TIAは、脳の細い血管や脳に血液を送る頸(けい)動脈、椎骨動脈に小さな血栓ができて血管を詰まらせることで発症します。脳梗塞と同じように、片側の手足や顔のまひ・しびれといった運動障害や感覚障害、ろれつが回らない、言葉が出ないといった言語障害などの症状が現れますが、一過性のもので、数十分から数時間もすると回復します。そのため、脳梗塞を疑って救急車を呼んでも、病院へ搬送される間に症状が治まって、そのまま自宅に帰ってしまうケースや、救急車さえ呼ばずそのまま放置するケースも少なくないようです。

しかし、TIAを起こすとかなりの確率で脳梗塞が起こります。国立循環器病研究センターの循環器病情報サービスによれば、TIAを放置すると、3カ月以内に15~20%の人が脳梗塞を起こし、そのうちの半数はTIAを起こしてから数日以内(特に48時間以内)に発症するとされています。ですから、TIAを疑うときは、速やかに脳神経外科や神経内科などのある専門病院を受診することをお勧めします。

また、上腸間膜動脈閉塞症では、激しい腹痛が起こります。しかし、おなかの表面の皮膚を触って分かるような腹膜刺激症状がほとんどないため、医師が緊急性があると判断するのが難しい場合があります。上腸間膜動脈閉塞症を発症する頻度は心筋梗塞や脳梗塞に比べるとまれですが、覚えておくといいでしょう。

生活習慣病を改善し、血栓を作らない工夫を

――血栓を作るのを防ぐためには、どのような予防法が有効でしょうか。

まず、生活習慣病を背景にした血栓症の予防では、肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などを改善することが重要です。すでに発症している人は治療を行い、リスクのある人は適度な運動や栄養バランスのとれた食事などを心がけましょう。また、喫煙は血管内の炎症を引き起こし、アテローム性動脈硬化によって生じたプラークを破れやすくするので、禁煙するのが賢明です。なお、動脈硬化の有無は頸動脈エコー検査で簡単にチェックできるので、人間ドックなどで定期的に受けておくといいでしょう。

高齢で起こりやすくなる血栓症の予防では、健康診断などで定期的に心電図検査を受け、心房細動の有無を確認していくことが大切です。心房細動が見つかった場合は、心房細動自体を治すのが難しいため、血液を固まりにくくする抗凝固薬などで血栓症を予防します。

環境によって生じる血栓症、ロングフライト症候群は、長時間同じ姿勢でいることを避け、こまめに足を動かしたり、水分を摂取したりすることが予防になります。また、下肢の静脈にこぶのようなものができる下肢静脈瘤(りゅう)のある人は、血流が滞りやすいため、深部静脈血栓症のリスクとなるので注意しておきましょう。

こうした予防に加えて冬場には、脱水と、寒暖差にも気をつけてください。前述した通り、冬は夏ほど意識して水分をとらないため脱水状態に陥りやすくなります。それを防ぐため、こまめに水分を摂取しましょう。また、寒暖差については、特に入浴時には、血圧の乱高下による「ヒートショック」を起こさないために、脱衣所と浴室の温度差を少なくする工夫(湯船の蓋を先に開けておくなど)や、シャワーや浴槽の湯温を上げすぎない配慮をするといいでしょう。衣類を脱いですぐに湯船につかるのも急激な温度変化につながるので、かけ湯やシャワーで温まってからにしましょう。

阿保義久さん
 北青山Dクリニック院長。1993年東京大学医学部卒業。下肢静脈瘤の日帰り根治手術を日本で初めて確立したパイオニア。2000年日帰り手術(外来手術)、予防医療、アンチエイジング医療を主軸とするクリニックを開設。下肢静脈瘤日帰り手術は3万例以上の実績を持つ。局所麻酔による鼠径(そけい)ヘルニア日帰り手術、無痛の胃内視鏡検査、がん・動脈硬化発症予防のためのドック、がん遺伝子治療など、新たな領域にも取り組む。

(ライター 田村知子)

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