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「東大は選択肢の一つ」 新興校の渋幕、なぜ急伸 渋谷教育学園幕張中学校・高等学校の田村哲夫校長に聞く

2018/1/28

進学校なのに、なぜ芸術分野の教育にも積極的なのか。田村校長は「アートをしっかりやらないと、未来のリーダーにはなれません。欧米では芸術をよく理解しているリーダーが少なくないのです。リベラル・アーツ(教養)の終着の科目は音楽でしょう」と語る。

理数系の施設はもっと充実している。理科棟には化学、生物、物理地学のフロアがあり、それぞれ2つの実験室がある。渋幕は、15年には「科学の甲子園」全国大会で優勝した。化学の担当教員の岩田久道先生は、「実験室には大学も驚くような設備もあります。有害気体を排出するドラフトも備えており、健康面にも留意しています。意外とこんな設備は大学にもないんですよ」という。コンピューター室などIT(情報技術)関連の設備も充実している。

渋幕はコンピューター室など施設が充実している=渋谷教育学園提供

図書館には6万冊の蔵書があり、貴重な「東洋文庫」もある。教養を磨くツールが盛りだくさんだ。その仕上げとして、高1~2年生の生徒全員が1年以上を費やして「自調自考論文」を書く。テーマは自然科学から社会科学、国際関係、芸術など自由だ。悪戦苦闘するうちに論述力が磨かれる。

グラウンドでは生徒たちが様々な競技に汗を流している。サッカー部は全国大会の出場実績がある。テニスも強豪校で、校内に3面のコートがあり、更に近隣に8面を新設した。「テニスの人気が高くて」と田村校長。経営も担う理事長でもあるが、とにかく生徒のニーズによく応えてくれる校長だ。

渋幕の施設や伸び伸びした生徒の表情を見る限り、「急伸した受験校」というイメージはない。だが、00年以降、進学実績はグイグイ伸びて、今や男女共学の進学校としては全国トップの実績だ。

■気になるのは海外大の合格実績

渋幕高校の1学年の定員は335人。17年の合格実績は、東大78人(うち現役は61人)、京大11人、東京工業大学14人、一橋大学21人。国公立大学医学部医学科37人。ただ、田村校長が気にするのは「海外大学の合格状況です。今、うちのトップ層はみんなハーバード大など米欧の大学を志望しています。受験は10~11月にスタートし、最終的に合否が確定するのは次の年の6~7月と長丁場の戦いです。毎年、20~30人が海外大学に合格し10人前後の生徒が実際に進学しています」という。

渋谷教育学園幕張中学校・高等学校の田村哲夫校長

海外大学の現役合格数(15~17年の合計)は72人。ハーバード大、プリンストン大、エール大など世界のランキング上位の大学も少なくない。

英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)によると、17年の世界大学ランキングで、東大は46位(前年は39位)で過去最低の順位になった。田村校長は「東大はいい大学。実際の実力は10位台でしょう。ただ、グローバルな人材になるにはもう少し世界を意識する必要はある」と強調する。

■卒業者は多彩、人気アナにプロサッカー選手も

渋幕は創立してまだ30年あまり。卒業生には大企業の経営者はまだ少ないが、活躍する人材は多彩だ。田中マルクス闘莉王氏などプロサッカーやプロテニス選手を輩出しており、人気アナウンサーの水卜麻美氏や皆藤愛子氏も卒業生だ。渋幕を卒業後、エール大に進学して、三井物産に入社し、後に落語家に転じた立川志の春氏などユニークなキャリアの卒業生は少なくない。

東大の現役合格者で開成高校、灘高校、筑波大学付属駒場高校に次ぐ4位にまで躍進した渋幕。「東大合格36年連続トップの開成を抜けるとしたら、それは渋幕」(大手進学塾幹部)と受験界でいわれているが、「あくまで東大は選択肢の一つ」と意に介さない田村校長。グローバル人材の育成になおまい進しそうだ。

(代慶達也)

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