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強欲企業が生んだタイタニックの悲劇 事故対策の欠如

失敗だらけの人類史

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

「失敗の歴史」ともいえる人類の歴史の中で、悲惨な事件・事故は数知れない。それが人間の欲望や過失に起因するものであるなら、我々は過去を振り返り、二度と過ちを起こさぬよう学ばなければならない。

ナショナル ジオグラフィックの書籍『失敗だらけの人類史 英雄たちの残念な決断』(ステファン・ウェイア著)でも、そのような歴史的な事件・事故は多く取り上げられている。1912年に起きたタイタニック号の沈没事故もその一つだ。あまりにも有名な出来事ではあるが、人類が犯してきた「失敗」の代表格として、ここで改めて紹介しよう。タイタニック号を沈没へと導いた異常な自尊心と傲慢は、繰り返し語られてしかるべきだろう。

下層デッキへの浸水を許した設計ミスは、それほど馬鹿げた過ちではない。航路の選択にしてもそうだ。あの宿命的な夜に1500人あまりもの命を奪ったのは、事故の可能性を無視して十分な救命ボートの装備を怠った、タイタニック号の設計者と所有者のとてつもない愚かさにほかならない。

究極の豪華客船

タイタニック号は、大西洋横断航路の独占を目指す3隻の姉妹船のうちの一つだった。建造事業は、イギリスの海運会社ホワイト・スター・ラインと造船会社ハーランド・アンド・ウルフとで行われた。1万4000人を動員して3年がかりで建造されたタイタニック号は当時、動く物体として世界最大だった。

タイタニック号は「絶対に沈まない」とうたったことは、誇大な宣伝の古い例として、当然のことだったのかもしれない。当時、ホワイト・スター・ラインはキュナード・ラインと熾烈な競争を繰り広げており、この競争に何が何でも勝たねばならないとの決意で、究極の船の建造を決めたのだ。

タイタニック号は全長268メートル、全幅28メートル。29基のボイラーを159個の石炭炉で駆動し、最高速度23~24ノットで大西洋を素早く横断できるとの触れ込みだった。業界誌『シップビルダー』はタイタニック号を、その水密区画の設計と機能(実際は悲惨なまでの傷物と判明する)から、「まず間違いなく沈まない」船と評した。しかし、立派な煙突4本のうち実際に煙突として使うのは3本だけで、1本は主に外観を整えるためのものだった。

タイタニック号の惨事の原因はよく知られている。船の横腹が氷山に衝突し、水密区画にものすごい勢いで浸水していった。水であふれる区画が4つまでだったなら、タイタニック号は持ちこたえられたかもしれない。しかし、船体にあいた穴は非常に大きく、6つもの区画に水があふれて、船は沈没を運命づけられた。

約3500人の定員に対して、船には2200人あまりしか乗っていなかったが、それでも予想を超える人数だった。不運なことに、この悲劇が始まってから2時間もの間、乗客は事態をはっきりと認識できずにいた。1等の乗客は、冷えきった大西洋上の夜に客室を出て木製の救命ボートに向かうことに、まったく気乗りがしなかった。3等の大半の乗客には、そもそもその機会さえ与えられなかった。

タイタニック号は合計20艘(そう)の救命ボートを船に積んでいた。定員65人の標準的な木製ボートが14艘、それよりも小さな定員40人のカッター型木製ボートが2艘、船底が木、側面がキャンバス地でできた定員47人の折り畳み式ボートが4艘である。20艘すべての定員を足すと1178人。つまり、すべての救命ボートに定員いっぱいまで乗せたとしても、約2200人の乗員のうち1000人ほどが乗れなかったことになる。

そして実際は、それよりもはるかに多くの人々が、沈んでいく船に取り残された。冷たい海に下ろされた救命ボートのうち、乗客を定員いっぱいまで乗せたものはほとんどなく、このことが死者数を劇的に引き上げた。乗組員は救命ボートの取扱訓練を一度も受けておらず、定員に達した救命ボートでも安全に海上に下ろせることを知らされていなかったのだ。

安全よりも快適さを優先

そもそも、なぜ救命ボートはこんなにも少なかったのだろう。当時、船は年々大型化していたが、救命ボートの要件はそのままだった。タイタニック号は救命ボートを合計48艘積むように設計されたが、ホワイト・スター・ラインは、乗客の快適性を優先させた。救命ボートを増やせば甲板が雑然とすると考えたのだ。ハーランド・アンド・ウルフは救命ボートの増設をホワイト・スター・ラインに訴えたが、最終的には引き下がった。

それだけではない。救命ボートに関する訴えを退けたホワイト・スター・ラインの社長ジョセフ・ブルース・イズメイは、氷山が出現すると報告されていた航路を全速力で航行し続けるようスミス船長に強く要求したとの通説もある。周知のとおり、イズメイは本人いわく自分でも気づかぬうちに、数少ない男性の一人として「たまたま」救命ボートに乗っており、この大惨事を生き延びたうえ、ホワイト・スター・ラインの親会社の重役として残った。

彼はその後25年間生きたが、本当は船もろとも沈んでいればよかったと思っていたかもしれない。あらゆる人々から事故の責任を問われた。テキサス州のイズメイという町は、改名さえした。彼をこのように批判する者もいた。「あいつは、けだものの欲望に一切のまともな感情を飲み込まれた薄汚いブタだ。……自分のことだけ考えているうちに、人間らしい心が退化したのだ」

[書籍『失敗だらけの人類史 英雄たちの残念な決断』を再構成]

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