実は、山口さんは東大時代に受験した司法試験でも重大なミスを起こしかけた。「問題を読み飛ばして、全く見当違いの解答をしていました。あわてて試験官に新しい用紙をくださいと要求し、猛スピードで書き直して、合格しました」と話す。基本的な文章を書き間違うこともしばしばある。自分で「知る」と書いたと思ったのに、読み返すと「死ぬ」と書いてあったこともある。

自分を信じてはいけない

おっちょこちょいの山口さんはなぜ数々の「危機」を乗り越え、合格を勝ち取れたのか。「私は昔からケアレスミスが多い。解答を一通り書き終わった後、必ずこう思うことにしています。『絶対にミスしている。自分を信じてはいけない』。試験終了前に『もう大丈夫だ』と解答用紙を提出して、会場を出る人もいますが、私は最後の最後まで入念にチェックし、見直しします」と山口さんは話す。

毎年、多くの受験生が試験に挑む東京大学

緊張のあまり、テスト中に体調を崩すこともよくあった。「おなかが痛くなるので、いつも痛み止めなどの薬を持っていた。あるだけで安心感が生まれるからです」という。ただ、試験の度に腹痛ではネガティブ思考になりやすい。そこで発想を切り替えて、その悩みも克服した。

「ある試験で、腹痛を起こしたときに予想外に試験の成績が良かった。それを機に『おなかが痛いときの試験の方が点数がいい』と思い込むことにした」という。山口さんの得意技は脳に思い込みをさせ、ポジティブな思考に変換することだ。

尊敬する父親からも大切な助言をもらった。「テストのときは、からだが最悪の状況でも、自分の実力の最低80%はとれるように日ごろから心がけた」。学生時代は父親もテストの度に緊張で発熱していたが、常に自分をそう鼓舞していたという。そしてこう励ましてくれた。「どんなに体調を崩しても、受かる人は受かるから大丈夫」

インフルでも受かる人は受かる

東大工学部の男子学生も、「実は家族からインフエルエンザをうつされて、東大の2次試験の2日目に発熱しました。最終試験なので他の受験生に迷惑をかけないと考え、受験しました。試験中は40度近い熱が出てもうろうとし、休憩時間に嘔吐(おうと)しましたが、『受かる人は受かる』と自分に言い聞かせ、奇跡的に合格できました」と明かす。受験失敗の理由を体調不良だったからという人もいるが、最終的に勝つ人とそうではない人の違いはマインド設定にもあるようだ。

山口さんは「試験の前には、絶対に起こってはいけない最悪の事態を想定して、イメージトレーニングするとともに、十分な備えが必要」という。答案用紙に最初に名前を書き込む、受験番号をきちんと確認するなど、チェックリストを作成して、試験の2~3日前に一つ一つ潰すといいという。鉛筆や消しゴムなど持ち物にも気を配り、会場も必ず下見をして、最悪の事態に備えておく。

社会に出れば、毎日が試験のようなものだ。ビジネスの世界でケアレスミスや言い訳は許されない。大事な商談や契約の場で体調不良で遅刻しましたといったら、信用を著しく損なうだろう。寒風が吹く冬の受験は過酷だが、自らを磨く修練の場でもある。

(代慶達也)

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