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「送金なう」 アプリならいつでもどこでも簡単に 若者に浸透、フィンテックで銀行介さず

2018/1/23

Kyashでは、お金の請求とメッセージが同時に送れる

 お金を送りたいけれど銀行に行く手間も省きたいし、手数料も気になる。金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックが進み、こうした日常生活の悩みが解消され始めた。ベンチャー企業が中心になって、スマホのアプリを使った新たなサービスが若者を中心に浸透する。いつでもどこでも簡単に。銀行勢もようやく「送金改革」に動く。

 何かと宴会続きの1月、東京都の会社員、横田結さん(25)はよくこんな会話をする。「先に3千円払っておいたから、あとで送って」。まわりの同僚や友人と使うのは、東京都港区のベンチャーが提供する「Kyash」だ。

■現金では出金できず

 Kyashは前払い式の支払い手段だ。名前や電話番号、クレジットカードなどを事前に登録し、スマホどうしのやりとりを通じて必要な時に資金が行き来する。現金の出金はできない。受け取った金額分、ネット上などで買い物していくしくみだ。

 「手元に小銭がない時、飲み会を途中で抜けなければいけない時はよくある。だから便利」。都内の大学生、村田亘さん(23)も1年以上、送金アプリを使う。エニーペイ(東京・港)の割り勘アプリ「ペイモ」。同社は春以降、たまったお金でQR決済できる店を3万店にする予定だ。

 送金といえど、横田さんも村田さんも戻ってくるお金が現金か否かにそれほどこだわりはない。日常的に使っている決済ツールだけに「どこかのタイミングで買い物に使える金額は同じ」。若者を中心にこうした感覚が広がったことが企業の取り組みを支えている。無論、2人とも「高額な支払いだと抵抗がある」。ほかのサービスを見渡しても、送金額を1日10万円に制限するなどしている所が多い。

■銀行も24時間対応に動く

 従来、送金や振り込みは銀行のシステムと連動し、安心と制約が同居してきた。たとえば、午後3時以降や休日に振り込むと翌営業日に届くこれまでの仕組みはその典型だ。だがフィンテックの進展で、大手銀行といえどもあぐらをかいているわけにはいかなくなってきた。

 全国銀行協会は10月、異なる銀行間の振り込みでも24時間・365日、すぐに相手にお金が届く環境とシステムを整える。コストをにらみ24時間化に慎重な地方銀行などもあるが、「電子商取引などが増え土日や夜でも送金需要は強い。英国やシンガポールなど他国の常識に日本がようやく追いつく」(メガバンク広報)。全銀協の加盟行の8割にあたる112の銀行、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行などが対応する。

 手数料の改革に乗り出す動きも出て来た。SBIホールディングスが主導する形で、61行参加の銀行連合は実証実験を2017年から始めている。仮想通貨の基幹技術であるブロックチェーンを使った新システムが構築できれば、送金手数料の引き下げにもつながるという。全銀協の取り組みと重なる銀行も多い。

 楽天銀行はいち早く改革に動いた金融機関。14年から、フェイスブック上で「友達」であれば、口座番号がなくても振り込みが可能なサービスを始めた。東京都内の会社員、吉川清香さん(38)は「フェイスブックに口座番号を登録する必要が無いので、安心感があった」と話す。もちろん、同行内の口座であれば手数料は無料だ。

 フィンテックの台頭で、これまで銀行が独占的に手掛けてきた金融サービスは大きな変革を迫られている。業界全体を巻き込み、安心と利便性の模索が今年も続く。

(水戸部友美)

[日本経済新聞朝刊2018年1月20日付]

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