「職種や業種が違っても、ジョブサイズやグレーディングが同じであれば異動もしやすくなります。もちろん、いままでの処遇が高すぎるという結果が出た場合は、話し合って下げてもらうケースもありますが、全体として人事の透明性が大きく増すと思います」
日本型雇用もインプット主義からアウトプット主義へ
――日本型の雇用・人事制度はかなり特殊ですが、そこも変えていくのですか。
「そうですね。私は経済同友会でも人材戦略と生産性革新の委員会で、日本型雇用慣行の改革を強く打ち出してきました。ですからこの点に関してはかなり強い思いを持っています」
「日本企業は全国一律で新卒を採用し、年次に応じた処遇をし、みんなでたくさん働いてインプットに注力すれば、売り上げも上がる、処遇も上がる、という『インプット主義』でやってきました。高度経済成長期にはそれが必要だったし、実際に機能したのですが、それではもう生産性が上がらなくなりました。20年前の時点で、何時間働いたかではなく、どういう価値を生んだのか、いくら貢献したのかという『アウトプット主義』に変わるべきだったのに、うちもそうですが、日本企業、特に大企業は変えきれなかった」
「比較的景気がいい今は、インプット主義をアウトプット主義に変えるラストチャンスだと思います。特に日本のサービス業は先進国の中で最も生産性が低いといわれています。アウトプット主義にいかに早く切り替え、徹底できるか。そこに踏み込んでいかなければグローバル競争には勝てません」
「アウトプット主義で重要になってくるのはマネジャーの任務配分能力です。一つの部や課として、目標とするアウトプットを実現するために、『誰が、いつまでに、どのように達成するか』という分担を明確する。そういうプロジェクトマネジメント型のリーダーを育てていく必要があります」
1956年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。78年安田火災海上保険(現損害保険ジャパン日本興亜)入社。アジア開発銀行出向、経営企画部長などを経て2010年損保ジャパン社長。12年、NKSJホールディングス(現SOMPOホールディングス)社長
(ライター 石臥薫子)