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民泊の「通年規制」に国が懸念 行き過ぎ?自治体と溝 大田区は住宅地など対象に条例制定、背景に住民の不安

2018/1/31 日本経済新聞 朝刊

民泊を利用する訪日外国人は多い(東京都大田区)

 住宅の空き部屋に旅行者を有料で泊める民泊を巡り、東京都大田区が導入する予定の独自規制が波紋を広げている。住宅宿泊事業法(民泊法)に基づく独自規制の条例を全国に先駆けて2017年12月に制定し、ホテルや旅館が営業できない地域では年間を通じて民泊を禁じた。民泊を推進したい政府は通年規制に否定的だが、区が通年規制の旗を降ろす気配はない。

シェア自転車の拠点を備えた特区民泊物件もある(東京都大田区)

 民泊法は条例での規制を認めた。ただ、政府は「通年や自治体全域で禁じるのは行き過ぎ」と繰り返し、12月末に公表したガイドライン(指針)でも「法の目的を逸脱するもので、適切でない」と明記した。「大田区の条例は法律違反ではないか」。条例制定直後の規制改革推進会議では委員から厳しい意見も出た。

 民泊法では通年や全域の規制の是非は明確にしていない。指針の公表が遅れたため、自治体が指針を待たずに条例制定作業を進めざるを得なかった面もある。他の自治体でも「民泊事業者の届け出が始まる18年3月に準備が間に合わない」との困惑が広がった。

 大田区は通年規制の理由として、国家戦略特区を活用した「特区民泊」との整合性を挙げる。区内の特区民泊もホテルや旅館が営業できない地域では認めていない。区幹部は「苦情もほとんどなく実績を重ねてきた特区民泊を普及させたい。条例は国や弁護士と相談して策定した。いま見直す予定はない」と話す。

 自治体による独自規制は宿泊者の騒音やごみ出しマナー、治安悪化への不安を訴える地元住民に配慮したものだ。全域禁止は東京都中央区や目黒区、特定地域での通年規制は兵庫県などで検討が進む。

 独自規制の是非は民泊法案の検討段階から争点の一つだった。民泊を商機とみていた都内の不動産業者は「法定の年間180日規制ですら厳しいのに、上乗せされては商売にならない」と漏らす。地域で異なる規制には旅行者からも「分かりにくい」との声が出る。

 民泊に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員は「地域事情に応じた規制は必要。ただ、厳しすぎれば違法民泊が減らない。規制の実効性をどう高めるかが大切だ」と話す。訪日外国人客らを地域に呼び込むことによる経済効果と、住民の懸念への対応のバランスをどう取るか。自治体の模索はなお続きそうだ。

(河野俊)

住宅宿泊事業法(民泊法)
 民泊を全国で解禁する法律で、2018年6月15日に施行。個人や企業が自治体に届け出れば、一定の条件下で年間180日を上限に民泊営業ができる。都道府県や東京23区などには地域の実情に応じて営業地域や日数を条例で独自に規制することも認めている。

[日本経済新聞朝刊2018年1月23日付]

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