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ウミガメの99%がメスに! 豪で深刻、海水温の上昇

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ナショナルジオグラフィック日本版

オーストラリア北東部のグレート・バリア・リーフは、太平洋で最大かつ最も重要なアオウミガメの繁殖地だ。ウミガメはこの餌場で海藻を食べて何年も過ごし、成長すると繁殖地まで泳いで行って、交尾し産卵する。そのうちの、どれがメスでどれがオスなのだろうか。それを調べた驚くべき研究結果が、2018年1月8日付の生物学専門誌「Current Biology」に発表された。

ウミガメの性別を見た目で判断するのは難しい。そこで研究者が考えついたのは、ボートに乗って泳ぐウミガメを追いかけ、海に飛び込んで甲羅をつかまえるという作戦だ。そしてそのままウミガメをやさしく浜へと誘導する。陸に上がってから、DNAと血液サンプルを採取し、さらに腹腔鏡を使って体内の生殖腺を調べる。

ウミガメの性は、卵にいるときの温度で決まる。温度が高くなればメスが増えるため、気候変動によって気温や海水温が上昇している昨今、メスの方がわずかに多いだろうと、今回の研究を行った科学者たちは予想していた。ところが実際には、その予想をはるかに上回り、少なくとも116対1の比率でメスの数が圧倒的に勝っていたことが明らかになった。

「いくら何でも極端すぎます」。米国ハワイ州にある海洋大気局(NOAA)IRCに所属するウミガメ専門家のカムリン・アレン氏は言う。「ほんの一握りのオスに対してメスが数百頭です。ショックでした」

世界各地で起こっている海水温の上昇によって、ウミガメのメス化が進んでいるということは以前から懸念されてきたが、アレン氏らによる研究はこれまでのものよりも詳しく、問題の深刻さを浮き彫りにしている。またウミガメ以外にも、アリゲーターやイグアナ、一部の魚類など、気温や水温で性が決定する他の生物へのリスクはどうなのかという新たな疑問も湧く。

予想をはるかに超える事態

オーストラリア東部のアオウミガメは、体重が225キロに達し、ハート形をした甲羅の最大長は120センチを超えることもある。主な産卵場所は、グレート・バリア・リーフ南部のブリスベン沖に密集している小島か、またはそこから1200キロほど北にあるレイン島の2カ所に限られている。ふ化した子ガメは珊瑚海の浅い海域で過ごし、四半世紀ほど経過すると、いずれかの繁殖地へ戻って恋の相手を探す。その後は、数十年の間は繰り返し同じ繁殖地へ戻ってくる。

遺伝子検査を行えば、餌場にいるあらゆる年齢のウミガメの生まれた場所を突き止めることができる。だが、これだけでは肝心の性別まではわからない。今回の研究論文の筆頭著者で、米カリフォルニア州ラホヤにあるNOAA南西漁業科学センター研究員であるマイケル・ジェンセン氏が、何か良い方法はないかと思案していた頃に、メキシコのウミガメ会議でアレン氏に出会った。

コアラが専門のアレン氏は、男性ホルモンのレベルを使ってコアラの妊娠を追跡する研究を行ったことがある。この経験から、ホルモンレベルを基に海洋生物の性を調べる方法を編み出した。これなら、必要なのは少量の血液のみだ。

他の研究者の助けも借りて、両氏はウミガメの採血に成功した。また、さらに正確さを期すために、一部の個体に腹腔鏡検査を実施した。こうして得られた結果を繁殖地の気温データと比較すると、衝撃的な事実が判明した。

少なくとも過去20年間、レイン島ではほとんどメスのウミガメしか生まれていないらしいというのだ。これは、決して小さな島の話では済まされない。東京ドーム7個分に満たない面積32万平方メートルのレイン島と周囲のサンゴ礁は、世界最大のアオウミガメ繁殖地の一つであり、20万頭以上のウミガメが産卵にやってくる。ピーク時には、一度に1万8000頭のメスが集まることもある。

他にも、研究対象となったウミガメのだいたいの推定年齢から、もう一つ判明したことがある。海水温の上昇でサンゴの白化現象が深刻化しているグレート・バリア・リーフ北部で、オスに対するメスの比率が年を追うごとに拡大しているという事実だ。1970~80年代にも既にメスの方が多かったが、その比率はまだ6対1だった。

一方、海水温の上昇がそれほど激しくなく、サンゴの健康状態が良い南の浜では、子ガメの性比率が今でも2対1に留まっている。

「海水温の低い南ではまだオスが生まれていますが、暖かい北ではほとんどメスしか生まれていません」と、英エクセター大学で保全科学教授を務めるウミガメ専門家のブレンダン・ゴッドリー氏は言う。「この結果から、気候変動が野生生物の様々な面を変化させていることがよくわかります」

では、この現象はどれほど世界に広がっており、どれほど重要な意味を持つのだろうか。今のところ、その答えは誰にもわからない。

一世代の間に急激に変化する海水温

ウミガメのオスは、通常複数のメスと交尾し、また交尾の頻度もメスより高いため、メスの数がわずかに多い方が釣り合いが取れるのかもしれない。世界75カ所のウミガメ繁殖地を調べた最近のある調査では、メスとオスの比率がおおよそ3対1であった。100年前からメスの方が多かったという個体群もある。だが問題は、それが今どこまで変化しているのか、そしてどこまで変化すれば危険なのかということだ。

ウミガメはおよそ1億年前から存在し、その間に地球の気温は上下を繰り返してきた。さらに、捕獲や密猟、汚染、病気、開発、生息地の消失、漁業による混獲などによって数を減らし続けた何十年という苦難の時代を経て、このところようやく世界各地で多くの個体群が回復の兆しを見せている。

だがジェンセン氏は、「気温の変化は驚くほど激しくなっています」と懸念する。「進化とは、何世代もかけて環境に適応していく現象です。50年以上も生きるウミガメにはそれだけ長い時間が必要だというのに、今は一世代の間に環境が激変しているのです」

レイン島だけを見ても、海面上昇で巣に海水が浸入して卵が窒息したり、海岸の浸食で小さな崖ができ、転落したウミガメが裏返ったまま自力で起き上がれずに死んでしまったりする事故が増えている。オーストラリア政府は巨額の予算をつぎ込んで、ウミガメがすみやすいよう島の環境回復に取り組んでいる。

グアム、ハワイ、サイパンでも

世界には7種のウミガメ(アオウミガメ、アカウミガメ、オサガメ、タイマイ、ヒラタウミガメ、ヒメウミガメ、ケンプヒメウミガメ)が生息しているが、その全てにおいて、メスとオスの比率が気候変動の影響を受けるだろうと、科学者は少なくとも35年前から予想してきた。卵は気温の変化に極めて敏感で、わずか数度上昇しただけで、オスが1匹も生まれない事態も起こりうる。そうなれば、個体群が全滅する危険性がある。もっと悪いことに、気温が上がりすぎれば、巣の中で文字通りゆで卵になってしまうことすらある。

過去の研究では、過剰な性の偏りは21世紀後半になるまで脅威にはならないだろうという意見が大半で、現実に今何が起こっているのかについての研究はほとんどされてこなかった。2年前に、米カリフォルニア州サンディエゴに生息するアオウミガメの小集団を調査したアレン氏は、65%がメスだったことを突き止めたが、若いアオウミガメだけに限ってみれば、メスの割合は78%にまで増えていた。また、コスタリカのオサガメ、米フロリダや西アフリカなどのアカウミガメにも、メスへの偏りが見られた。しかし、今回のジェンセン氏とアレン氏の研究ほど大規模な個体群を調査した研究はない。

とはいえ、オスの数がどこまで減少すれば危険と言えるのかを判断するのはやはり難しい。答えは、種や地域によって異なる。性を決定する巣の温度も、それぞれの地域の要因に左右される。たとえば、西インド洋の英領チャゴス諸島では、砂の温度を下げる激しい雨や、海辺に生える木々の木陰、そして、そうした海辺からあまり離れられない狭い砂浜など、いくつかの要因が重なってタイマイの性比が健全なレベルに保たれている。逆にカリブ海の島では、森林伐採で砂浜に日陰がなくなり、オスが減少してウミガメが危機にさらされていると科学者は警告している。

アレン氏とジェンセン氏は、引き続き別の海域でも、同様の方法でウミガメの調査を行う予定だ。既に、グアム、ハワイ、サイパンでサンプルを集めている。

「グレート・バリア・リーフの北部は、世界最大のウミガメの個体群がいる場所の一つです。既に数が著しく低下している他の個体群にこの問題を当てはめてみた時のことを想像すると、空恐ろしい思いがします」と、アレン氏は懸念している。

(文 Craig Welch、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2018年1月10日付]

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