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「美食世界一」のペルー料理 本場の味、新橋で人気

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昨年末に発表された「ワールド・トラベル・アワード2017」で「World's Leading Culinary Destination(世界で最も美食を楽しめる国)」部門でペルーがまた最優秀賞に選ばれた。同アワードは世界200以上の国と地域、約79万人といわれる旅行業界の専門家とツーリストが世界の優秀な企業・団体および観光地を選出、表彰するもの。「また」と書いたのは、ペルーがこの賞を受賞するのはこれで6年連続となるからである。

魅力的な旅行先ではあるものの、なにぶんペルーは遠い。日本から見て地球の裏側にある。首都のリマまで飛行機を乗り継いで約1日かかる。しかし、そんな世界で絶賛されるペルー料理を東京でいただけるのが、新橋の「荒井商店」。

「ミシュラン東京」の「ビブグルマン」(5000円以下で食事ができるコストパフォーマンスの高いおすすめレストラン)にも掲載される実力店だ。

オーナーの荒井隆宏さんは四谷の名店「オテル・ドゥ・ミクニ」で修業をしたフレンチ出身のシェフ。ペルー料理のレシピ本を出版するなど、日本におけるペルー料理界の第一人者である。

日本とペルーの関係は深く、いまから約120年前、人手不足で悩むペルーの農園で働くために日本人の移民事業が始まった。日本のバブル期には今度はその子孫である日系二世・三世が日本に出稼ぎに来るようになり、現在でも5万人弱の日系ペルー人が日本に居住しているといわれる。

荒井商店がオープンしたのは2005年。日系ペルー人ではない、日本人の荒井さんが世界で注目されるはるか前にペルー料理に着目したのはとても興味深い。

「地元・横浜のレストランで働いていたとき、近所に自動車メーカーの工場があり、そこに出稼ぎに来ているペルー人と知り合いになったんです。彼が弁当屋をやることになり、仕込みを手伝うことになって、まかないでよくペルー料理を食べていました。米が主食だし、素材を活かす味つけで日本人の口にも合う。唐辛子やじゃがいも、トマトなど馴染みの野菜の多くがペルー原産だということにも興味を持ちました。そのうちに本場ペルーではこれらの食材がどうやって食べられているかを知りたくなって、2003年から1年間ペルーに行くことにしたのです」

日本でまだ誰もやっていないことをやりたいという気持ちもあったという。

「現地のものをできるだけ持ち帰ろうと、大きなバックパックにウエットスーツとパスポート、クレジットカード、カメラ、本くらいの最低限のものだけを詰めていきました。リマに到着してから最初に買ったのはサーフボード。それから包丁を買いました。順番逆ですよね。というか、料理修業なら普通は包丁くらい持っていきますよね」と笑う。

荒井さんは大のサーフィン好き。実はペルーは知る人ぞ知るサーフィン大国で、このこともペルー行きを決めた理由の一つだったとか。

「ペルーの公用語であるスペイン語をしゃべれなかったので、まずはペルー人とルームシェアするところから始めました。そして、彼の紹介で『孤児院の給食のおじさん』をすることに。言葉ができないながらも同じ調理員のおばちゃんにペルー料理について質問攻めにしたり、家庭料理を習ったりしました。ここではレストランの厨房では体験できないことも学びました。同じ『お腹減った』という言葉も我々が言うのと孤児院の子どもたちが言うのでは意味が違うんですよね。『食べるとは?』『生きるとは?』という食の根源を学んだ気がします」

その後は首都リマやアマゾン地域最大の都市イキトスなどのレストランやホテルの厨房に潜りこみ、ペルー料理の腕を磨いた。その合間には珍しい食材や郷土料理を求め、ペルー全土を旅してまわった。

「ペルーは太平洋に面した『コスタ』、アンデス山脈の高地『シエラ』、アマゾン川流域の『セルバ』の3つの気候の違った地域がありますが、それぞれに変わった食材があり、まさに食の宝庫でした。たとえば、コスタでは『ムイムイ』という釣り餌に使うような小さな虫も食べますし、シエラでは『トコシュ』という、ジャガイモのクサヤみたいな発酵食品もありました。ドブみたいな匂いがするんですけど、好きな人にはたまらないようです。セルバでは『パイチェ』という、日本の水族館でも見られる古代魚の『ピラルク』を食べることにも驚きました」

我々にとっておなじみの食材、ジャガイモひとつとってもペルーには3000種類があるとされ、世界のグルメがペルーに注目するのもこの食材の豊富さゆえといわれる。

「ペルーは世界の7割の気候が一つの国に集まっているので、『育たない食材がない』といわれているんです。もともと多様な食材が育つうえに、移民が持ち込んだ食材もそれに適した地域でちゃんと根づいていったんですね。リマの北の沿岸部にあるワウラという町では熊本からの移民が多かったそうで、カキやミカンの木をたくさん見かけました。植物だけでなく、寒流と暖流が出合うペルー近海は海産物も豊富なんです」

こうして出合った食材はオリジナルのペルー食材事典としてまとめていった。また、豊富な食材に加え、さまざまな民族の影響を受けているのもペルー料理の特徴だ。

「ペルーには15世紀から16世紀にかけて栄えたインカ帝国の進んだ文明がありました。その後、スペインの支配下となり、奴隷として連れて来られたアフリカ人、移民してきた中国人や日本人などによって、さまざまな国の食材や調理法が持ち込まれ、現在のペルー料理が形づくられていったようです」

さて、「荒井商店」ではアラカルトメニューもあるが、夜は予約時に客の好みや予算を聞いてつくるオーダーメードのコース料理がメインである。

「ペルー全土の郷土料理が頭に入っているので、今日はアマゾン料理とか今日はアンデス料理というリクエストにお応えすることもできますし、食べたい食材を言ってもらえばその食材縛りでコースをお出しすることもできます」

だから、同じ値段のコースであっても隣のテーブルとは出てくる料理はまるで違うし、同じテーブルであっても「たとえば、お酒を召し上がる方とそうでない方でメニューや味付けを変えることがある」という。

客のなかには「オレには二度と同じ料理を出してくれるな」というリクエストだけして、オープン以来、週に2回通ってくる常連もいるというから、どれだけ荒井さんの引き出しは多いのだろうか。そして、どれだけペルー料理は奥深く幅広いのだろう。

コース料理の一例をいただいてみよう。まずは「真鯛のセビーチェ」。セビーチェは生の魚と紫タマネギをレモン果汁と塩でマリネしたペルーを代表する料理だ。チョクロと呼ばれる白い大粒のとうもろこしと、サツマイモが添えられている。

真鯛は甘みがあり、レモンの酸味ととても合う。筆者は家族の仕事の関係で1年の半分程度をペルーで過ごしているのだが、ペルーで食べるセビーチェよりもうまい。マリネする時間がペルーのよりも短いのだろう、魚もタマネギもフレッシュさが感じられるのだ。

「アロス・コン・ポジョ」は骨付き鶏モモ肉を使った炊き込みご飯。長粒米を使っており、ペルーで食べる味に近い。鶏肉の皮がパリパリで中がジューシーで、かぶりついて骨までしゃぶりたい味。

デザートは「ピカロネス」という、サツマイモとカボチャが入った揚げドーナッツ。アイスが添えられ、アロガロボという木の豆から作られるアルガロビーナという甘いシロップがかかっている。これは現地ペルーではちょっと油っこくて甘すぎて、筆者は苦手なのだが、こちらは甘みもほどよくあっさりしていて、初めておいしいと感じることができた。

もう一つデザートとして出てきたのが「チリモヤのムース」。チリモヤは白い果肉と濃厚な味が特徴の「森のアイスクリーム」とも呼ばれるフルーツ。その存在を知っている人は「日本でも食べられるの!?」と、知らない人は「こんなおいしいフルーツがあるなんて!」と思うこと請け合いである。酸味のあるパッションフルーツのソースとの相性もバツグンだ。

筆者の家族と同時期にペルーで過ごし、ひと足先に帰国した元駐在員たちがペルー時代をなつかしんで、荒井商店で同窓会を開いていると聞いていたが、その理由がよく分かった気がした。

サーフィンだけでなく、小さいころから釣りをしていて小学校3~4年生ですでに魚をさばいていた荒井さんは「『どの魚がおいしいですか?』とよく聞かれるのですが、どの魚じゃないんです、『いまはどれがおいしいか』なんです」という。そんな言葉や徹底的に客の「食べたい」に応えようとする姿勢からも、荒井さんの料理には海や自然に親しんできたことや孤児院での体験などがみんな生きているんだなぁと感じる。

ところで、ペルー料理が昨今になって急に世界から注目されるようになったキッカケは何なのだろうか。荒井さんによれば「世界のベストレストラン50」で何度も1位に輝いたスペインの伝説のレストラン「エル・ブリ」(「エル・ブジ」とも発音)のシェフ、フェラン・アドリア氏の影響が大きいという。

2011年、世界一予約が取れないといわれた「エル・ブリ」を突然閉店し、次は何を始めるのかと世界じゅうが注目するなか、アドリア氏が翌年に開業したのがペルーと日本のフュージョン(融合)料理の店であった。

ペルー本国でもこうした日系フュージョン料理店は多い。また、最近ではポーションも少なめの、フランス料理を思わせるような美しい盛り付けのモダンペルービアン料理も増えてきている。しかし、荒井さんはオーソドックスなペルーの郷土料理にこだわっているという。

「ペルー人のシェフならそれをやってもいいけど、日本人の僕がやってしまうと、それはペルー料理じゃなくただの創作料理になってしまうと思うんですよね」。そのためペルーから輸入した食材のほかに、日本で手に入らない素材はできるだけ現地の味に近いものを探し出して使っているという。

飛行機に乗らずして行けるペルー料理の旅、一度味わってみてはいかがだろうか。ちょっと予約が取りづらいのが難点ではあるのだが。

(ライター 柏木珠希)

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