マネー研究所

Money&Investment

遺言信託、サービス内容は? 遺言作成から執行まで 財産調べや名義変更も。遺言代用信託とは別

2018/1/13

PIXTA

 遺言に対する注目度が高まっています。家族に財産を円滑に引き継ぎたいと考える人が増えたからです。信託銀行などが扱う商品に「遺言信託」があり、やはり利用者が増加しています。信託という名が付いてはいますが、通常の信託商品のように財産を預けて管理してもらうための商品ではありません。何をしてくれるのか見ていきましょう。

 信託銀は信託業務、銀行業務のほか、さまざまな業務を営んでいます(図)。遺言信託は、不動産仲介などとならび、併営業務と呼ばれるサービスの一つです。

 具体的には遺言書の作成から保管、執行まで、遺言にかかわる一連の手続きをパッケージで提供します。遺言信託の名称で信託銀が取り扱いを始めたのは1980年代前半です。現在は大手銀行や地方銀行の一部も扱っています。

 信託協会のまとめによると、遺言信託の総件数は11万6000件強と、10年間で倍増しました(図)。三菱UFJ信託銀行では「年1000件以上の純増で右肩上がりが続いている」といいます。

 遺言信託は、どんな遺言を作るかを利用者本人が銀行に相談するところから始まります。その内容を踏まえて公証役場で公正証書遺言を作り、両者で約定書を交わして銀行が遺言書を保管します。

 本人が亡くなると銀行は相続人に遺言書を開示し、遺言執行者に就任します。執行者として預金を換金して分けたり、不動産の名義を書き換えたりといった手続きをするのがおおまかな流れです。

 執行時には遺産を調べて目録を作ります。「遺産をすべて調べるのは慣れない人には大変な作業」(三井住友信託銀行)です。遺言書の保管中は定期的にその内容や財産、家族の状況などを遺言者に確認します。状況が大きく変わり、遺言書の書き換えが必要になる場合もあるそうです。

 遺言信託の費用は、申込時の手数料と遺言書の保管料が定額でかかります。このほか相続財産額に対して一定率の執行報酬があります。費用全体では100万円以上になるのが一般的です。銀行によっては、預かり資産額などの取引状況に応じて手数料や保管料を優遇する例もあります。

 遺言信託に含まれるサービスの一部は、弁護士や税理士などの専門家に直接頼むことも可能です。

 信託銀が扱うサービスの中には「遺言代用信託」という似た名前の商品があります。信託銀と契約を結んでお金を託し、死後に家族らに渡します。作成が比較的簡単な契約書が、遺言書の代わりになる仕組みです。こちらは、財産を託す委託者、財産を管理する受託者、利益を得る受益者という3者で成り立つ信託業務に含まれます。

 遺言代用信託の受託件数はここ数年急増しており、17年9月末には15万件を突破しました。三井住友信託銀の「家族おもいやり信託」、三菱UFJ信託銀の「ずっと安心信託」がその代表です。

 財産全体ではなく当面の生活費などの必要資金を対象とする点も遺言信託との違いです。とはいえ、財産を大切な家族らにスムーズに渡すという目的は両者とも一緒です。申し込む際には商品の特性をよく理解し、家族とも相談する必要があるでしょう。

[日本経済新聞朝刊2018年1月6日付]

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL