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そばLOVER、手打ちの極意ついに発見!

立川談笑

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NIKKEI STYLE

私の今年の初夢はなんと「そば」でした。それも、シチュエーションは畑。地面からソバの実を一粒拾って、黒いもみ殻を指先でピシッとつぶし、そのまま口へ。

「……うむ。今年もいい出来だ」

と広い青空を見上げる。そんな夢。わはは! どこで拾ってきちゃったイメージなんだか。

ええとですね。とにかくもう、私ときたらそばがひたすら大好きなのですよ。てなわけで、今年の一発目はそばの話。たぶん体内にたまったマグマのごとき言いたい話の、ほんの5分の1もできないんだろうと思いつつ。まいります。

松本で一席、幸福感に包まれる

そばといったら、まずはもちろん食べるのが大好き。さらに自分で打つのも好き。プライベートの畑で栽培……まではしませんが。いうなれば、私はそばLOVER(ラバー)です。その道をとことん究めたいマニアさんではなく、あくまで無節操に気ままにそばを愛する「ラバー」。手打ちにこだわるどころか駅の立ち食いでも満足だし、なんなら乾麺だっていいんだもの。

そんなそば好きな私に去年、実にうれしいことがありました。秋の新そばの季節に、長野県松本市を訪れる機会があったのです。長野県。信州ったらそば王国ですよ。それも、拘束時間が長いテレビロケではなくて、昼間の落語の仕事でなおかつ前日からの乗り込み。時間はたっぷりあります。多幸感に包まれつつ松本の街を歩きました。

その日の会場であるまつもと市民芸術館の楽屋を出て、穏やかな秋空の下。まずは国宝松本城を目指します。いやいや、驚きました。表通りといわず裏道といわず、おそば屋さんがあるわあるわ。いかにも老舗らしい「手打ち」の看板が次から次へと目に入ります。地域レベルでいったら、手打ちそば店の密度はどれほどだろうかと。大変なものです。

 そんな松本市内は江戸と大正ロマンと明治から昭和、平成がミックスされた、街全体がテーマパークのようで、歩いていてもとても楽しい。街並みがきれいで外国人観光客もたくさん。そうか。ここの魅力は国際的に知れ渡っていたのか。

目くるめく「手打ちそば」の看板群に大いに動揺しつつ、まずは松本城の威容を堪能しました。いよいよ復路。実食するそば屋さんを確定します。さあ、どこにしよう。そばラバーとしては困難な作業です。が、スマホで店舗検索なんてしません。旅の空は偶然の出会いが楽しいのです。

もちろん地域全体が高水準でしょうから、外れなんてことはまず考えられません。それでもあからさまに観光客相手の店は遠慮したいところです。できることなら地元の人が普段使い的に通う店で、なおかつ「今日はまあ、ここで安く抑えようか」じゃない店に入りたい。我ながらややこしいですね。地元の、スタンダードな手打ちそば店を求めてさまよっているのです。

結論。目をつぶって私が飛び込んだ店は大正解でした。その店は木調でいい風情の外観ながら老舗感はありませんでした。なんだか新しそう。それもそのはず。店主はそば好きが高じて脱サラして開業したのだとか。都内でもそういう店はあるけど、そば王国のご当地松本で展開するとはすばらしい!

私が頼んだのは、ざるそば。出てきましたー。香り高い新ソバは店内でひいていて、パッキパキの手打ち。そばの量もたっぷりある。都内の気取ったそば店あたりが提供する「せいろ」の2~3人前はありそう。しかも大盛りや、さらに上の激しい盛りもあるそうで、好感度は一段とアップ。つゆは2種類。なんたるクオリティーでしょう。

うわあ。ははあ。むもう。わあ! いやあ、おいしかった。ギリギリまで高まり切った爆発的なそば欲を、すっかり満たしていただきました。しかも予想以上に。いいなあ、松本。住民票を移そうかと思う瞬間です。

「最高においしかったです。ありがとうございます!」

と厨房に声をかけて店を出ました。てくてく歩いて戻った高座で掛けた落語は、『時そば』。全身がそばで満たされていたので。ああ、幸せ。

さてここからは、この年末の話。古典落語に『そばの殿様』というのがあります。そば打ちに凝ったお殿様が家臣たちに手打ちそばをふるまう話です。ところがあまりに酷いそばで家臣一同、下痢や腹痛に苦しみのたうち回る。そのお殿様と同様……、とは言いたくないのですが私もそばを打ちたがりなのです。食べさせるのは、家臣でなくて弟子。あと、家族です。

ことの始まりは数年前、「この歳ではもうそばは打たないから」と、親戚を介してご高齢の方からそば打ちの道具一式を譲り受けたのです。大きな鉢、巨大なボウル、ふるい、そば切り包丁、5客のザル、四角いそば湯入れ、などなど。

ロクなそばができなかった理由は

元より料理好きな私です。譲り受けてまもなくそば打ちを始めました。さあ、二八そばに挑戦です。一緒に頂いたそば打ちレシピを参照しながら作業しますが、なかなかうまくいきません。そば粉に水を回して、こねて伸ばして細く切って、ゆで上げる……まではいいのですが、食べるときにブツブツと切れる。

「どうしてだろう?」と思うまでもなく、理由は分かりました。私がそばを打つのはたいてい年末です。しかも、もうすでにずいぶんとお酒を飲んじゃってます。そばを打ちながら「なんか軟らかいなあ。そば粉を追加しようか。おっと、固くなりすぎたから水を入れようね」と、これでは、ロクなそばはできるはずもありません。

そこで。この年末は気合を入れました。お酒を飲む前に、そばを打つ。これは賢明なことです。大発明です。バカな迷い方もせずスイスイと作業が進みます。「菊練り」とか「ヘソ出し」とは、そば打ちに興味がある人なら分かる用語でしょう。そんな手順もそれなりにクリアできました。なぁんだ! お酒を飲まなきゃ良かったんだ!

なめらかに仕上がった生地を伸ばして、切って。つゆは、私の好みの辛口に仕上げてあります。

そして、出来上がり。最高!やったあ!自分史上、最高到達点です。この年末こそは、弟子や家族に迷惑はかけなかったと胸を張れます。うまかった。ビバ、手打ちそば!ビバ、おれ!

よーし、この調子で将来は松本にそば屋を出店しよう。そば打ちの腕を磨いて、そう。20年後くらいには何とかなるかしら。

立川談笑
 
1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。

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