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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は、定点観測しているリブロ汐留シオサイト店だ。年末年始をはさんでビジネス書の動きは好調が続いている。同じ汐留地区に立地する書店が年末に閉店し、そのぶん客足が伸びているためだ。ナイキ創業者の自伝『SHOE DOG』が快走するのを追いかけるように好調な売れ行きを示していたのは、ノンフィクション作家が表からは見えにくい新橋の逸話を足で集めて書き留めたルポルタージュだった。

新橋の今に昭和のにおい探る

その本は、本橋信宏『新橋アンダーグラウンド』(駒草出版)。旺盛な執筆活動を続ける本橋氏はここ数年、東京・山手線周辺のあやしげな雰囲気のある街をルポする「東京の異界シリーズ」を書き続けており、本書はその第4弾に当たる。同書店のビジネス書ランキングでは先週1位になった。ビジネス書というより文芸書の趣の本だが、汐留のビジネスパーソンが、隣接する新橋のあやしげな魅力にひかれて手を伸ばしているようだ。

本橋氏の本は、個人的な体験に取材を重ね合わせながら、普通の人は踏み込みにくい裏の世界の手触りを伝えてくる。本書に登場するのも、91歳のママがやっているガード下のパブであったり、雀荘や風俗店の看板が並ぶニュー新橋ビルであったり、昭和のにおいをとどめる、まさに「異界の入り口」のような場所だ。自分の駆け出し時代に思いをはせながらそうした場所に足を運んでは、新橋という街に引き寄せられる人の息遣いを書き留めていく。91歳のママの豪快な笑い声と終戦直後の闇市時代までさかのぼる思い出話。客さばきがうまく、新橋飲み屋街で一番有名といわれる22歳の女性店員の話も出てくる。新橋に多くあるナポリタンを出す店の話、86歳の「靴磨きばあちゃん」の話……。

そんな現在のルポから著者が手繰り寄せるのは、昭和の新橋の語り部たちだ。スタジオジブリのプロデューサー、鈴木敏夫氏もその一人。かつて新橋にあった徳間書店の編集者だった鈴木氏は、自身が過ごした三大実話系週刊誌の黄金時代の新橋を語り、それを主導した社長の徳間康快氏の怪物ぶりも語る。ほかにも日本最後のフィクサーと呼ばれる朝堂院大覚氏の事務所が新橋にあるというのでインタビューしたり、新橋に本社があった成人映画会社の軌跡を掘り起こしてみたり、新橋のあやしさ満載のルポなのだ。「立地する大企業がテーマの本が売れるのと同じような傾向を感じる。周辺に勤務する人は地元や身近なことへの関心が高い」と店長の三浦健さん。入り口近くの特設ワゴンに並べて来客の関心を引き付けるようにしている。

『お金2.0』も上位に

それでは先週のベスト5を見ていこう。

(1)新橋アンダーグラウンド本橋信宏著(駒草出版)
(2)SHOE DOGフィル・ナイト著(東洋経済新報社)
(3)自分を安売りするのは"いますぐ″やめなさい。岡崎かつひろ著(きずな出版)
(4)お金2.0佐藤航陽著(幻冬舎)
(5)医者が教える食事術 最強の教科書牧田善二著(ダイヤモンド社)

(リブロ汐留シオサイト店、2018年1月7~13日)

1位がここで紹介したルポ。2位の『SHOE DOG』は発売から2カ月以上たっても好調な売れ行きが続く。3位は自分を高く売る方法を書いた自己啓発本。年末に相次いでテレビ番組で紹介され、そこから売り上げが伸びている。新しい経済のルールと生き方を示した『お金2.0』は、地域の別なく売れ行きがいい。5位は前回、大手町の売れ筋として紹介した食事術の本。汐留でも良く売れているようだ。

(水柿武志)

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