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積立王子のヤング投資入門

つみたてNISA 低コスト投信への一極集中は危険 積立王子のヤング投資入門(10)

2018/1/11

 そして目的達成に向け、目先を変えた新しい商品が粗製乱造され、長期資産形成とは無縁の商品オンパレードとなった揚げ句(その結果が6000本という本数です)、多くの資金を持って金融機関の窓口を訪れる高齢者ばかりが偏重して顧客化されました。その中で投信は、彼らの「今すぐもうけたい」という射幸心をあおり立てる道具として扱われてきてしまったのです。業界に長年定着したこのようなビジネスモデルに対する当局からの全面否定が、つみたてNISAの商品登録要件には表現されています。

■低コストだけで選ぶと中途償還の恐れも

 大手運用会社の多くは、アクティブ型投信に登録可能な商品を有していないため、インデックス型投信の新設による対応を余儀なくされました。しかし、差別化を図りにくいインデックス型投信においては商品優位性を「コスト」に求めるしかなく、最安では0.16~0.17%という極端に低い信託報酬のインデックス型投信が乱立する、あたかも無間地獄のごときコスト競争が続いています。0.16%では仮に10億円の資産を集めても信託報酬はわずか160万円でしかありません。

 これらは既に世界でも最低水準の信託報酬ですので、投資家にとっては一見うれしい競争にも思われますが、残高がない新設の低コストファンドには事業収益性を見いだすことがほとんどできません。20年という長期にわたり、運用会社として本当に続けていけるのかという不安も湧いてきます。つまり、単に低コストという条件だけの商品選びには注意が必要だということです。

 他方、アクティブ型投信では、金融庁により残高や運用期間、そして資金流入における実績前提での絞り込みがなされているので、本数こそ少ないものの選択しやすいメリットがあるといえましょう。

 かように「つみたてNISA」における商品選択の基準は、簡単には言えません。通常、インデックス投信ならコストが安いものを選ぶのが定石ではありますが、つみたてNISAではコスト一辺倒で選ぶのは危険で、一定の残高と資金流入がある商品でないと、20年を待たずして中途償還(投資家に資金を返してそのファンドの運用を途中でやめてしまうこと)されてしまう可能性もあると考えられます。せっかくの長期運用計画が根底から狂ってしまうわけです。

 その点、ある程度安定した資金流入が見込めるファンドで、かつ世界経済全体に分散投資するタイプを選べば、一つの商品でリバランスなどの難しい作業を考える必要もなくなり、安心して長期投資が続けられます。

■アクティブ型なら国際分散型と組み合わせて

 対してアクティブ型投信の場合、選択肢は15本と既に厳しい条件で絞り込まれているので、むしろ選びやすいのは前述の通りです。ただし、アクティブ型には日本株式を投資対象とした商品が15本中7本もあり、いささかカントリーバイアス(自国資産偏重)の強い状態になっています。ですがどうしても日本株投信に投資したいなら、これまでのコラムでも書いてきた通りそれだけに100%の資金を振り向けるのではなく、世界に広く投資する国際分散型の投信と組み合わせることをお勧めします。

 次回は「長期投資のリターンの源泉は何か?」の再確認をしながら、つみたてNISAにおける販売金融機関選びも含め、より具体的に商品選びの考え方を深めていきましょう。

中野晴啓
 セゾン投信株式会社代表取締役社長。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。

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