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シチューといえば白か茶色か ご飯にかけて食べますか

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「今日は冷えるからシチューとか食べたいな」

新婚当時、出がけにオットにそう言われた私はいそいそとシチューを作って帰りを待っていた。富士には月見草がよく似合うように、シチューには新婚がよく似合う。かわいいからと選んだ煮込み鍋に、かわいいオタマ、かわいいオーブンミトン。ふつふつとほほ笑むがごとく煮えるシチューは、冬の夜にはたまらないごちそうだ。

ところが帰宅するなり鍋を覗き込んだオットが、わあわあ騒ぎ始めた。

オット「えー! 今夜シチューじゃないんだ! ショック!」

「え、何言ってるの? これシチューじゃん。シチュー以外の何物でもないじゃん。じっくりコトコト煮込んだシチューじゃん!」

オット「違う、違うよ。俺は茶色いシチューが食べたかったの。色が黒くて、こってりしてて、肉がいっぱいで。そして2杯目にお代わりしたらご飯にかけて食べたかったの。白いシチューじゃダメ。全然違うよ」

そう、オットにとって、ただ「シチュー」といえばそれは茶色のビーフシチューのことだったのだ。もちろんビーフだけでなく、牛タンでもオックステイルでも豚肉でもいいのだが、茶色くて、ドーンと肉があって、がっつり食べ応えのある汁物。それが彼にとってのシチューだったのだ。2杯目はご飯にかけ、ハヤシライスのように食べきるところまでが、彼にとっての「正しいシチュー生活」だったのだ。

しかしその夜、私が作ったのは白いクリームシチューだった。

もちろん私だって、茶色のシチューは好きだ。大好きだ。でも、ただ「シチュー」と言われたら、1も2もなく白いクリームシチューを作るだろう。チキンは王道、ミートボールも捨てがたい。ホタテやエビ、アサリなどシーフードとの相性も抜群。房総にいたころは、サザエのクリームシチューを作ったことさえある。「北海道」という文字を見ただけで、白くて熱々とろりのシチューを連想してしまうくらいには、白いシチューに夢中な人生だった。

さらにオットは続けた。

オット「それにクリームシチューじゃ、晩ご飯にならないじゃん」

「なるよ! 汁をひとすすりでワインをグビ! 具を食べてはワインをグビ! まごうかたなく大人の夜ご飯だよ!」

オット「ご飯にかけられないものは、晩ご飯にならない!」

「そもそもシチューはご飯にかけないよ」

オット「かけるよ! それでも地球が回ってるのと同じくらい当たり前にかけるよ!」

この夜のいきさつはどうなったか、もう覚えてはいない。だが「人によってシチューの定義が違う」ということは、しっかり心に刻むことができた。あれから今に至るまで、オットが「シチュー」と言ったなら「はいはい、茶色のあれね。こってりね」とちゃんとヒモ付けできている。もう間違えない。

このシチュー問題、論点はふたつだ。

シチューの色は何色か。ご飯にかけて食べるか否か。

そもそもシチューとは何だろう。

辞書によると「肉、ジャガイモ、タマネギなどをスープで長く煮込んだ洋風の料理」とある。英語の「stew」は「食物をゆっくりとろ火で煮る、シチューにする」という意味だ。ということは、じっくりコトコト煮たものであれば、色は何色であろうがシチューを名乗っていい、ということになる。

先ほどは白か茶色かの二択問題のように扱ったが、実は「シチューの色問題」には大きな第三勢力「赤」が存在する。トマト、ビーツ、パプリカなどによる赤い煮込みものは、存在感を増しこそすれ無くなるということはない。インスタ映えを考慮すれば、今後イチバンの成長株と言ってもいい色だ。

さらに細かいことを言えば、色のバリエーションはもっと多い。世界各地の料理店が急増している東京では「豆由来の黄色とも緑ともつかない微妙な色」とか「白いスピッツが砂遊びしたあとのような灰色がかった不透明」とか「どピンク」とか、さまざまな色のシチューが食べられる。しかし今回は家庭料理と洋食かいわいの、身近なカテゴリーでのシチューのありようを考えてみたい。

色は何色だろうが、シチューを名乗っていいことはわかった。ではシチューをシチューたらしめているものは何だろう。

シチューの定義を考えていると、シチューとスープとの境目は何か?という問題にぶつかる。実際、ここはかなりのグレーゾーンだ。大ざっぱにいうと「とろみがあって、具がごろごろと大きいものがシチュー」という認識が多勢かと思われるが、世の中にはとろみのあるスープも、具が小さいシチューもある。ポトフはシチューなのか、スープなのか。クラムチャウダーはどちらだ。本当に曖昧だ。

小麦粉をいためた「ルー」でとろみをつけたものがシチュー、という分け方もある。クラシカルなレシピでは小麦粉を色がつかないようにいためて使うのが、白いシチュー。丁寧に茶色くなるまでいためて使うのが、茶色シチューとなる。とろみがつくことによる保温性もさることながら、油でいためた小麦粉の香ばしさがおいしさに一役買う。

だがルーを使わずとも、肉に少量はたいた小麦粉が軽やかなとろみを生み出すレシピもある。具に使った野菜が自然に煮崩れてとろみとなるシチューもある。もっと直接的に、パンをちぎり入れ煮溶かしたり、コメをひとつかみ入れたり、というとろみのつけ方もある。ルーを使うものだけがシチューというのは、少々決めつけがすぎるかもしれない。

とはいえ、家庭で作るときには市販のルーを買う人が圧倒的だろう。ありものの野菜と肉でも、ルーを使えばまたたくまに「いつものあの味」が再現できる。同じ材料で、白と茶色を作り分けることすら自由自在だ。ハウス食品が粉末状のルー「ハウスシチューミクス」を出したのが、昭和41年。そうなると、少なくともこの50年に関して、そして「ニッポンの家シチュー」に関していえば「ルーでとろみをつけたものがシチュー」が正解と思われる。

さらに「ハウスシチューミクス」の開発担当者は当時、ご飯のおかずになるシチューを目指したという。そうなると、これまたこの50年のニッポンの家シチューに関しては「シチューはご飯のおかずである」が正解となり、ご飯にかけて食べたいというオットは、間違っていなかったこととなる。ご飯にかける派のみなさんも、安心してほしい。

私には、大阪で大好きな店がある。メニューはたったふたつ。「クリームシチューとバターライス」そして「ボルシチとバターライス」だけ。常連はクリームシチューのセットを「白」、ボルシチセットを「赤」と呼び、席に着くや否や「俺、白」「こっちは赤ふたつ」などと注文する。最初は大阪支社の偉い人に「うまい店がある」と連れて行かれたものだ。

実は当時、私はシチューでご飯が食べられなかった。なので内心「他にメニューはないのか。これじゃ逃げ場がないじゃないか」などと思ったものだ。が、食べてみるとバターライスはうまいしシチューもうまい。両方合わせるともっとうまい。ここのシチューはまさにご飯のおかずだった。赤も白も、どちらもご飯とめちゃくちゃ合ったのだ。

そういえば同じ会社の同僚Eちゃんは、しばしば「レトルトシチューとおにぎり」というお弁当を持ってきていた。給湯室でレトルトを温め、シチューとおにぎりを食すのだ。これも当時は「変な組み合わせ」と思っていたが、今ならわかる。わかるどころか、今なら積極的にまねするだろう。そう、今の私はもう、シチューでご飯が食べられる体になっているのである。

ただ「シチューといえば白いクリームシチュー」という考えだけは変わらない。最後にツイッターで尋ねた結果をお見せしよう。

他の追随を許さぬ、白一色。「今夜はシチューだと言われて茶色だと残念そうにされるほどホワイト一択の我が家」という、うちと正反対の家庭もあった。どうだオットよ。シチューは白がマジョリティーなのだよ。

(食ライター じろまるいずみ)

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