンのスニーカーを手にとったら、素材がいいのはもちろんですが作りもいい。これだったらまた履いてみたいな、と思いますね。