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龍角散の藤井隆太社長

龍角散の藤井隆太社長

創業者一族の藤井隆太社長は、病が発覚した先代社長の父に呼び戻されて、1994年、龍角散に入社した。翌95年から8代目社長に就いている。入社前は小林製薬、三菱化成工業(現三菱化学)に勤務していた。服薬補助ゼリーの開発者、福居篤子氏を執行役員に引き上げるなど数々の改革を主導。倒産寸前だった会社を立て直した。音楽の名門、桐朋学園大学出身という異色の経歴を持ち、プロの音楽家として活躍していたこともある。今もボランティアのフルート奏者としてステージに立つこともある藤井社長に、老舗を復活させたマネジメントの極意を聞いた(前回「『龍角散』復活 左遷された女性開発者が原動力」参照)。

◇  ◇  ◇

経営者は全体を把握するスコアを持っている

――企業経営はよくオーケストラに例えられます。オーナー企業の場合、小編成のアンサンブルと比較して独裁的だと批判されることもありますが、この点に関して、音楽家でもある藤井社長はどうお考えでしょうか。

「独裁で何が悪いのですか? 経営者は決断するためにいるんです。それがなかったら、いったい誰が結果責任を負うんですか?」

「オーケストラの団員と指揮者は同列ではない。なぜかといえば、情報量が圧倒的に違うから。オーケストラの団員は自分のパートの譜面しか持っていません。聞こえる音の範囲も自分の周りだけ。全体を最適化できるポジションにはないし、全体のことをああだ、こうだと言う権限はありません」

「指揮者は自分で演奏をしませんが、すべてのパートが書かれているスコア(総譜)を持っています。スコアを見ながら、どこで、誰が、どんな音を出しているかを把握している。聴衆を背負い、全体の音を均一に聞ける位置に立っているのは指揮者だけです」

「いい指揮者は独裁的ですよ。方針を決めるのはあくまで指揮者。みなさん、この曲をどう演奏したいですかとご用聞き的にやる指揮者はヘボです。みなさんの言うことを聞きました、はい、それをつなぎました、ではいい演奏にならない。そんなことをしたら、めちゃくちゃな演奏になって聴衆を満足させることはできません」

「なにも高圧的になれ、と言っているのではありません。意見は聞くし、必要なら説得もします。それと、決断するからには必ず現場にも行きます」

新規の案件は報告を待たず、自分でプレゼン

――服薬補助ゼリーを発売する際、開発者の福居篤子氏と一緒に介護現場を訪問したと聞きました。

「現場に行くのは当たり前です。営業の現場も行くし、工場や展示会・学会にも行きます。気が短いですから、待っているのが嫌いなんです。行けばたいていわかります。ヒントもたくさんある」

「普通は社長が社員に『報告せい!』と指示しますね。当社の場合は私が自分で現場へ行ってその場で決める。戦略の組み立て方としても、それが一番早い。月に1度、幹部会議は開いていますが、新しい案件に関しては社員の報告を受けるのではなく、私がプレゼンしています。そういう意味では、おかしな会社です」

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