海外旅行でも安心 世界ヒットの「忘れ物防止タグ」
全世界で累計1000万個以上が売れた落とし物防止タグ「TILE(タイル)」が日本に上陸した。2017年12月の販売開始から、最も基本的な製品「TILE MATE」を10万個限定で、1000円引きの1980円で販売するキャンペーンを展開しており、先行する競合製品よりも安価に販売することで市場シェアの奪取を狙う。
特徴は、もし誰かに拾われたり、電車の中に置き忘れたりした場合など、TILEを取り付けたものが移動したとしても見つけられる可能性があること。ユーザー同士が「TILEコミュニティー」というネットワークとして働くのだ。「日本は人口密度が高く、TILEコミュニティーの力を最大限に発揮できる可能性がある」とタイルのマイク・ファーレイCEO(最高経営責任者)。また、海外では既に広く使われていることから、海外旅行するユーザーに人気を得そうだ。
ソフトバンク子会社で流通業を手がけるソフトバンク コマース&サービスが販売代理店となり、自社のネット通販サイト「ソフトバンクセレクション」でも販売。今後、ソフトバンクのショップでの販売も検討しており、販売チャネルを拡大して日本市場を攻める。
使い方は簡単。アプリをダウンロードした後に、アプリ上で「TILEを追加」ボタンを押して、同期画面に進む。次にTILEの中央にあるボタンを押すと、音が流れて端末が起動。しばらくすると同期が完了し、TILEがある位置をアプリ上の地図などで確認できるようになる。
同期させたTILEはキーホルダーにつけたり、両面テープでパソコンに貼ったりできる。TILEはスマホと無線通信規格の「Bluetooth」で通信する。TILEを取り付けた物が見つからないとき、Bluetoothの通信が届く範囲内であればアプリの「探す」ボタンを押すことで、TILEが音を発する仕組みだ。
逆にスマホをなくした場合にはTILEのボタンを押すことで、スマホが音を発して見つけられる。「iPhoneをサイレントモードにしていても音が鳴る。アップルと交渉して可能にした機能だ」とタイルのグローバルセールス担当バイスプレジデントのドリュー・ゴールドマン氏は明かす。
TILEを取り付けた物がBluetoothの届かないところにある場合には、最後にスマホと通信をした場所がアプリで表示した地図上に表示される。これを参考に無くした場所を割り出せる。
ほかの利用者経由で紛失物を見つける
前述のようにタイルは「TILEコミュニティー」と呼ぶ、利用者同士のネットワークを構築している。紛失物が移動してしまった場合でも、この機能で見つかる可能性がある。ほかの利用者のスマホが、紛失したTILEのBluetoothの通信範囲内に入ると、そのスマホを通じてTILEの位置を確認できるのだ。
具体的には、アプリ上のオプションメニューから、紛失物の今ある位置を取得するボタンを押す。すると、紛失物の近くを他のTILE利用者が通過したときにその利用者のスマホを通じて、自動で位置情報がサーバーに送信される。近くを通過した他の利用者は、情報を送ったことには気が付かない。その情報はアプリを通じて、紛失者に届く。こうして、知らぬ間に利用者同士で紛失物を探す手伝いをし合えるのがTILEコミュニティーの特徴だ。
販売する製品は全部で4つ。基本的なモデルがTILE MATE(2980円)。18年2月には薄型の「TILE SLIM」(3480円)、上位モデルのTILE SPORT」と「TILE STYLE」(どちらも3980円)を発売する。
TILE SLIMはTILE MATEと比較して縦横で2cmずつ大きい分、薄さは約半分の2.4mmだ。財布に入れる、あるいはノートパソコンなどに張り付けるといった用途を想定している。上位モデルは基本モデルの2倍の60メートルまでBluetoothの通信が可能。防水性能もより高く、水深1.5メートルで30分間利用できる。
すべての製品の利用期間は1年間だ。電池は交換できないため、買い替えとなる。「買い替え時にはアプリにアラートを配信し、安く買えるサービスも計画している」(ゴールドマン氏)。TILE MATE以外の3つの製品は、2018年1月以降に発売する。
グローバルでは大きな市場シェアを持つ米タイルだが、日本では後発だ。忘れ物防止タグはすでに国内外のさまざまな企業が日本で展開をしている。例えば、MAMORIO(東京都千代田区)もその1社。同社の落とし物防止タグはTILEと同様に、ほかの利用者同士で紛失物の情報をアプリで共有し合える「みんなでさがす」機能を持つ。また、駅や街に「MAMORIO Spot」と呼ばれる基地局を設置して、紛失物情報をアプリに配信するなど、紛失物を見つけやすい環境の整備に力を入れる。
TILEコミュニティーや「みんなでさがす」機能が有効に働くためにはユーザー数の拡大が重要だ。TILEは限定価格や海外での強さ、製品バリエーションなどを武器にシェア拡大を狙う。
(日経トレンディネット 中村勇介)
[日経トレンディネット 2017年12月15日付の記事を再構成]
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