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「美食世界一」のペルー料理 本場の味、新橋で人気

ペルーの代表料理「セビーチェ」。「アヒ・リモ」と呼ばれる生の赤唐辛子で少しピリ辛に、コリアンダーを加えて香り高くさわやかに仕上げてある

コース料理の一例をいただいてみよう。まずは「真鯛のセビーチェ」。セビーチェは生の魚と紫タマネギをレモン果汁と塩でマリネしたペルーを代表する料理だ。チョクロと呼ばれる白い大粒のとうもろこしと、サツマイモが添えられている。

真鯛は甘みがあり、レモンの酸味ととても合う。筆者は家族の仕事の関係で1年の半分程度をペルーで過ごしているのだが、ペルーで食べるセビーチェよりもうまい。マリネする時間がペルーのよりも短いのだろう、魚もタマネギもフレッシュさが感じられるのだ。

最も有名なスペイン料理、パエリアの影響を感じさせる「アロス・コン・ポジョ」

「アロス・コン・ポジョ」は骨付き鶏モモ肉を使った炊き込みご飯。長粒米を使っており、ペルーで食べる味に近い。鶏肉の皮がパリパリで中がジューシーで、かぶりついて骨までしゃぶりたい味。

モチモチ、フワフワの食感がたまらない「ピカロネス」

デザートは「ピカロネス」という、サツマイモとカボチャが入った揚げドーナッツ。アイスが添えられ、アロガロボという木の豆から作られるアルガロビーナという甘いシロップがかかっている。これは現地ペルーではちょっと油っこくて甘すぎて、筆者は苦手なのだが、こちらは甘みもほどよくあっさりしていて、初めておいしいと感じることができた。

もう一つデザートとして出てきたのが「チリモヤのムース」。チリモヤは白い果肉と濃厚な味が特徴の「森のアイスクリーム」とも呼ばれるフルーツ。その存在を知っている人は「日本でも食べられるの!?」と、知らない人は「こんなおいしいフルーツがあるなんて!」と思うこと請け合いである。酸味のあるパッションフルーツのソースとの相性もバツグンだ。

アンデス地方原産のバンレイシ科のフルーツ、チリモヤをムースに

筆者の家族と同時期にペルーで過ごし、ひと足先に帰国した元駐在員たちがペルー時代をなつかしんで、荒井商店で同窓会を開いていると聞いていたが、その理由がよく分かった気がした。

サーフィンだけでなく、小さいころから釣りをしていて小学校3~4年生ですでに魚をさばいていた荒井さんは「『どの魚がおいしいですか?』とよく聞かれるのですが、どの魚じゃないんです、『いまはどれがおいしいか』なんです」という。そんな言葉や徹底的に客の「食べたい」に応えようとする姿勢からも、荒井さんの料理には海や自然に親しんできたことや孤児院での体験などがみんな生きているんだなぁと感じる。

ところで、ペルー料理が昨今になって急に世界から注目されるようになったキッカケは何なのだろうか。荒井さんによれば「世界のベストレストラン50」で何度も1位に輝いたスペインの伝説のレストラン「エル・ブリ」(「エル・ブジ」とも発音)のシェフ、フェラン・アドリア氏の影響が大きいという。

2011年、世界一予約が取れないといわれた「エル・ブリ」を突然閉店し、次は何を始めるのかと世界じゅうが注目するなか、アドリア氏が翌年に開業したのがペルーと日本のフュージョン(融合)料理の店であった。

ペルー本国でもこうした日系フュージョン料理店は多い。また、最近ではポーションも少なめの、フランス料理を思わせるような美しい盛り付けのモダンペルービアン料理も増えてきている。しかし、荒井さんはオーソドックスなペルーの郷土料理にこだわっているという。

「ペルー人のシェフならそれをやってもいいけど、日本人の僕がやってしまうと、それはペルー料理じゃなくただの創作料理になってしまうと思うんですよね」。そのためペルーから輸入した食材のほかに、日本で手に入らない素材はできるだけ現地の味に近いものを探し出して使っているという。

飛行機に乗らずして行けるペルー料理の旅、一度味わってみてはいかがだろうか。ちょっと予約が取りづらいのが難点ではあるのだが。

(ライター 柏木珠希)


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