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つみたてNISAはノーベル賞級? その賢い仕組み つみたてNISAをマネーハック(2)

2018/1/15

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 今月のテーマは2018年1月からスタートした積み立て型の少額投資非課税制度、いわゆる「つみたてNISA」です。先週はつみたてNISAがなぜ個人投資家にとって画期的な制度なのかを金融機関の営業姿勢にフォーカスしつつ説明しました。今週はさらに具体的に、つみたてNISAが運用の仕組みとしてなぜ優れているのかを紹介したいと思います。

 つみたてNISAはノーベル賞クラスの素晴らしさである、といったら驚かれるかもしれません。しかしながら、ウソではありません。つみたてNISAのコンセプトには「2つのノーベル賞」の考え方が反映されているのです。

■自動積み立ては非合理性からあなたを救う

 1つ目は2017年のノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー氏の行動経済学に関する研究です。行動経済学は人が必ずしも合理的に行動するわけではないことを解き明かす興味深い学問ですが、つみたてNISAはそうした非合理な行動をできるだけ戒め、結果として合理的行動に結びつけられるような仕組みを採用しています。

 それは自動積み立てによる投資を前提としていることです。投資において「売買のタイミング」ほど合理的に行うことが難しいものはありません。株式投資でいえば、そのつど売買注文を出して投資する場合、株価が上がってきたら人は「高すぎる。ちょっと手を出すのはやめて様子をみよう」と考えてしまいがちです。しかし、その後も株価が上がるとすると、今動かないことは買い遅れにつながり非合理的なのですが、なかなかそう判断することはできません。

 逆に「今は下がっているから投資はやめておこう」という人もいます。これもその後に株価が底を打って反発するとすると、むしろ値下がり時期は投資の好機なのですが、実際にはなかなか手が出せません。

 「投資の自動化」はそうした「感情の迷い」による非合理な行動からあなたを救う仕組みの一つです。株価が上がったり、下がったりすることはむしろ好都合です。株価が安いときに売らずに、むしろ買い続けることは心理的には難しいのですが、積み立て投資を自動的に行えば難しくありません。長い目で見て市場が回復したときには大きな利回りを獲得することができるはずです。

■分散投資は大きく負けるリスクを抑える

 2つ目は1990年のノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツ氏やウィリアム・シャープ氏らの分散投資に関する理論です。

 分散投資理論を一言でいうと、複数の資産を組み合わせて保有することは、資産運用において有効ということです。私たちはマーケットを完全に予測することが不可能であるにもかかわらず、特定の投資対象や銘柄に資金を過度に集中させてしまいます。結果として集中して投資した対象が値下がりすると大きな損失を被ります。これに対し、複数の資産への分散投資は大きく負けるリスクを抑えることができます。

 分散投資は国の年金や企業年金の運用方針の基本的な理論となっていますし、人工知能(AI)などを資産運用に生かす「ロボアドバイザー」サービスのほとんども、分散投資の理論に基づいています。

 つみたてNISAにおいては分散投資はとても容易です。運用対象として選ばれた投資信託の多くは日経平均株価などの指数に連動するインデックス型の商品ですが、国内外の株式や債券に分散投資するバランス型ファンドを保有するだけで、世界の資産への投資が実現します。普通の人ほど、分散投資が効率的な運用を実現する方法となるはずです。金融庁の試算でも長期の積み立て投資をすれば元本割れの可能性は低くなる傾向があるとしています。

■こだわるなら株式投資の割合が高い商品を

 つまり、つみたてNISAの制度を用いて、私たちは「ノーベル賞2つ分」の運用を簡単に実践することができます。実に賢い仕組みではないでしょうか。

 税制優遇措置のあるつみたてNISAでは、年40万円が投資上限ですが、積み立て投資の枠としては十分でしょう。最初は月5000~1万円でも構わないと思います。

 前述したように、運用商品には国内外の資産に分散投資する投資信託を選ぶといいでしょう。少しこだわるなら、各資産クラスで均等に投資するものより、株式投資の割合が高いものの方がお勧めです(分散投資の理論でもその方が高い利回りが期待できます)。つみたてNISAの活用をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはIT(情報技術)スキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔
 AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に『誰でもできる 確定拠出年金投資術』(ポプラ新書)など。http://financialwisdom.jp

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