投資で損をするのが嫌な人に効く、コツコツ投資の方法
投資をするときの不安症状でよくあるのが、「損したら嫌という気持ち」ではないでしょうか。そこで、そんな投資不安症に効くノウハウをご紹介しましょう。
気持ちをプラスに持つために
株式、投資信託、外貨。これらに共通するのが、商品の値段が日々変わること。だからこそ、投資したものが成長する楽しみがあり、期待通りに値上がるとうれしいものです。
でもその一方、値下がりが不安というのも、投資をするときの正直な気持ちでしょう。値下がると気持ちは暗くなるし、値動きは見たくないし、投資した自分の行動を後悔したり、場合によっては投資そのものが嫌になってしまったりします。
でも、投資の方法によっては、買った商品が値下がっても、「今は、仕入れどき! かき入れどき! 安く買えてよかった!」と思えるかもしれません。そんな、不安に効くお薬となるノウハウを紹介します。
投資の方法を比べてみた
ちょっと想像してみてください。私と読者の皆さんが、それぞれ10万円を持って、同じ時期から、同じ投資信託に投資をするとします。そのときに、私は「今が買いどきだ!」と思って、10万円全額を「一括投資」しました。
それに対して皆さんは、「将来の値動きがどうなるか分からないから、毎月1万円ずつ投資をして、10カ月後に10万円を使い切るように投資をしよう」と考えて、「コツコツ投資」を行いました。
さて、実際に投資をしたときの値段と、10カ月後の残高が次の表です。
皆さんは、コツコツ投資で毎月1万円ずつ買っていくわけなので、1月に投資信託の値段が1万円だとすると、投資信託が1個買えます。8月に6000円まで値下がったときは、積立額1万円で1.7個の投資信託を買うことができます。同じ1万円でも、値段が下がったときの方がたくさん買えることが分かりますね。
そう、金融商品も一つの「モノ」なので、同じ金額を払うとしても、値段が下がったときには、よりたくさんのモノを買うことができるのです。これが先ほどの「今は、仕入れどき! かき入れどき!安く買えてよかった!」ということですね。
こうしたコツコツ投資の効果は、10カ月後に出てきます。
毎月1万円ずつコツコツ投資しているわけですから、10カ月後の皆さんの手元には、全部で投資信託が13.2個あります。10月のこの投資信託の時価は、8000円ですから、1個8000円×13.2個は10万5600円、これが皆さんの資産です。
コツコツ積立に投資した金額は、10万円でしたから、投資信託そのものの値段は値下がりしていますが、皆さんの資産は増えていますね。
一方、一括投資をした私はどうでしょうか。
投資信託が1万円のときに一気に10万円を使って、10個の投資信託を買いました。すると、現在は8000円ですから、1個8000円×10個となり、資産は8万円です。つまり、買ったときから値下がりしているので、2万円の損となり、あとはもう、値段が元に戻るのを待つしかないのです。
同じとき、同じ商品、同じ総額で投資したのに、私はマイナス、皆さんはプラスです。この違いはなぜ起こったのでしょう。
コツコツ投資の魅力
先ほどからの繰り返しですが、毎月コツコツと一定金額で投資をすると、値段が安いときにたくさん買うことができるため、買ったときの平均単価は下がります。すると、少しの値上がりでプラスの利益が出やすくなるのですね。
これが、時間を分散して投資する「コツコツ投資」あるいは「コツコツ積立」の効果なのです。
これを知っていると、自分が気に入って投資した商品の値段が一時的に下がったとしても、「今は、仕入れどき! かき入れどき! 安く買えてよかった!」と思えるので、不安も軽くなりますね。
コツコツ投資の注意点
ただし、コツコツ投資も万能ではありません。
毎月コツコツ積み立てた場合でも、一方的な値下がりが続くと、商品そのものの価値が下がっている可能性が高いので、コツコツ積立でも損することがあります。また、積み立てたといっても、2カ月ですぐやめました!となると、その効果を生かすことができません。
これらのマイナス面をプラスにするためには、「自分が理解できる商品」を選び、「時間を味方に付けた投資」を行うことは欠かせません。
そのための制度の一つが2018年から始まった「つみたてNISA」であり、2017年から加入者が急増している「iDeCo」なのです。
つみたてNISAの「コツコツ積み立て」ペースは、金融機関によって異なります。毎日積み立てるものから隔月、3カ月、4カ月、6カ月のペースもありますし、最低金額も100円や1000円など手軽な金額でできるところが増えています。
投資不安を直すには、コツコツ投資のお薬が効きます。2018年は、投資元年として、一歩踏み出してみませんか?
Cras代表取締役。FPオフィス will代表。大阪在住のファイナンシャルプランナー。中学・高校の保健室の先生から、結婚、退職、住宅購入、加入保険会社の破たんを経て転身。働く女性や子育て世帯が、お金の安心と可能性を実感できる「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を伝える。講演やテレビでも活躍。新著に「本気で家計を変えたいあなたへ〈第2版〉 書き込む"お金のワークブック」(日本経済新聞出版社)。
[nikkei WOMAN Online 2017年12月25日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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