ウミガメの99%がメスに! 豪で深刻、海水温の上昇

日経ナショナル ジオグラフィック社

2018/1/20

遺伝子検査を行えば、餌場にいるあらゆる年齢のウミガメの生まれた場所を突き止めることができる。だが、これだけでは肝心の性別まではわからない。今回の研究論文の筆頭著者で、米カリフォルニア州ラホヤにあるNOAA南西漁業科学センター研究員であるマイケル・ジェンセン氏が、何か良い方法はないかと思案していた頃に、メキシコのウミガメ会議でアレン氏に出会った。

コアラが専門のアレン氏は、男性ホルモンのレベルを使ってコアラの妊娠を追跡する研究を行ったことがある。この経験から、ホルモンレベルを基に海洋生物の性を調べる方法を編み出した。これなら、必要なのは少量の血液のみだ。

他の研究者の助けも借りて、両氏はウミガメの採血に成功した。また、さらに正確さを期すために、一部の個体に腹腔鏡検査を実施した。こうして得られた結果を繁殖地の気温データと比較すると、衝撃的な事実が判明した。

海に帰るアオウミガメの赤ちゃん(Photograph by Norbert Wu, Minden Pictures, National Geographic Creative)

少なくとも過去20年間、レイン島ではほとんどメスのウミガメしか生まれていないらしいというのだ。これは、決して小さな島の話では済まされない。東京ドーム7個分に満たない面積32万平方メートルのレイン島と周囲のサンゴ礁は、世界最大のアオウミガメ繁殖地の一つであり、20万頭以上のウミガメが産卵にやってくる。ピーク時には、一度に1万8000頭のメスが集まることもある。

他にも、研究対象となったウミガメのだいたいの推定年齢から、もう一つ判明したことがある。海水温の上昇でサンゴの白化現象が深刻化しているグレート・バリア・リーフ北部で、オスに対するメスの比率が年を追うごとに拡大しているという事実だ。1970~80年代にも既にメスの方が多かったが、その比率はまだ6対1だった。

一方、海水温の上昇がそれほど激しくなく、サンゴの健康状態が良い南の浜では、子ガメの性比率が今でも2対1に留まっている。

「海水温の低い南ではまだオスが生まれていますが、暖かい北ではほとんどメスしか生まれていません」と、英エクセター大学で保全科学教授を務めるウミガメ専門家のブレンダン・ゴッドリー氏は言う。「この結果から、気候変動が野生生物の様々な面を変化させていることがよくわかります」

では、この現象はどれほど世界に広がっており、どれほど重要な意味を持つのだろうか。今のところ、その答えは誰にもわからない。

一世代の間に急激に変化する海水温

ウミガメのオスは、通常複数のメスと交尾し、また交尾の頻度もメスより高いため、メスの数がわずかに多い方が釣り合いが取れるのかもしれない。世界75カ所のウミガメ繁殖地を調べた最近のある調査では、メスとオスの比率がおおよそ3対1であった。100年前からメスの方が多かったという個体群もある。だが問題は、それが今どこまで変化しているのか、そしてどこまで変化すれば危険なのかということだ。

ウミガメはおよそ1億年前から存在し、その間に地球の気温は上下を繰り返してきた。さらに、捕獲や密猟、汚染、病気、開発、生息地の消失、漁業による混獲などによって数を減らし続けた何十年という苦難の時代を経て、このところようやく世界各地で多くの個体群が回復の兆しを見せている。

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