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ヒットの原点

「独裁」は悪いですか 龍角散を再生した音大卒社長 ヒットの原点 龍角散(下)

2018/1/23

■過去の蓄積とブランドイメージを大事にした

――入社してすぐ、約40億円の売り上げに対して負債も同額あると発覚した。その時、会社をつぶすべきかどうか悩んだそうですが、再建すると決めた理由は何だったのでしょうか。

ブランドイメージを壊さないよう、「のど」への特化を決めた

「三菱化成工業に勤める以前、小林製薬でのど関連製品のプロダクトマネジャーをしていましたから、龍角散という会社の弱さは知り尽くしていたつもりです。看板商品の龍角散に関しても、こんな飲みにくい粉薬をどうしてみなさん使っているのかなと思っていました。入社してから、ユーザーにグループインタビューするなどして、改めてみなさんがこの会社をどう思っているのか、残すとすればどこに可能性があるのかを調べました」

「龍角散のヘビーユーザーは『店になかったら何軒でも探しに行く』と言いました。こんな古くさい、時代から取り残されたような会社をどう思いますかと聞いたら、『何を言うか。古いということは歴史があって、過去の蓄積があるということじゃないか』と言われました。それを聞いて、龍角散はかけがえのないブランドイメージを持っていることを知りましたし、これを大切にしなきゃいかんと思った。このブランドイメージを壊さぬよう、余計なことをやらずにのどに特化しようと思い、ほかを切ったんです」

「私はもともと音楽家ですから。音楽家は自分のよさを出すことが必要なんです。10人のフルート奏者がいて、同じ演奏をしたら負ける。今もステージに立って吹くことがありますが、『どうしてそんなクリアで繊細な音が出せるのか』と言われます。それは、そういうふうに音づくりをしているから。経営でいえばそれがポジショニングであり、戦略です。おかげさまで龍角散は今、よく売れています」

■「神薬」ブームは事前に情報をつかみ、仕掛けた結果

――龍角散は「神薬」の一つとして中国人観光客にも人気ですが、これは会社として何か仕掛けた結果なのでしょうか。

「もちろんですよ。中国人に対するビザの発給要件が緩和されることが発表され、これはチャンスだと思った。当社は台湾・韓国に輸出してすでに50年以上になります。だから、中国人もある程度、龍角散のことは知っていたでしょう」

「沖縄や北海道で龍角散が異常に売れているのはすでに把握していましたから、よし、仕掛けてやろうと思い、2010年ごろから現地の旅行会社店に置くフリーペーパーに広告を打ち始めました。私は日本家庭薬協会の未来事業推進委員長でもあり、加盟各社にも呼びかけて、共同で取り組んだのです」

「観光客は来日する前から何を買うかを決め、家族や友人へのお土産も含めて買っていく。知らないものは誰だって買いません。だから、龍角散が中国人観光客の間で人気になったのは、マーケティングの結果です。ただし、当社には中国国内と直接取引できる体力はありません。日本や台湾、香港で買ってもらう。生産も国内です」

「工場に関しては、将来予想される人手不足に合わせて少ない人数でも回るよう、自動化を推し進めているところです。その点でセンスのいい人を採用する。製造業としてのレベルを上げるために、元自動車メーカーの役員を顧問に招き改革を進めています」

(ライター 曲沼美恵)

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