苦境の毎月分配型投信 「高分配のみに注目」に反動QUICK資産運用研究所 清家武

過去10年、高い分配金を背景に「毎月分配型ファンド」は人気化して投信市場をけん引してきた。だが、ここ数カ月で投資家の毎月分配型離れが加速している。ファンドの収益を超えた分配金の支払いについて金融庁が問題視し、金融機関が販売を手控えているのが大きな要因だ。さらに主要ファンドによる分配金の引き下げも重なり、反動が大きくなっている。

毎月分配型ファンドの純資産残高は、ピーク時(2015年5月)は43兆円あったが、17年11月末時点では30兆円まで減少した。追加型株式投信全体(上場投資信託=ETFを除く)に占める毎月分配型の純資産残高の比率は17年11月末時点で48%と、ピーク時(11年11月)の7割から急低下した。

投資資金の流入額(設定額)も急激に減少している。追加型株式投信全体に占める毎月分配型の設定額の比率は17年11月時点で26%にとどまる。17年1月は5割だったので、1年足らずで大幅に低下した。

金融機関が販売手控え

毎月分配型が苦境に陥った大きな理由の一つは金融機関の姿勢転換だ。それまで毎月分配型ファンドは人気商品として積極的に販売されてきたが、多くのファンドが運用実態より高い分配金を出し、投資家がそれを理解していないことについて金融庁が問題視。金融機関がファンドの販売を控えるケースが目立っている。

金融庁は金融機関に「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)」を求めており、数値目標であるKPI(Key Performance Indicators)で「毎月分配型のシェア減少」を掲げる金融機関も多い。

こうした中、主要ファンドである「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」が17年11月に分配金を引き下げた。急速に回復してきた米国の不動産投資信託(REIT)相場が頭打ちとなったことが理由とされるが、分配金の下げを受け投資資金の流出額(解約額)が膨らんでいる。

「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」では12月に881億円の資金が流出。類似のファンドである「新光 US-REIT オープン〈愛称:ゼウス〉」、「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」も含め、海外REIT型ファンド全体から1880億円の資金が流出した。

分配金の下げ余地なお

多くの投資家は分配金の下げを嫌気して解約売りを出しているとみられる。これは分配金の高さだけに注目して投資していた人がいかに多かったかを物語る。米国REIT市場の平均分配金利回りが4%程度なのに対して、「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」の分配金利回りは16.5%、「新光 US-REIT オープン」は17.5%、「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」は16.4%と、いまだかい離は大きい。分配金の引き下げ余地はかなりあると判断される。

ただし、ファンドの分配金の原資は当期の収益や過去の収益の蓄積だけではない。投信の分配金にかかわる勘定科目には、当期の「配当等収益」「有価証券売買等損益」に加えて、前期から繰り越された「分配準備積立金」「収益調整金」がある。

財務にはむしろプラスも

収益調整金は日本特有の勘定科目で、新規の投資家が投信を購入することによって、既存の投信保有者への分配可能額が減らないように設けられたものだ。

実は毎月分配型ファンドの多くはこの収益調整金から高い分配金を支払ってきた。過去に新規の購入が大量にあったファンドは多額の収益調整金を蓄積している。このため、分配金の多寡はファンドの運用成績と関係ないケースがある。資金の外部流出を防ぐという点で分配金の引き下げはむしろ財務的にはプラスといえる。

今後もファンドの分配金引き下げが続く可能性はある。だが、分配金の多寡のみに一喜一憂するのはどうだろう。

総合的な運用成績は悪くない

分配金が支払われた分だけファンドの基準価格は下がるが、過去1年を見ると、分配金を加味した総合的な運用成績(分配金再投資ベースでの騰落率)はマイナスにはなっていない。海外REIT型ファンドのここ数カ月の運用成績は悪くないのだ。

毎月分配型ファンド自体が持つ問題はさておき、既にこの投信を保有している人はひとまず冷静になることも必要ではないだろうか。分配金を加味した運用成績は各投信の月次報告(マンスリーリポート)や販売金融機関のウェブサイトなどで確認できる。参考にしてはいかがだろう。

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし