最近の風潮では、専業主婦への風当たりが強くなっているようです。現政権は成長戦略の一環として女性活躍社会の実現を重点政策の一つとしています。女性の労働参加を促すため、専業主婦を税制面で優遇する配偶者控除の廃止が政府・与党内で議論されるようになりました。
確かに、経済的にも夫婦共働きの方が家計にとってプラスです。専業主婦の世帯より金銭的には豊かな生活を送れるでしょう。最近話題になっている本のように「専業主婦は生涯年収〇億円を捨てている」というのは一面真実です。
もちろん、人間の生き方には多様性があっていいわけですから、私は専業主婦がよくないと決め付けるつもりはありません。夫婦で話し合った結果、夫が働き、妻は専業主婦というのであれば、それで構わないと思います。
専業主婦をずっと続けるのはもったいない
ただ、人生という観点から考えた場合、生涯にわたって専業主婦でいるのがよいのか、という疑問は残ります。
人生100年時代は今までの発想を根本的に変える必要があります。人生70年の時代なら、会社員は20歳前後で社会に出て60歳で定年を迎え、その後は10年程度セカンドライフを楽しむという生き方でした。ところが、人生100年時代は70歳まで働き続けることが普通になると思います。転職は当たり前となり、生涯にわたって一つの会社にずっといる人は珍しい存在になるでしょう。
しかもリタイア後の人生も20年や30年はあるわけですから、会社員時代に2つの会社に勤務、リタイア後に起業するなど様々なキャリアを経験することも可能となります。誰にとっても人生「二毛作」、場合によっては「三毛作」ということだってあるでしょう。
専業主婦が一つの職業だとすると、ずっと専業主婦を続けるというのは生涯同じ会社で働くのと同じことです。自分の身に置き換えると、「それはいくら何でももったいない」という気持ちになります。
だとすれば、途中で専業主婦を卒業して働いてみるということがあってもよいのではないでしょうか。よく専業主婦の方は「自分は仕事の経験がないから何も特別な能力はない」といいますが、それは明らかに誤解です。そもそも専業主婦は仕事を上から与えられる会社員とは違って、全ての仕事を自分で差配し、自分で段取りを付けながら遂行しなければなりません。
家事をこなすのは有能でなければできぬ
にもかかわらず、いくらその仕事を立派に達成しても、日々家族に感謝されることはありません(何か特別な日には感謝されるかもしれませんが)。そんな日常でも、淡々と自分の業務を遂行していくという、まさにプロフェッショナルな生き方なのです。
主婦には強靱(きょうじん)な精神力と合理的な処理能力で、家事というルーティンワークと子供や家族にまつわる様々なプロジェクトをこなしていく優れた能力が要求されるのです。そんな優秀な能力を持った専業主婦が働きに出てうまくいかないわけがない、と考えるべきです。専業主婦から会社に就職して活躍している人はたくさんいますし、自分でビジネスを立ち上げて成功した人だって私は何人も知っています。
前述しましたが、政府は女性にどんどん働いてもらうように法律や税制などの仕組みを変える方向に動いています。例えば、会社員の妻がパートで働く場合、2017年までは「年収103万円の壁」があり、これを超えると夫の配偶者控除が減らされました。18年からは妻の年収が150万円までなら夫には上限いっぱい38万円の配偶者控除が認められます(夫の年収が1120万円以下の場合)。
働く経験は人生を変えるかもしれない
「〇〇円の壁」にこだわらず、自分が働いて収入を得ることで自分自身の蓄えや将来の年金額を増やすことも考えるべきでしょう。特に女性は男性よりも平均寿命が長いのですから、男性以上に将来のお金のことは用意周到に準備しておく必要があります。
お金の問題だけではありません。生きがいの面でも人生の後半で新しい生き方にチャレンジするのは有意義なことです。私は60歳で起業しましたが、それまでの会社員の人生とは全く違った景色が見えました。専業主婦にとっても働く経験は人生を変える出来事になるかもしれません。女性だからこそ、人生100年時代の新しい生き方をより真剣に考えるべきではないでしょうか。
