「龍角散」復活 左遷された女性開発者が原動力にヒットの原点 龍角散(上)

「ここで辞めたら相手の思うツボだし、きっと自分にも非があるから、こんな風に左遷されてしまうんだろうと思いました。どうして自分は周囲とあつれきを起こしてしまうのかの理由がわからないうちは、どこへ行ってもまた同じことが起きる。いい機会だから、自分には何が欠けていて、どこに欠点があるのか、を徹底的に考えてみようと思ったのです」

服薬補助ゼリーは数々の賞を受けている

考えた末、自分には製剤の知識が足りないと気がつき、土日を使って名古屋市の大学院に通い始めた。大学院に通っていることは、会社には内緒だった。知られたら解雇されると思ったからだ。実際、大学院通いを疑った古参役員が彼女の師事している教授を訪ねてくることもあったが、事情を知っていた教授や学生がうまく隠し通してくれた。

平日は午後5時半に退社すると、毎日、英語学校にも通った。日本語で論文を書くと、会社にわかってしまうので、改めて英語を勉強し直す必要があったのだ。

「転職してよかった」と今は思う

福居氏が左遷されていた2年の間に、藤井社長は体制を立て直し、改革に後ろ向きだった古参の役員を一掃した。これを機に、福居氏も工場から本社へと呼び戻された。

大学院に通いながら英語で論文を5本書き上げた福居氏は、2008年に博士号を取得。開発したゼリーのシリーズは定番商品に育ち、16年は年間約20億円(出荷数をメーカー希望小売価格に換算した数字)を売り上げる収益の柱に。韓国・台湾でのテスト販売も終了。米国の大学病院で試験導入が始まるなど、海外での販売計画も進行中だ。

一連の服薬補助ゼリー開発で、福居氏は日本薬剤学会が主催する「旭化成製剤学奨励賞(現・旭化成創剤研究奨励賞)」など、合計6つの賞も受賞している。10年からは執行役員として勤務している福居氏に「龍角散に転職したことを今、どう思っているのか」と尋ねると、こんな言葉が返ってきた。

「よかったですよ。ほかの会社に行っていたら、こんな開発をさせてはもらえなかったと思いますから。段々と社員の力もついてきていますし、今は執行役員としてそれをひとつにまとめていく仕事に取り組んでいこうと思っています」

17年3月末現在で龍角散の年間売上高は、95年当時の3倍を超える約151億円にまで拡大している。借金も完済し、倒産寸前だった会社は今ではすっかり元気になった。

(ライター 曲沼美恵)

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