スポーツにIT革命を! 新興企業、強みはスピード感観客に臨場感あふれる「体験」提供、大企業とコラボも

今、あらゆる「Xテック」で重視されるのが「UX(ユーザーエクスペリエンス=顧客体験)」だ。特にスポーツは観客や視聴者(ユーザー)に臨場感あふれる経験(エクスペリエンス)を提供できるかが重要。4Dリプレイの撮影技術もこの概念に沿う。スポーツテックにかかわる大企業は感度が鋭いスタートアップに接近し、UXを磨くのが世界の潮流だ。

練習動画の「クックパッド」に

「世界最先端のスタジアム」として知られるリーバイス・スタジアム(米カリフォルニア州)。アメリカンフットボールの観戦者が試合中にスマートフォン(スマホ)で、複数の視点から撮影したリプレイ映像を視聴できる。支えるのはリプレイ・テクノロジーズ(イスラエル)。米インテルが16年に買収したスタートアップだ。

インテルはスタートアップと組んで新しいUXを実現している。16年に仮想現実(VR)分野のスタートアップ、米ヴォークを買収したのを機に、米大リーグ機構(MLB)と提携した。17年にはVR映像でゲームを視聴できるようにしており、スポーツの新しい楽しみ方を提供する。

インテルは本業との相乗効果も狙う。自由視点映像やVRは、見る人に没入する感覚を与える。その再現には、インテルによる高機能コンピューティングが必要になるとの思惑がある。

日本ではなじみの薄いスポーツテック。NTTデータ経営研究所の河本敏夫シニアマネージャーは「スポーツの領域でITを活用し、新しい課題解決策やサービスを提供すること」と定義する。同時に「スポーツテックとスポーツビジネスの発展は密接に結びつく。新しい価値創出には大企業とスタートアップのコラボが重要だ」と説く。

アマスポーツのチーム管理アプリを手がけるリンクスポーツ(東京・渋谷)の小泉真也社長

日本ならではの課題解決型スタートアップもある。アマチュアスポーツのチーム管理アプリを開発するリンクスポーツ(東京・渋谷)だ。

競技人口の多い野球やサッカーでも試合の参加者集めは簡単ではない。スコアなどのデータ管理も面倒だ。リンクスポーツが16年に提供し始めたアプリ「TeamHub(チームハブ)」はそうした悩みを解決する。

メンバーにチームの日程を知らせたり、メンバーの予定を調整したりして、練習や試合に参加しやすくする。スコアや成績を管理する機能も備わっている。野球やサッカーだけでなく、ラグビーやバスケットボールなども近く対象にする。

大学まで野球をしてきたリンクスポーツの小泉真也社長は「アマチュアスポーツのコミュニティーをつくり、広告などの形でOB・OGやファン、スポンサーが気軽にお金も提供できる基盤をつくる」と話す。「年末には1万チームまで拡大する」計画だ。

練習動画アプリのシェアトレ(茨城県つくば市)を設立した木村友輔社長

リンクスポーツの成長性に着目して17年に出資したのが毎日新聞社。同社は多くのスポーツイベントを主催・後援している。「資本業務提携を通じアプリの共同開発・普及に両社のシナジーを発揮できる」(社長室)

アマチュアスポーツの悩みの1つが指導者不足だ。筑波大学サッカー部に所属する木村友輔氏が起業したシェアトレ(茨城県つくば市)は「練習動画のクックパッド」を目指している。

シェアトレには約1500人のサッカー指導者が登録。ウェブサイトを通じて指導者による練習動画を無料で提供し、広告で収益をあげるビジネスモデルだ。木村社長は「指導者が少ないマイナースポーツでも気軽に練習できる仕組みをつくりたい」と意気込む。