実家の家や土地、最大の「遺品」に 放置で空き家化も終活見聞録(12)

有楽町で開かれた「学べる終活テラス」。セミナーのほか相談窓口も設けられた

17年秋に東京・有楽町で「学べる終活テラス」と題したイベントが開かれた。そこで「早めが肝心! 終活不動産のすすめ」というテーマのセミナーがあり、不動産仲介を手掛ける野村不動産アーバンネット(東京・新宿)の伊東秀二氏が講師を務めた。「エンディングノートを書いたり、お墓やお葬式の準備をしたりするだけが終活ではない。資産の半分を占める不動産をどうするか考えることが重要」と話す伊東氏は、不動産の終活のポイントとして、(1)保有する不動産をしっかり把握する (2)子孫に残す財産とそうでない財産の見極めをする (3)不必要な不動産は早めに処分換金する――などを挙げた。

(1)については、自分の不動産の地番を確認し境界線の画定をしたうえで、売却した際の価格や相続税がいくらかかるのかまず知ることが重要とし、(2)では親の不動産を欲しがらない子どもは意外に多いと話した。そして(3)については、売れる土地の範囲は徐々に縮小しているとし、「早いうちに気付いてほしい」と説明した。

価格維持・上昇は全体の15%弱

不動産コンサルティングを手掛けるさくら事務所(東京・渋谷)の長嶋修会長は、「不動産市場は『価格維持・上昇』『ダラダラ下落』『無価値もしくはマイナス価値』に三極化している。引き継いだ不動産がどれに当てはまるかでどうするか決めるのがよい」と指摘する。価格維持・上昇は全体の15%弱。残りについては「経済合理性だけで考えるならば早めに売ってしまうのがよい」という。

空き家が増えている。売却するのも再利用するのも難しい問題だ

とはいえ、前述の読者の声のように、売りたくてもなかなか買い手が現れない場合もある。長嶋会長は「不動産仲介会社に広く売り出してもらい個人に買ってもらう」ことや「空き家バンクに登録する」ことを選択肢に挙げた。中には解体費用を渡して、周辺の住人に引き取ってもらう事例もあるという。

売却ではなく、再利用で貸すという場合もある。ただ、家が古ければリフォームが必要になる。駐車場にするという手もあるが、更地にすれば固定資産税が高くなる。これらはつくったはいいが借り手がいなければ無駄な支出になってしまう。周辺のニーズを把握したうえで収益性の検討が欠かせない。

ワンポイント:家の解体にも多額の費用

総務省の調査(13年)では全国の空き家数は約820万戸で、総住宅数の13.5%を占める。今や7軒に1軒が空き家という計算だ。今後も増加する見通しで、この空き家率が33年には30%を超えるという一部のシンクタンクの予想もある。

家が立っている土地は更地に比べて固定資産税が安くなるため、引き継いだ家をそのままにしておけば税金を低く抑えることができる。これが空き家増加の一因になっていたことから、15年に施行されたのが「空き家対策特別措置法」だ。倒壊の恐れがあったり景観上問題があったりする空き家については、市町村が「特定空き家」に指定して所有者に修繕や解体を指導・命令できるようになった。

総務省「住宅・土地統計調査」

指定されると土地の固定資産税が更地に比べて6分の1になる措置がなくなる。これまで市町村でも手を出せなかった私有不動産を指導できるようになったことは意味があるが、「該当するのは役所に多数のクレームが寄せられるような迷惑空き家。全部の空き家が対象ではないので空き家対策としての効果は小さい」とさくら事務所の長嶋会長は指摘する。

家を解体するにもかなりの費用がかかる。解体費用は1坪(3.3平方メートル)当たり5万~7万円といわれており、30坪の家ならば150万~210万円かかる計算だ。住宅密集地などで重機が利用できなければさらに金額はかさむ。空き家は半年も放置すると傷んでしまうという。住む人がいなければ換気も悪くなり、故障や不具合に気付きにくいので劣化が進む。利用するにしても売るにしても早く動き出すことが重要だ。

(マネー報道部 土井誠司)

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