虹色に輝く新種恐竜を発見 ハチドリ似の美しい羽毛
中国で、虹色に輝いたであろう恐竜の新種が発見された。化石の保存状態は非常によく、頭と胸は現在のハチドリに似たきれいな羽毛に覆われていたと考えられている。
このような鮮やかな姿には、現在のクジャクの尾のように求愛やコミュニケーションの役割があるのかもしれない。この恐竜は鳥に似た体形で、飛行に使えそうな羽のほか、頭にとさかもついていた。
2018年1月15日付で学術誌「Nature Communications」に掲載された論文で、この羽毛恐竜はCaihong jujiと命名された。中国語で「大きなとさかのある虹」という意味だ。
中国科学院の古生物学者で今回の論文の共著者である徐星氏によると、Caihongは森で暮らし、小さな哺乳類やトカゲを探して木から木に飛び移っていた可能性があるという。アヒルほどの大きさの肉食恐竜で、体重は500グラムほどだったようだ。
「これまで数多くの羽毛恐竜化石を目にしてきましたが、今回の美しく保存された羽毛には衝撃を受けました」と徐星氏は話している。
ハチドリの虹色構造にそっくり
恐竜の最後の生き残りである現在の鳥類は、空を飛ぶために羽を使うほか、求愛や社会的立場を得るためにも使う。しかし、恐竜化石の研究から、羽はもともと見せるために進化し、飛ぶために必要な特徴を備え始めたのはその後と考えられている。
鳥と同じく、恐竜も色覚をもち、カラフルな羽を見せ合っていたのだろう。恐竜の羽毛化石から、色素を蓄えたメラノソームと呼ばれる細胞小器官の痕跡が見つかり、もともとの色がわかることがある。
中国河北省の農家が見つけたCaihongの化石を、遼寧省の古生物博物館が手に入れたのは2014年2月のことだった。
瀋陽師範大学の古生物学者、胡東宇氏のグループが化石を調べたところ、保存状態がよい部分に羽の色素の痕跡が含まれていることがわかった。このグループは、化石の66カ所からサンプルを採取し、現在の鳥の羽のメラノソームと比較した。
その結果、Caihongの頭と胸、そして尾の一部から、長く平べったい層状のメラノソームが見つかった。これともっともよく似ているのは、虹色に輝くハチドリの喉の羽毛のメラノソームだ。
ハチドリの場合は、同じような微細構造がプリズムのように光を分光し、金属のような光沢ができて角度によって違う色に見える。胡東宇氏のグループは、恐竜の羽の色を厳密に再現することはできなかったものの、メラノソームの観察からCaihongも虹色に輝いて見えただろうと考えている。
光沢をもつ恐竜が見つかったのは、今回が初めてではない。2012年には、ミクロラプトルという恐竜が青っぽく輝く羽毛を持っていた証拠が見つかっている。これは、現在のカラスやキュウカンチョウに似ている。ただし、ミクロラプトルは全身が光沢をもち、Caihongの約4000万年後の世界に暮らしていた。
Caihongとミクロラプトル両方の研究に携わっているテキサス大学オースティン校の古生物学者ジュリア・クラーク氏は、「進化の系統樹に当てはめると、獣脚類の恐竜たちは2つの異なる方法で光沢色を手に入れていたと考えられます」と語る。
飛ぶための羽としては最古?
今回の論文を査読した英エディンバラ大学の古生物学者スティーブ・ブラサット氏によると、Caihongは見せるという用途以外にも羽を使っていた可能性がある。「羽毛には虹色の光沢がありますが、それだけではありません。目のすぐ前には、骨が隆起した奇妙なとさかがついています。おそらく、これも見せるためのものでしょう」
さらに徐星氏は、シダの葉状のCaihongの尾には非対称形の短い羽が生えており、その先端は、空を飛ぶ際の空気抵抗に耐えられるよう固くなっていたと述べる。Caihongは「飛ぶに耐える羽をもつ」という重要な進化を遂げた最古の生物であるとの考えだ。よく知られている始祖鳥にも非対称な羽があったが、始祖鳥の登場はCaihong の時代より1000万年ほど後である。
ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーで、始祖鳥について研究している米サウスフロリダ大学の生物学者ライアン・カーニー氏は、Caihongについて「この幅の広い大きな尾の役割は誰にもわかりません。光沢のある頭を目立たせることができるように、黒い背景として使ったのかもしれません」と話す。
クラーク氏も、Caihongが光沢のある羽をどのように使ったのかはまだはっきりとはわからないと言う。オスとメスの羽の違いもわかっておらず、さらなる研究を待つほかない。
ブラサット氏は言う。「羽毛をもつ恐竜が見つかれば見つかるほど、恐竜がいかに鳥に近い存在であるかを思い知らされます。もしその時代に行くことができるなら、私たちは彼らを見て鳥だと思うでしょう」
(文 Michael Greshko、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年1月18日付]
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