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ロシアが個人参加の五輪は? 勝っても国旗や国歌なし 国・組織ぐるみのドーピングに厳罰、選手のユニホームも別

2018/1/20 日本経済新聞 夕刊

からすけ いよいよ2月から韓国で平昌(ピョンチャン)オリンピック・パラリンピックが始まるね。でも、強い選手がたくさんいるロシアが五輪には参加できないんだよね?
イチ子お姉さん 薬で体を強くする違反が広くあったと判断されて国としては参加できないの。ライバルが減るとメダルの価値が下がるという見方もあるのよ。

■国の不正がわかったよ

からすけ 薬とかで体を強くすることを「ドーピング」(キーワード)って言うんだよね。

<キーワード>
ドーピング 薬を使って筋肉を増強するなど競技能力を不正に高めること。主に尿検査で専門機関が禁止薬物を分析する。違反が見つかればメダルの取り消しや出場停止などの重い処分になる。選手の健康も害するため、世界反ドーピング機関(WADA)が厳しく取り締まっている。
個人参加 国内の競技組織がない場合などIOCが認めれば個人資格で参加できる。シドニー五輪のテコンドー銅メダリストの岡本依子選手は、国内団体の対立で2004年のアテネ五輪に個人参加した。五輪憲章には「オリンピックは選手間の競争で国家間の競争ではない」と書いてある。

イチ子 そう。筋肉増強剤などの使ってはいけない薬物を体に入れることで、速く走ったり、疲れにくい体に鍛(きた)えたりしてメダルを取りやすくするいけない行為(い)ね。例えば、学校の試験でもスポーツの試合でも、みんなが同じ条件で競争しないとフェア、つまり公平ではないでしょ。ドーピングは競争する前に自分だけ有利な条件を身につける行為だから、五輪とか国際的なスポーツの競技では特に厳しく禁止されているの。

からすけ ロシアはドーピングを国全体でやってたの?

イチ子 ドーピングに詳しい専門組織が調べたら、スポーツの団体やコーチなども含めて国や組織ぐるみでドーピングをやっていることがわかったのね。それで、国際オリンピック委員会(IOC)が2017年12月に、ロシアの国としての参加を認めないことにしたのよ。

からすけ じゃあ、ロシアの選手は平昌五輪には一人も出られないんだ。

イチ子 そうではないの。ロシアという国の選手としては出場できないんだけど、個人参加(キーワード)できる道があるの。ロシアの選手全員がドーピングしていたわけではないから、過去にドーピングの違反がないことや大会前に検査を受けることを条件に潔白を証明できた選手は、IOCが個人としての参加を認めたの。

からすけ えっ、五輪って国と国の競争でしょ。個人でも参加できるの。

イチ子 原則は国の選手団として参加するんだけど、オリンピックの考え方や基本的なルールを定めた五輪憲章は特例として個人参加を認めているの。その代わり、個人参加の選手がメダルを取っても、表彰式で国旗を掲(かか)げたり国歌を流したりはしないのよ。ユニホームもロシアを代表するのとは別のものを着ないといけないんだって。

からすけ そもそも、ドーピングの違反が見つかるとどうなるの。メダルを取った後にわかることもあるんでしょ。

イチ子 メダルを取った選手ならメダルが取り上げられて、次点の選手が繰(く)り上がってメダリストになるの。世界新記録だったとしても、その記録は消されてしまうのよ。

からすけ たしか4年前にあった冬のソチ五輪はロシアであったんだよね。あの時もドーピングって騒(さわ)いでいたよね。

イチ子 そうだったね。地元で開催したロシアはソチ五輪で金メダル13個、メダル全部では国としてはトップの33個も取ったのね。でもその後の再検査で違反者が何十人も見つかって、金・銀・銅メダルがいくつも剥奪(はくだつ)されると決まったの。

からすけ 違反はロシアだけではないんでしょ。

イチ子 例えば、1988年に韓国で開かれたソウル五輪の時、カナダのベン・ジョンソンという選手が陸上男子100メートルで当時の世界新記録で金メダルを取ったことがあったの。でも、検査で禁止薬物が見つかってメダルも記録も取り消されたの。2000年のシドニー五輪で100メートルなど3つの金メダルと2つの銀メダルを取ったアメリカの陸上女子のマリオン・ジョーンズ選手も、後になって違反が見つかってメダルと全ての記録が取り消しになったのよ。

■「メダルの価値が下がる」の声も

からすけ 平昌五輪では強いロシアの選手が参加しなくなるとメダルは取りやすくなるでしょ。それは日本の選手にとっていいことなんじゃないの。

イチ子 そうとも言えないと思うわ。確かにメダルは取りやすくなるだろうけど、ライバルがいなかったから取れたんだ、って言う人もいるでしょ。メダルの価値が低くなってしまうのね。強い選手と競い合って初めて勝つことの喜びもあるの。からすけだって、運動会で足の速い友達が休んでくれたおかげで一番になれたとしても、あまりうれしくないでしょ。

からすけ なるほどね。強い選手が参加しないと、世界一を争う五輪の競技自体がちょっとしらけちゃうんだね。

イチ子 そう。旧ソ連時代のモスクワ五輪やその次のロサンゼルス五輪では政治的な対立でお互いに参加しない国がたくさん出て、スポーツ大会としての価値が下がってしまったのね。それだと、頑張る選手だけでなく、見る私たちにとっても、スポーツとしての興味や楽しさが減っちゃうでしょ。

からすけ そうか。ドーピング無しで、正々堂々と戦う試合が楽しめる五輪になるといいね。

■自己管理 選手も必要

渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生の話 日本の中高生が参加する部活動は世界でも珍しい制度です。試合や発表を目標にして練習に励(はげ)みますが、個人はどこに目的を置くべきでしょうか。
ドーピング問題の根底には、競技に勝つことだけを目的として、手段を選ばないという考えがあったはずです。副作用の危険性がある筋肉増強剤などを、個人やチーム、国家単位で服用していたならば、重いペナルティーが必要です。
2015年に日本に設置されたスポーツ庁は、五輪やワールドカップ(W杯)など国際大会支援やスポーツ界の透(とう)明性、公平・公正性の向上のため、ドーピング防止活動にも取り組んでいます。ただ、ドーピングは良くないと認識していても、知識不足でうっかり服用するケースもあるようです。運動部の選手なら、サプリメント成分について薬剤師から専門的な講習を受けるなど、自己管理も必要なことですね。

[日本経済新聞夕刊2018年1月6日付]

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