日本に来たら「和牛すし」 外国人が喜ぶニホンショクしきたりより楽しさ重視、「爆食い」狙った新メニューとは

お肉が大好き、食べるよりエンターテインメント、決まったコースやルールに縛られず気ままに楽しみたい――。訪日客の日本食へのニーズは様々だ。

ドイツ出身の記者(35)は日本に来て12年。日本食にはすっかり慣れたが、ときどき日独風の料理を食べることもある。刺し身と一緒にご飯ではなくパンを食べたり、刺し身をパンにのせたり。生魚とパンは案外と相性が良くお薦めだ。伝統を守るのはもちろん大事だが、日本食を気軽に楽しんでもらうには大胆なアイデアがあっていい。

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「日本の飲食店は価格設定が下手。安過ぎる」。こう指摘するのは中国出身で日本の飲食店に対しコンサルティングなどを手掛ける日本美食(東京・港)の董路最高経営責任者(CEO)。

同社の調査によると、インバウンドのけん引役である中国人は来日時、夜の食事に平均1万6000円(2人)を使うという。高価格の食事は中国人が重視するステータスにもつながるのだそうだ。

董CEOは現在、あるラーメンチェーンの運営会社に対して「5000円の豪華ラーメン体験」のメニュー化を提案している。有機野菜など厳選した高級食材を使った2500円のラーメンに加え、日本酒1杯(1000円)と麺のような手土産(1500円)という「非常識」のプランだ。

えっ、5000円? ラーメンに日本酒? 董CEOいわく、提案先は「まだピンときていない様子」。だが、インバウンドから見れば、「高ければ高いほど、貴重な経験になると考えている人も多い」ため、5000円のラーメンコースには潜在的なニーズがあると強調する。

価格設定だけではない。日本の飲食業界に詳しいライターの源川暢子さんは「伝統的な日本料理店もメニューや看板で英語表記をするなど、店に入りやすくなる工夫をもっとした方がいい」と助言する。

観光庁の調べでは、訪日外国人は2017年、1人当たり約3万円を飲食に使った。ここ数年間、買い物の支出は大きな変動があるが、飲食費用は安定的に推移している。17年の全体の飲食費は8856億円。JTBの予測では18年に訪日客は3200万人に達する見通し。インバウンドによる飲食市場は1兆円規模に育つことになる。

訪日外国人による「爆買い」は落ち着いてきたが、次は「爆食い」が活発になりそうだ。その需要を掘り起こすのは、まず日本の常識を疑うことから始まる。

(ゼンフ・ミシャ、世瀬周一郎)

[日経MJ2018年1月22日付]