マネー研究所

Money&Investment

フィンテックで「おつり投資」 初心者も気軽に運用 暮らしに役立つフィンテック(上)

2018/1/21

PIXTA

 日曜日の昼下がり。筧家のダイニングテーブルでは良男がぼんやりとテレビのスポーツ中継を見ています。コマーシャルの間にふと横を見ると、息子の満がお金を数えながらスマートフォン(スマホ)を使ってなにやら調べものをしています。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中) 筧満(かけい・みつる、15) 

筧良男 満、さっきから何をしているんだい?

筧満 お正月にもらったお年玉を数えていたんだ。尊敬する米国の著名投資家のように運用で何百倍にも増やしたいから元手としてとりあえず貯金するけど、最近はやりのフィンテックを活用したサービスの中に僕が将来運用する際に役立つものがないかも調べているんだよ。

良男 フィン……? 家族の生活費のために少ないお小遣いで我慢するキンケッツ(金欠)の私にも関係あるのかな?

 ……。フィンテックは金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせた造語で、IT(情報技術)を活用した新しい金融サービスのこと。みずほ総合研究所主任研究員の原島研司さんは「インターネットやスマホが普及したことで金融機関以外の参入も増えており、様々なサービスを手軽に利用できるようになっている」と話しているよ。

筧幸子 パパが知らないのは別に珍しいことではないわ。消費者庁の調査によると、フィンテックについて「利用しており、よく知っている」と「利用していないが、内容は知っている」と回答した人の割合は全体では10.6%。パパと同じ50代は8.7%と全体より低いの。一方、18~19歳は25%、20代も18.7%いるわ。スマホやタブレット端末を利用したサービスに慣れている若い世代ほど抵抗が少ないようね。

良男 具体的にはどんなサービスがあるんだい?

 資産運用では「ロボアドバイザー(ロボアド)」が代表例だよね。

幸子 ネット経由で簡単な質問に答えるだけで、国内外の株式や債券をどんな比率で持てばいいのかなどをプログラムが示してくれるサービスね。当初はベンチャー企業が中心となって提供していたけど、今では証券会社や銀行など幅広い金融機関で利用できるわ。

良男 ロボアドを使うと何が便利なんだい?

幸子 運用について詳しい知識がなくても最適な資産配分を簡単に決められるわ。ロボアドでは年齢や年収、投資経験、資産運用の目的、100万円を1年間運用した場合の値幅のイメージなどを質問し、資産運用の際にどの程度の価格変動なら耐えられるかを示す「リスク許容度」を判定するの。その結果に応じ、国内外の株式や債券で運用する投資信託の最適な組み合わせを示してくれるの。提示するだけで運用は自分でする「助言型」は無料が一般的。売買もお任せする有料の「投資一任型」もあるわ。投資一任型の手数料は年1%程度が主流よ。

 フィンテックではほかにも、おつりを貯金したり投資信託で運用したりできるサービスもあるんだって?

幸子 「おつり貯金」や「おつり投資」と呼ばれるサービスね。スマホのアプリに登録したクレジットカードなどで買い物の代金を支払うと、あらかじめ設定した金額との差額を「おつり」として銀行の預金口座に振り込んだり、事前に指定した投信などで運用したりするの。例えば設定額が1000円で250円の買い物をしたら、差額のおつり750円を預金や運用に回すといった具合ね。

良男 どんな人に向くの?

幸子 計画的にお金を使ったりためたりできる人というより、お金の管理が苦手な人に向いているともいえるわ。設定さえすれば、意識することなくおつりでお金をためたり運用したりできるわけだからね。

 さらには人工知能(AI)を使ったサービスも金融機関で増えていると聞いたよ。

幸子 投資に役立つ情報を提供する際、大量のデータを処理したり規則性をみつけて将来を予測したりするのが得意なAIの特性を利用するサービスが最近、目立つわ。例えば上場企業が取引所で開示する決算資料をもとに瞬時に記事をまとめたり、利益の増減要因や製品の市場シェアを図表にして配信したり、チャット形式で売買が増えそうな銘柄を紹介したり。ほかにも価格動向のグラフ「チャート」を図形として認識し、外貨預金や外国為替証拠金(FX)取引のタイミングを通知したりするサービスもあるの。

 お金の借り手と貸し手をインターネットで仲介するサービスで、利回りが高く、スマホなどで投資できる「ソーシャルレンディング」も利用者が増えていると聞いたよ。

良男 フィンテックが進化し続ければ将来、満が投資で大金持ちになるのも夢じゃないな。

幸子 フィンテックやAIを活用しても、株式や債券などで運用する限り、必ずしも資産が増えるとは限らないし、場合によっては想定した以上に値下がりする可能性があることは言わずもがなよ。それに「家計からいくらを運用に回すか」までをアドバイスしてくれるサービスはまだ少なく、現時点では自分で決めるのが主流なの。フィンテックやAIを活用したサービスは、あくまで初心者が資産運用や家計管理に興味や関心を持ったり金融知識を高めたりするきっかけ、と位置づけるのが無難かもしれないわね。

■ソーシャルレンディングは高リスク
みずほ総合研究所主任研究員 原島研司さん
 個人が資産を増やす目的で利用するフィンテックサービスのひとつに「ソーシャルレンディング」があります。インターネットを通じて不特定多数から小口資金を集めるクラウドファンディングの一種で、見返りとして一定の利子を受け取れます。利回りは年5~10%程度の例もあります。
 多くは運営会社がファンド形式で集めた資金を複数の企業に融資する仕組みで、個人投資家は利回りや募集総額、運用期間などをもとにファンドを決めます。ただ、ファンドの概要は開示されますが、融資先の具体名などを投資家は確認できません。融資先は銀行からお金を借りるなど他の資金調達手段を利用できなかったとも考えられます。個人向け社債などと比べてハイリスク・ハイリターンな点には注意が必要です。
(聞き手は藤井良憲)

[日本経済新聞夕刊2018年1月17日付]

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL