ソニーの「話しかけるロボ」 家族をつなぐ機能充実
2017年11月に発売されたソニーのコミュニケーションロボット「Xperia Hello!」。スマートスピーカーと同様に、ユーザーが話しかけた内容を認識し音声で答えてくれるボイスアシスタント機能に加え、Xperia Hello!自身がユーザーを認識し、自ら話しかけてくれる機能も備える。一方通行で終わらないところが、スマートスピーカーとは異なる大きな特徴で、メーカーは「家族一人ひとりを認識し、自ら話しかけることで、日々の暮らしをアシストするコミュニケーションロボット」と位置づける。実際の使い勝手などはスマートスピーカーとどう違うのか。自宅で使ってみて、その特徴と違いを探ってみた。
ユーザーを認識し、自ら話しかける
ソニーモバイルコミュニケーションズから2017年11月18日に発売されたコミュニケーションロボット「Xperia Hello!」(税別14万9880円)は、イヤホン型デバイス「Xperia Ear」やAndroid OS搭載スマートプロジェクター「Xperia Touch」に続く、Xperiaスマートプロダクトの第3弾製品となる。
ソニーモバイルによると「あたかも『家族の一員』のように、家庭内での会話を促したり、家族を見守る安心感や生活情報を提供するなど、日々の暮らしをアシストする」ことを目指したというXperia Hello!は、大きく分けて「コミュニケーション」「見守り」「インフォテインメント」という3つの機能を備えている。
「コミュニケーション」は屋内外の家族をつなげる機能で、LINEでメッセージを送ったりビデオ伝言を残したりすることが可能。さらに、Skypeによる音声通話やビデオ通話にも対応する。
「見守り」は、外出先から家の中の様子を確認できる便利機能。LINE経由でXperia Hello!が家族を見かけた時間を確認できるほか、室内を撮影して写真で確認することも可能だ。
「インフォテインメント」は、ユーザーを認識し、そのユーザーにあった情報を能動的に教えてくれる機能。その日の天気やニュース、交通情報とともに、リマインダーやメッセージも通知してくれる。
これらの機能を組み合わせて使うことで、毎日の生活をアシストするというわけだ。
可動箇所は少ないが、多彩な表情
ボディーデザインは全体的に丸みを帯びており、凹凸もほとんどないので、親しみやすい柔らかなイメージになっている。さらに、ボタンを底面に配置することで家電っぽさを消していることもあってか、手足がなくても、頭と目だけでそれなりにロボット感が出ている。
また、胴体と頭、目しか動く部分はないが、細かな動きでロボット感をしっかり出している点は優秀。「楽しい」や「悲しい」といった感情を、ちょっとした頭の傾きや目の瞬きでちゃんと表現できる点はさすがだと思った。
さらに、かなり素早い動きをしているにもかかわらず、モーター音などのノイズがほとんどしないのは驚きのひと言。音に対する不快感にしっかり対応している点は、技術力の高さを感じた。
顔認識は優秀。家族をしっかり識別
カメラを使った顔認識は、現時点ではスマートスピーカーにない機能となる。Xperia Hello!は、各個人の設定に関心のあるニュースのカテゴリーやよく使う路線などを登録できる。ニュースのカテゴリーを父親は「経済」と「野球」、母親は「料理」と「芸能」、子供は「サッカー」としておけば、Xperia Hello!が各個人を見つけたときに、設定に応じたニュースを読み上げてくれる。父親の通勤線路として「山手線」を設定しておけば、山手線に遅延が発生した場合にはその情報を教えてくれるが、歩き通学で通学路線を設定していない子供には、その情報は提供されないというわけだ。
登録時に正面の顔だけでなく上下や左右も情報として登録するため、認識率はかなり高いと感じた。筆者の家族を間違えることはなかった。ちなみに、「メガネのあるなし」はしっかり見極め、両方とも同一人物だと識別できた。
またソニーモバイルによれば、これらの顔情報はクラウドにアップされることはなく、端末内のみに保持されるとのこと。安全性についても心配はなさそうだ。
子供でも、LINEでやり取りできる
最後に、各機能の使い勝手をチェックしていこう。
「コミュニケーション」はスマホを持っていない小さな子供もXperia Hello!経由でLINEでのやり取りが可能になるため、子供のいるユーザーはとくに活用できると思う。動画によるビデオ伝言なども、顔認証と連動させることで指定した相手をXperia Hello!が見つけたときに知らせてくれるので、通常のメモよりも見落としが少ないのは便利だ。
また、単身赴任などの人は離れて暮らす子供や年配の両親とのコミュニケーションにも活用できる。逆に、一人暮らしの若い人にはやや使いどころが難しい機能といえるだろう。
「見守り」も、どちらかといえば家族向けの機能だ。子供が帰宅するとXperia Hello!が認識してくれるので、すでに帰宅しているかどうかをLINEで気軽にチェックできるのはかなり便利といえる。
また、Xperia Hello!に室内を撮影させれば室内の様子を写真でチェックできるので、防犯目的はもちろんのこと、ペットのチェックなどにも役立ちそうだ。強いて言えば、現在は写真のみなので、動画撮影(もしくはライブカメラ的な使い方)にも対応するとさらに利便性も上がるのではと感じた。このあたりも、バージョンアップでの対応に期待したい。
「インフォテインメント」は、こちらから呼びかけなくても生活に必要な情報をくれる機能。これはなかなか優秀だった。
例えば、朝起きたときにXperia Hello!がユーザーを見つけると、今日の天気や最新ニュース、交通情報などを教えてくれるので、こちらから呼びかける面倒さがないのは何ともお手軽だ。さらに、登録しておけば誕生日などの情報も自発的に教えてくれるので、記念日などを大事にしている人はとくに便利に感じるだろう。
自分の生活スタイルに合っているか
Xperia Hello!は、コミュニケーションを重視したロボットとあって、スマートスピーカーとは方向性がかなり異なるし、既存のロボットとも少し違う方向にチャレンジした製品といえる。発展途上な点が多少あるのも否めないが、近未来的な体験ができることを思えば、その面白さや可能性は高いといえそうだ。
とはいえ、一番気になるのはその体験や利便性にコストが見合うかということ。スマホ内蔵でさまざまなテクノロジーも詰め込まれているとはいえ、税込みで約16万円という価格はかなり高額だ。利用シーンがイメージできないと、置物で終わってしまう可能性は高いだろう。
使った感じでは、家族のほうが利便性を感じるシーンが多い一方、個人では活用しにくい機能があるともいえる。スマホとロボットを組み合わせた製品とはいえ、スマホのように使うような製品ではないので、「自分のニーズや生活スタイルに合っているか」をしっかりと見極めてほしい。
(文/近藤 寿成=スプール)
[日経トレンディネット 2017年12月28日付の記事を再構成]
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