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一般試験のほかに、センター利用試験、AO試験、外部英語試験利用など、受験方法も複雑に。写真はイメージ=PIXTA

一般試験のほかに、センター利用試験、AO試験、外部英語試験利用など、受験方法も複雑に。写真はイメージ=PIXTA

大学入試センター試験も終わって、受験シーズンも本番。受験から解放された社会人にとっては、「受験生のみなさん、頑張ってね」と、余裕でエールを送りたいところだが、実は人ごとではない。大学や受験制度もどんどん変わってきており、そのトレンドを知っておきたい。

いま、大学は18歳人口が減少に転じる「2018年問題」に直面している。そのため、学生の獲得競争はいよいよ激しくなり、カリキュラムのほか、キャンパスを都心に新設や移転をしたり、教室、図書館や学食などの施設を充実させたりと、利便性の向上やイメージアップに躍起だ。

例えば、近畿大学が2017年4月に約500億円を投じて整備した新施設「アカデミックシアター」。留学生と交流できるラウンジ、24時間いつでも使用できる2400席の自習室、CNN Cafe、編集工学研究所の松岡正剛氏がスーパーバイザーを務める図書館などで構成される、まさに近代的な施設。17年夏のオープンキャンパスでは、訪れた高校生や保護者を驚かせた。

近大の東大阪キャンパスに出現した新建築群のアカデミックシアター。分類の仕方がユニークな図書館、女性専用の自習室、CNN Cafeなどを併設(写真:大腰和則)

近大の東大阪キャンパスに出現した新建築群のアカデミックシアター。分類の仕方がユニークな図書館、女性専用の自習室、CNN Cafeなどを併設(写真:大腰和則)

アカデミックシアター内の「CNN Cafe」(写真:大腰和則)

アカデミックシアター内の「CNN Cafe」(写真:大腰和則)

学部学科の新設・再編も盛んだ。以前は、「文・法・工・医」など漢字で表記できるものが大半だったが、いまはカタカナ名やビジネスに直結した名称を持つものが特に増えている。

立命館大学は、2018年4月に食マネジメント学部を新設する。食の学部というと、調理や栄養学のイメージが強いが、ここでは、生産から流通、販売、消費まで、食について多面的に学ぶ。食品メーカーのほか、外食産業やコンビニ、商社など、食全般を理解する人材が活躍できるビジネスや企業が増えてきたためだろう。

フランスの料理教育機関「ル・コルドン・ブルー」と提携し、希望者を対象に特別プログラムを実施する。同校の専門講師からフランス料理の調理技法やキッチンマネジメント、ワイン学、食文化の授業などを受け、終了後には、ル・コルドン・ブルーの修了書も与えられる。

立命館大学食マネジメント学部のオープンキャンパス(ル・コルドン・ブルー講師による授業)=立命館大学提供

立命館大学食マネジメント学部のオープンキャンパス(ル・コルドン・ブルー講師による授業)=立命館大学提供

そのほか、2017年に国内では特例を除くと38年ぶりの新設医学部として話題になった国際医療福祉大学が、2018年には東京・赤坂の新キャンパスに赤坂心理・医療福祉マネジメント学部を新設。横浜市立大学がデータサイエンス学部、富山大学が都市デザイン学部を設けるなど、食系、医療系、情報データ系、地方創生系の学部新設が目立った。

国と大学で即戦力となるグローバル人材を育成

そして、この数年、全国に急増しているのがグローバル系の学部学科だ。社会経済のグローバル化のなかで、海外で活躍できる人材の育成は、いま国や大学が最も力を入れるところ。特に即戦力となるグローバル人材を期待する企業のニーズは強く、大学も卒業生が企業で活躍すれば、大学のブランド力アップにつながることから、授業カリキュラムや入試に英語力を求めるところが増えている。

2017年4月に新設された立教大学のGLAP(グローバル・リベラルアーツ・プログラム)は、その象徴的なコースだ。少人数、英語授業、1年間の海外留学、帰国後の専門教育、留学生との寮生活(2018年度からは希望入寮制)などが特徴。「リベラルアーツを英語で学び、常に世界を意識しながら多様なものの見方や考え方ができ、異なる環境の人たちと協働できる力を養っていく」(同大学)

立教大学のGLAPの授業風景のイメージ=立教大学提供

立教大学のGLAPの授業風景のイメージ=立教大学提供

2018年は明治学院大学が半年間、英語圏の大学で法律を学び、人々と交流する法学部グローバル法学科を新設。そのほか、2018年設立の長野県立大学や、九州大学、広島大学、琉球大学、京都外国語大学などでも、課題解決型のグローバル人材を育てる学部や学科を立ち上げている。

入試制度も「読む」「書く」「聞く」「話す」の英語の4技能を評価する英語外部試験を入試に組み入れる大学が年々増えている。英検やTOEIC、TEAPなどの外部試験で一定のスコアや級を取得しておけば、英語入試が免除になるというものだ。一般入試からのシフトが進む推薦・AO入試でも活用が進んでいる。

この4技能評価は、2020年度から大学入試センター試験に代わって実施される「大学入学共通テスト(仮称)」でも導入される予定だ。この時期、小学校でも3、4年生に外国語活動の導入、5、6年生には英語を教科にする見通しである。

グローバル人材の入社で肩身が狭くなる?

英語の早期教育、英語の4技能外部試験の一般化、留学制度のカリキュラム化などで、今後は、会社にも英語に慣れ、英語を親しんできた学生たちが入ってくる。そうなると、「英語は苦手で」では通用しない時代がやってくる。

英検やTEAP、ビジネス英語のBULATSを運営する日本英語検定協会では、「ビジネスでは、さらに上のアクティブな英語スキルの必要性がある」(同協会)ことから、ビジネスで求められる発表力、分析力、交渉力などを含む実践的な英語力を測る、評価者との対面式のスピーキングテスト「GCAS(ジーキャス)」も開発。社内評価の指標として、人事や研修部門への売り込みを始めている。

GCASは面接官のインタビューで評価を受ける(日本英語検定協会サイトより)

GCASは面接官のインタビューで評価を受ける(日本英語検定協会サイトより)

GCASは国際基準のCEFRに基づいて評価される。自分の英語の強みや弱みがフィードバックされる。写真はGCASのスコアリポート(日本英語検定協会サイトより)

GCASは国際基準のCEFRに基づいて評価される。自分の英語の強みや弱みがフィードバックされる。写真はGCASのスコアリポート(日本英語検定協会サイトより)

検定だけでなく、インターネットでの格安英会話や英語ニュース番組、英語翻訳機など、英語に親しみ、学ぶ機会は、昔に比べ格段に広がっている。今こそ、「我が社のグローバル人材」となれるように頑張ってみれば。そう、私も自問しているところだ。

石井和也
 日経BP総研マーケティング戦略研究所主任研究員。『日経トレンディ』『日経ゼロワン』『日経キッズプラス』の副編集長、『日経おとなのOFF』の編集委員などを経て現職。キッズからシニアまで各世代のライフスタイルをウオッチ。共著に『ものづくりの未来が見える 3Dプリンター完全マスター』(日経BP社)がある。
マーケティング戦略研究所

日経BP総研マーケティング戦略研究所(http://bpmsi.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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